今回は、法律上ビザが発給できないケースにもかかわらず、例外的に移民大臣がビザ発給を認めた弊社のケーススタディについてお話ししたいと思います。
法律上ビザを発給してはいけないケースとは?
ニュージーランドビザを申請する場合、申請者は、申請しているビザの発給要件が移民法およびビザルールに定められた条件を満たしていることを証明する必要があります。
しかし、移民法2009の第15条および第16条に該当する場合は事情が異なります。これらの規定に該当する方については、たとえビザの条件を満たしていたとしても、法律上ビザを発給することが認められていません。具体的には、次のケースが第15条と16条に該当します。
- 今まで5年以上の懲役刑の実刑判決を受けたことがある
- 過去10年間以内に12か月以上の実刑判決を受けたことがある
- 移民法第179条又は第180条に基づき、ニュージーランドへの入国禁止期間の適用を受けている
- 今までニュージーランドから退去処分又は強制送還されたことがある
- ニュージーランドからの入国拒否もしくはビザ発給拒否の対象者となっている
- 他国から退去処分、強制送還、又は入国拒否もしくはビザ発給拒否の対象になったことがある
- ニュージーランドにおいて懲役刑の対象となる犯罪を犯す可能性がある
- 国家の安全保障に対する脅威又は危険である、又はその恐れがある
- 公共の秩序に対する脅威又は危険である、又はその恐れがある
- 公共の利益に対する脅威又は危険である、又はその恐れがある
- Terrorism Suppression Act 2002に基づき指定されたテロ組織の構成員である
注意:上記に該当しない有罪判決があるが、第15条または第16条に該当しない場合は、ビザが自動的に発給されるというわけではありません。通常は審査官が素行条件の観点から、ビザ発給が相当かどうかが審査されます。
大臣による特別許可という方法。そこには別のハードルが
しかし、この厳格なルールにも例外があります。それが第17条に規定されている移民大臣による Special Directionです。
Special Direction とは、移民大臣が個別の事情を考慮し、法律上はビザ発給が禁止されている場合であっても、非常に稀にビザ発給を認めることができる制度です。言い換えれば、「最後の救済措置」です。しかし、その手続き自体にはいくつもの高いハードルがあります。
第一に、移民大臣は、Special Direction の要請自体を審査すらしないという判断をすることができます。そのため、どれほど準備を整えて申請しても、審査すら行われない可能性があります。
第二に、仮に Special Direction の審査をすることになった場合でも、申請者や関係者に事情を確認する義務はありません。
第三に、申請者本人や関係者が提出した情報、または申請者や関係者に関する事項について、移民局が追加の確認や問い合わせを行う義務はありません。
さらに、Special Direction の審査結果については、理由や審査内容を開示する義務もありません。つまり、どのような審査が行われ、何を考慮して判断されたのかは基本的に明らかにされません。そのため、申請する側は、ガイドラインなしに、法律実務の経験を踏まえながら、総合的に整理し、説得力のある証拠と弁論書を提出して申請を行う必要があります。
警察証明の申請自体、最初に拒否されたケース
最近、弊社のクライアント様の案件でも、日本での有罪判決が理由でビザの発給が法律上不可能だったケースがありました。しかし、Special Direction による申請を行った結果、最終的にビザ取得に成功しました。今回、ご本人の許可を得て、この案件の背景についてご紹介したいと思います。
もっとも、その過程では多くの実務上の障壁がありました。 例えば、短期滞在のビザ申請であったため、警察で犯罪経歴証明書を申請したところ、申請目的が規定に該当しないとして発行自体を拒否されてしまいました。代理人として電話で事情を説明しましたが、かなり形式的かつ軽視する対応でとても残念でした。
