さて、住宅ローンに申しむ際にはたくさんの書類の提出が必要ですが、貸し手は何を見ているかご存知ですか?
よくお客様から「xxでもいいでしょ?」「xxはOKですよね?」と全く借り手の立場からしか見ていないな~というご質問を耳にしますが、皆さんが人にお金を貸すとしたらどうですか?ほとんどのご質問は「ご自身が貸し手だったらどうか」とお考えいただければ答えが自然に出てきます。
銀行のステートメントも「これはほとんど動きが無いので」と催促しないとご提出いただけない事が多々あるのですが、それを知っているのはご本人以外いらっしゃいますか?貸し手はどうやってそれを知る事が出来ますか?やはりご提出いただき、「動きがない」という事を証明しなければならないのです。 また、貸し手はそれ以外の事も実はそのステートメントから読み取っているのです。
貸し手がどんな事を見るのか順番にご説明していきましょう。
Three C (スリーC)
ローンで最も重要な事は、お客様が金利をきちんと払えるかと借りた額を最終的に返済できるかという事ですが、その為には色々な側面から審査がされます。
ローンの目的や額などもありますが、重要な要素としてスリーCと呼ばれているものがあります。
Character (キャラクター)
お客様の正直さと誠実さ、そして借りたローンを返済する意思があるか
人間性を見られます。最初から返済意志が無かったり、不誠実な人、お金にだらしのない人に貸したりしたら大変な事になってしまいますね。これはどうやって見るかと言いますと、コンサルテーションの際のお話は勿論の事、皆さんからご提出いただく書類が実は全て話してくれるのです。
例えば、銀行のステートメント。
- 電気代や家賃はきちんと遅れる事なく払っているか?
- ⇒ 期日を守ってきちんとしている
- お給料は明細書の通りに支払われているか?
- ⇒ 収入面で細工などがされていない
- お給料が定期的に一定額振り込まれている
- ⇒ 安定した雇用と収入
- あれ?お子さんいないはずなのに養育費を毎月払ってる?
- ⇒ 隠し事発覚!信用できない
- パーソナルローンは無いとの事なのに、毎週ローンの会社に支払われている
- ⇒ 隠し事発覚!信用できない
- ポリスに罰金を払ってる
- ⇒ ルールを守らない、道徳感の欠如
- 頻繁にオーバードラフト(アカウントがマイナス)になっている
- ⇒ お金をきちんと管理できない、だらしない
- 毎週カジノでEftposが使われている
- ⇒ ギャンブル依存症?
これは、ほんの一例です。 ローンを申請しようと思ったら、最低でも3ヶ月、出来れば6か月前から気を付けて美しいステートメントを作るように心掛けてください。
Capacity (返済能力)
雇用の安定と返済に十分な収入を得る事が出来るか
こちらは第3回のコラムで説明していますので、ご参照ください。
補足で、今の雇用主で短期間しか働いていなくても、職業としては経験が長い場合は、長所になります。例えば、レストランにシェフとして努めて1年でも、シェフとしての経験が20年あるとしましたら、将来的な雇用も安定していると見てくれます。コンサルテーションの中で、いろいろお話をさせていただき、少しでもプラスになる面は担当者がサポートレターに書いて提出します。
Collateral (担保)
もし、返済がされなかった場合、担保でローンの回収と回収の為にかかった費用など十分に賄えるか。
担保物件に十分な価値が無ければ、最悪の状況になった時に元本の回収が出来ません。
ですので、担保にそれだけの価値があるかも審査します。 デポジットが沢山ある方は、貸し手のリスクもその分減りますが、少ない方は物件の殆どの部分をお貸しする事になり、貸し手のリスクも高くなります。その為、価値があるか確認する為、プロの査定が必要になる事もあります。
また、カウンセルの許可なく建設、改築、増築された物件は、売る時にすんなり売れない可能性が高いので、担保として受け入れてもらえない事がありますので注意が必要です。
リーキーハウス症候群のプラスターの家も余程デポジットの割合が高くなければ担保としては難しくなります。
金融機関は高額なお金をお貸しする訳ですから、出来るだけリスクの少ない人にお貸ししたいのです。そのリスクをどこまで許容するかは、各金融機関によって異なります。しかし、高いリスクを受け入れてお貸しするという事はそれなりのリターンがあるからそのリスクを受け入れるという事をお忘れなく。そのリターンの出元は紛れもなくお客様からです。
書類を提出するときの注意
たかが書類、されど書類です。
せっかく書類を提出しても、不備のせいで出し直しになってしまいますと、その分、申請のプロセスが遅れるだけでなく、二度手間になってしまいます。それがストレスにも繋がりますので、最初からきちんと正しく書類を提出しましょう。
また、書類1つからも、その方の性格が見え隠れするという事をお忘れなく。 いい加減な書類を提出しますと、お金に対してもいい加減で責任をもって返済しないのではと思われてしまいます。
書類は全ページ提出しましょう。
例えば5ページある書類の2-3ページだけ提出しますと、貸し手は「その他のページに何か見られたくない事があるのではないか?」「故意に情報を隠しているのではないか?」と思われてしまう事があります。それが、ただ単に重要ではないからだとしても、変な勘繰りをされないように全ページの提出をしましょう。
必要書類は全て提出しましょう
「銀行のステートメントを全て提出してください」と言っても、「これで全てです」と提出いただけない方がいらっしゃいます。ステートメントを見ると同じ番号で末尾だけ違う口座や決まった口座に定期的にお金が動いている事から他にも口座があるのが分かります。ここでもまた「何か隠したい事があるのではないか?」と思われないように全て最初からDisclose(情報開示)をして下さい。Lenderに言われてから提出するのは心証があまり良くありません。
コピーを提出する際には、きちんとコピーを
コピーをして提出する際には、書類の端が切れていないか、写真や文字がぶれたりせずクリアに映っているか、書類が歪んでいないか、全体的に黒すぎないか等、気を付けてください。
書類のサインはIDと同じものを
日本人の方で多いのは、パスポートのサインは漢字、免許証のサインは英語という方です。 サインは身分証明書と一致しなければなりません。出来れば、サインも英語か漢字、どちらかに統一しましょう。
書類はすべて揃ってから一括で提出がベター
ポロポロと1つずつ書類をお送りいただいても、全てが揃うまで申請手続きを開始する事はできません。1つずつお送りいただくと、紛失の原因にもなりますし、最後の書類をいただくまでに最初にお送りいただいた書類が古くなってしまって出し直しという事にもなりかねません。
時間に余裕を持って提出しましょう
事前にいつまでにとお伝えしても、なかなか書類を提出いただけず、やっと提出いただいたと思ったら今度は結果を「急いでください!」「xx日までにお願いします」と自分本位に言われる事があります。やむを得ない事情がある時には審査のチームも出来る限り協力しますが、保証の限りではありません。ここはNZですから「今までは私たちが待ったのだから、今度はあなたが待つ番」とはっきり言われてしまう事もあります。
また、あなたの書類を先に審査をするという事は、先にきちんと書類を提出した他のお客様を後に回す事になりますのでフェアではありません。審査の担当官への心証も悪くなりますので、審査上得策ではありません。
時間に余裕を持って進めましょう。
- Yuko Dempster (New Zealand Home Loans コンサルタント)
- お客の立場でNZHLを利用し、6年でローンを返済した経験からNZHLの良さを実感、多くの方のお役に立ちたいとコンサルタントに。
- お客様の経済的ストレスを失くし、喜んでいただける事が何よりうれしい。
- プライベートでは、夫と長女、次女(ワンコ)の3人と1匹家族。 趣味は20年続けているビール作り。