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第4回 自立を重視するモンテッソーリ教育 in NZ

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モンテッソーリ教育をご存知ですか?モンテッソーリ教育を実施している幼稚園や小学校がニュージーランドにもあります。ニュージーランドのモンテッソーリ初等教育をご紹介します。

モンテッソーリ教育って?

モンテッソーリ教育をご存知ですか?イタリアの教育学者マリア・モンテッソーリによって1907年に創始された独特の教育方法です。日本でも、主として幼児教育のひとつとして認識されており、モンテッソーリ教育法を実施している幼稚園があるようです。
有名なところでは、英国のウィリアム王子とヘンリー王子も幼い頃モンテッソーリ教育を受けられたそうで、ウィリアム王子の息子さんのプリンスジョージ君も、最近モンテッソーリの幼稚園に通い始められたとニュースになっていました。

ニュージーランドにも北はオークランドから南はダニーデンまで、モンテッソーリ教育を実施している幼稚園や小学校がいくつかあります。

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モンテッソーリとは、どんな教育法でモンテッソーリ小学校とはどんな学校なのでしょう。今回は、ニュージーランドでのモンテッソーリ初等教育についてご紹介します・

私の娘も、幼稚園からモンテッソーリ教育を受けました。娘は、「好きなワーク(勉強)を好きな順番でできるから、モンテッソーリのやり方が好き。」と言っています。
モンテッソーリ教育を母親として見てきて、モンテッソーリ教育法の特徴を一言で言うなら、「自立と自由」ではないかと思います。

先生が、クラス全員に同じ授業をするのではなく、モンテッソーリ独自の教材を使って、子どもは自分の好きな勉強を自分で選んで、自分のペースで勉強することができるのが大きな特徴です。

例えば、同じ算数の問題を解くにも、使う教材はいくつかの中から自分で選ぶことができます。先生は、すべてを教えるのでなく、教材の使い方を教えたり、どの教材を使ったらよいか示唆したり、子どもたちを観察して、学ぶ環境を整えるのが仕事です。

モンテッソーリ教育の特徴

モンテッソーリ教育の特徴には以下のようなものがあります。

1.年齢混合クラス。
年齢ミックスのクラスであることは、モンテッソーリの学校の大きな特徴のひとつです。ロトルアのマルフロイ小学校内にあるMontessori Unit(モンテッソーリクラス)にもYear1からYear7(5歳から11歳)までの子が在籍しています。
さまざまな年齢の子がいることで、小さい子どもたちは大きい子どもたちをモデルとし、大きい子どもたちは小さい子どもたちに勉強を教えてあげたり助けてあげたりします。自分が1年生だった頃、同じクラスの上級生が親切にしてくれたことを覚えているので、自分が上級生になったら下の子の世話を進んでする優しい子が多いのもモンテッソーリクラスの特徴です。
 
2.自分のしたい勉強と教材を自分で選べる。
モンテッソーリでは、いくつかあるオプションのうち、生徒が自分で自分のしたいワーク(勉強)を選べるのが大きな特徴です。リーディングと算数のような決められたコアカリキュラムを終わらせた子から、自分の好きなワークをどんどんしてもいいことになっています。算数の得意な子は、先生に難しい問題を出してもらい、教材をつかってどんどん算数の勉強を進めていきます。英語が好きな子は、英語の教材を使ってどんどんリーディングやグラマーをを難解なものへ進めていきます。つまり、自分の得意なことはどんどん先に進められるし、苦手な分野は自分のペースでゆっくりと理解できるまでやっていくことが可能なのです。
 
3.途中で邪魔されることなく、まとまった時間ワークを続ける。
60分など決まった時間で切って、時間割が組まれているメインストリーム(ニュージーランドの学校の普通学級)と異なるのが、モンテッソーリではまとまった時間ワークを続けるということです。理想的には、3時間続けてワークするのがいいとされています。
 
4.教材を通じて「経験」し「発見」していく。
モンテッソーリの教材は、素材にも特徴があります。木や布やビーズなど手で触れて特徴のある素材を使っています。
幼稚園の頃から、木でできたブロックやパズルなどを使います。モンッテソーリ幼稚園の教材は、プラスティックでできた電子音のするおもちゃなどはなく、子どもたちは木や布や木の実でできた教材を使って遊びます。小学校の算数の教材も、木やビーズでできており、手で触れることで脳を刺激し、数の概念を触感と視感で体得できる教材です。

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教材に依存するのではなく、教材を“経験”する。

子どもたちが使っている算数の教材をみる度に、いいなあ、よくできているなあと思います。ただひとつ私が疑問に思っていたことは、「そのよくできた教材を使わないと問題が解けないのではないか、教材に依存してしまい、教材がないと自分の力では算数の問題が解けないのではないか。」ということです。娘が、モンテッソーリ教材を使って算数の問題を解くのを見て、実は少しそのことを心配していました。

しかし、モンテッソーリの先生によると、教材を”経験”することで、 脳が刺激され、視覚と触覚で自然に脳内にイメージができあがっていくので、2年ぐらいたつと、教材を使わなくても問題が解けるようになっていくのだそうです。

モンテッソーリは普通の小学校と、どう違う?