その後、通常の警察ではなく、特例的に外務省を通じた申請手続きを取ることになりました。ただ、その場合、外務省で最大約2週間の書類確認が行われ、その後警察庁で約10日程度の審査が行われます。さらにその後、警察の審査で最大で約2週間かかるため、本来であれば5週間ほど必要になる可能性があります。
移民局から警察証明の提出要請があればかなり手続きを進めやすくなります。しかし、前述の通り、Special Direction の場合は関連書類の提出を求める義務が移民局にないこともあり、このままでは証明書の申請自体が難しい状況でした。
そのためこちらからきちんと移民局に事情を説明したところ、なんとか警察証明を提出するようにとの要請レターが発行されました。しかしこの時、移民局が設定した提出期限は1週間、その後もう1週間延長してもらってトータル2週間。今回の手続きでは前述の通り5週間ほどかかるため、間に合う状況ではありませんでした。 最終的には、外務省、警察庁、そして警察の協力により手続きを大幅に早めてもらい、何とか期限内に移民局に警察証明を提出することができました。
虚偽申告で過去入国した疑い
弁論書作成用にクライアント様にヒアリングを行ったところ、過去に有罪判決を受けた後、一度ニュージーランドに入国していたことが判明しました。その際の入国カードには犯罪歴の有無を申告する欄があり、通常は無犯罪である旨を申告しなければ入国できない仕組みとなっています。そのため、当時の入国時に虚偽申告があった可能性が浮上しました。
もっとも、当時の入国カードの記録が手元にあるわけではなく、事実関係を完全に確認できる状況ではありませんでした。ただし、虚偽申告により過去ニュージーランドに入国した可能性がある以上、移民局から指摘される前にこちらから事情を説明するべきだと判断し、その点についても申請の中で自主的に説明を行いました。 この問題だけでも Special Direction が拒否される可能性があったため、非常に懸念していました。しかし最終的には、この点については今回の審査対象からは外すという判断をされて、移民局は有罪判決を受けた後にニュージーランドに入国したという事実のみを記録としてファイルに残すにとどめる対応となりました。
他国でのビザ申請が却下されていた
また、ご本人は過去にニュージーランド以外の国でもビザ申請を行っており、その際、犯罪歴が理由でビザ申請が却下されたことがあります。ビザ申請の却下歴については、ビザ申請書に、他国でのビザ却下理由を詳細に説明する欄があります。本件では、該当の犯罪歴が理由で他国のビザ申請が却下されていたため、移民法第15条に該当する案件として、同様にニュージーランドの申請が却下される可能性が高いのではないかと懸念していました。しかし、事情を丁寧に説明した結果、この点についても理解を得ることができ、最終的には問題として扱われなくなりました。
不利な状況から移民大臣に認められたビザ発給
今回の入国目的は、ニュージーランドの国益に強く関わるものではありませんでした。
また、判決内容も犯罪性質としても比較的重い部類に入るものであったことも懸念材料でした。しかし、ヒアリングを通じて非常に重要な好材料が見つかったことが、今回の申請において大きな助けとなりました。更に今回のクライアント様は、事件の内容だけでなく、その後の人生や現在の活動についても率直にすべて説明してくださいました。そのおかげで、事実関係を正確に整理したうえで、比較的強い証拠と説得力のある弁論書を提出することができました。その結果、最終的には移民大臣による Special Direction が認められ、無事ビザが発給されました。
犯罪歴があるけれどニュージーランドのビザを取得したい方へ
犯罪歴のある方のビザ申請を代理人として受任することに抵抗はないのか、と質問されることがあります。
人にはある程度の行動パターンがあるということです。一生懸命努力する人は継続して努力を続けますし、逆に嘘をつく人は繰り返し嘘をつく傾向があると思います。横柄だったり、不誠実だったり、不義理な人も同じような行動を繰り返すことが多いように思います。