ニュージーランドのモンテッソーリ教育は、普通の小学校(メインストリーム)での教育とは、異なります。どちらが良いということではありません。モンテッソーリ教育には、モンテッソーリの良さが、メインストリームにはメインストリームの良さがあると私は思っています。

Rotorua Montessori Primary(ロトルアモンテッソーリ小学校)には、現在、二人の先生がいます。
30年近くモンテッソーリを教えている大ベテランのダイアン先生と、メインストリームの先生をやってきてモンテッソーリ教育に興味を持ち、モンテッソーリの先生になろうとトレーニング中のターニャ先生です。

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長年ニュージーランドの小学校で教えてきたターニャ先生に、モンテッソーリ小学校と普通の小学校の違いについて話を聞きました。

「モンテッソーリの学校とニュージーランドの普通の小学校は、どんなふうに違うのでしょうか?」とターニャ先生に聞きました。

ターニャ先生はこのように言いました。

「まず大きく違うのは、“Teachers Directedなのか、Self Directedなのか”です。メインストリームの子どもたちは、先生が「これをしなさい。このようにしなさい。」と指示を与え、先生の言うとおりに勉強します。モンッテソーリでは、自分がしたいことは何なのかを子どもが自分で選択し、先生のアドバイスを受けながら、Individual Discover(自ら発見する)することを重要視しています。

また、1時間など時間で区切られてるメインストリームと、時間で区切られていないモンテッソーリの勉強の進め方にも違いがあると思います。

モンテッソーリ教育を受けている子どもたちは、Passion of learning (学びへの情熱)を持っている子が多いように思います。
モンテッソーリの子どもたちを教えるのは、私にとっても、とても楽しい仕事です。」

モンテッソーリ初等教育の教材

ロトルアのマルフロイ小学校内にあるMontessori Unit(モンテッソーリクラス)で、使用しているモンテッソーリの教材をいくつかご紹介します。

算数の教材、ブロック。大きな数の塊のブロックや長さを比べられるブロックを見て触ることで、大きな数と小さな数を、視覚的、感覚的にイメージできます。

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同じく、算数の教材のビーズ。モンテッソーリの基本的な算数は、ビーズを触って数える、一桁の足し算からはじまります。

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中学年用算数教材のビーズとチューブ。大きな数の掛け算の問題を解くのに使います。

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4-07 Tube

ボキャブラリーの練習。単語の単数形と複数形を勉強します。

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また語彙力を増やすトレーニング。eを後ろにつけると単語が別の意味になる発見をします。

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このように独自の教材が数多くあり、児童それぞれが好きな教材を使って勉強することができるのです。

幼稚園でも、“学ぶ”教材を使って“遊ぶ“

また、ロトルアにあるHi Jinks(ハイジンクス)というモンテッソーリ幼稚園でも、このような教材をつかって遊びます。

椅子と大きな種を使って、in, on, underの場所を表す前置詞を使って遊びます。

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帽子、へびなどのおもちゃが、複数だとsがつくというふうに、単語の単数形・複数形を遊びながら学びます。

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最近、モンテッソーリ小学校のシニア(高学年)の児童が何人か、定期的にモンテッソーリ幼稚園Hi Jinksを訪れています。モンテッソーリの教材をつかって、幼稚園の子どもたちと一緒に遊んであげるのです。

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幼稚園の子どもたちにとっては、大きいお姉ちゃんたちが一緒に遊んでくれるのはとてもうれしい経験で、大はしゃぎです。小学校の子どもたちにとっては、小さい子どもたちと遊ぶのはかわいいけど、はしゃぎまわる小さい子どもたちを落ちつかせ、何かを教えるのがどれだけ難しくて大変かという貴重な経験をすることができます。

それぞれに良さがある。

私自身は、モンテッソーリ教育の個人の個性や能力を伸ばし、自立をうながすところが好きですが、大勢の同年齢の子どもたちが同じクラスにいるニュージーランドのメインストリームの教育にも良いところはたくさんあると思っています。モンテッソーリ教育にしてもメインストリームの教育にしても、それぞれに良いところと足りないところがあるのかもしれません。
モンテッソーリでも、メインストリームでも、または学校に行かずに親が家で教えるホームスクールも、すべてが認められており、子どもにあった教育方法を親が決められるところがニュージーランドの良いところだと思います。

参考ウェブサイト

Montessori Aotearoa New Zealand
URL : http://www.montessori.org.nz
Rotorua Montessori Primary @ Malfroy School
eメール : rotoruamontessori@gmail.com
Hi Jinks Montessori Centre
eメール : hjmontessori@xtra.co.nz
上野清子(Seiko Ueno)
新婚旅行でNZに魅せられ、1997年に夫婦でロトルアに移住。
ジュニアからオールブラックスまで、NZラグビーが大好き。
娘一人。
留学エージェント「キックオフNZ」マネージャー
モンテッソーリ小学校Trust Chairperson、通訳/翻訳。

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