ビザ申請では、周囲の方々の協力が必要不可欠です。そのため、ネガティブな行動パターンがある場合、結果としてビザ取得においても大きなハードルになる可能性があると思います。迷惑行為があった場合や、対応が著しく不誠実である場合、あるいは申請前の段階で冷やかし等により当方の時間を不当に浪費させるような場合を除き、単に犯罪歴があるという事実のみを理由として私が受任をお断りすることはございません。最近、弁護士と話した際に、「弁護士は受任を断る理由はいくらでも作れる」と話していました。受任の可否は、やはり依頼者本人の姿勢も大きく影響するんだなと思いました。
過去に重大犯罪を犯してしまった場合であっても、ニュージーランドのビザ取得の可能性が完全にゼロになるわけではありません。もちろん、成功する可能性もかなり低いです。しかし、本気でニュージーランドのビザを取得したいと考えているのであれば、移民大臣による特別発給という方法に挑戦してみる価値は十分にあると思います。
このコラムは、一般的なビザおよび移民法に関する情報を提供することを目的としており、法的助言を目的としたものではありません。執筆者および弊社は、本コラムの内容に起因する損害について、一切の責任を負いません。また、免責事項も含めて本コラムの無断転載および改変を禁止します。政府公認の移民アドバイザーは、移民アドバイザーライセンシング法に基づき、ニュージーランド政府からライセンスを取得しています。執筆者はこのライセンス(フルライセンス)により、単独で移民に関する法的助言および全てのビザ申請代行を行う法的業務を提供することが認められています。移民アドバイザーと直接やり取りをせずに、無資格者を介して移民アドバイスを受けるなどのやり取りをする場合、違法行為であり、処罰の対象となる恐れがあります。また、移民アドバイスを受ける際は、トラブルや不利益を避けるためにも、政府団体IAAのウェブサイトでアドバイス提供者のアドバイザー番号とその種類を必ずご確認ください。ライセンス発給歴も確認できます。(アドバイザー番号の最初の4桁はアドバイザー資格申請年を示しています。)移民アドバイザーの中でも特定のビザカテゴリー限定でアドバイスを行うことが認められている Limited Licence 保持者については、どのビザカテゴリーについてアドバイスが可能なのか必ずご確認ください。弊社は無料のビザ相談所ではございません。本コラムの執筆者であり、ニュージーランド政府公認の移民アドバイザーが、日本語で受任から審査結果まで一貫して責任を持って対応し、ビザ取得に向けて尽力しております。難しいケースにおいても、約100%の成功率です。(執筆日2026年3月9日)
- Aki Yamasaki
- New Zealand Visa Partner Limited(ニュージーランドビザ申請代行センター)代表。NZ政府公認・移民アドバイザー(Licence No. 201701307)/NZ公認教育カウンセラー。カンタベリー日本人会協賛会員。Google Review 5.0。
- ニュージーランド移住27年目、移民アドバイザー歴9年目。TOEIC満点、英検1級。Master of Business Lincoln Uni、Bachelor of Social Science (心理学) Waikato Uni,、移民法最高学位GDNZIA等15学位を取得し、現在も大学院ロースクールで法律を学ぶ。
- 一般的なビザ申請だけでなく、申請却下歴、犯罪歴、移民保護裁判所などの困難な案件にも対応。移民法に基づく法的助言、申請代行、移民局との交渉、面接同席、弁論書作成等一貫して担当する。却下後の不服申立て、犯罪歴・病歴を伴う案件、移民大臣による特別な例外許可を求める案件、さらに弁護士や他の移民アドバイザーでもビザ取得に至らなかった案件についても、ビザ発給へ導いた実績を有する。 コロナ禍でビザ許可率が低下していた時期に、かつ素行要件にも抵触していた2件のビザ申請を除き、これまで受任したビザ申請の成功率は100%。評判の高い移民アドバイザーや留学エージェントからも案件の紹介を受けている。
- 法律分析と移民局への弁論書に定評あり。本気でニュージーランドのビザ取得を目指し、「応援したい」と思える案件のみ厳選して受任。弊社で申請代行可能かどうかの査定は無料。
- NZ国内外オンライン対応
- 営業時間 平日 NZ時間 9:00~18:00
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