なぜ負けたのか。理由は簡単です。では、強くなるためにはどうしたらよいのか。負けた試合から学び、基本に戻ることです。
サニックスワールドラグビーユース交流大会
2016年4月28日から5月5日まで、福岡県宗像市のグローバルアリーナで、サニックスワールドラグビーユース交流大会(Sanix World Rugby Youth Invitational Tournament)が行われました。
この大会は、2000年から行われている高校生のラグビー世界大会です。
男子は、日本の高校が8チーム、海外の高校が8カ国から8チーム参加して、15人制ルールで予選リーグと決勝トーナメントを戦います。
日本からは、今年の全国大会ベスト4進出のチームと、この大会の予選会優勝チーム、九州ラグビーフットボール協会より推薦されたチームの合計8高校8チームが出場します。
海外からは、ニュージーランド、南アフリカ、イングランド、オーストラリア、フィージー、ロシア、中華台北、韓国のそれぞれの国のラグビー協会が推薦した高校1チームずつが参加しました。
ニュージーランドでは、毎年、全国優勝をした高校が翌年のこのサニックス大会に参加できることになっています。
ニュージーランド代表 ロトルアボーイズハイスクール
2016年のサニックスワールドラグビーユース交流大会には、2015年にニュージーランド全国優勝をしたロトルアボーイズハイスクールが出場しました。日本人留学生も一人、このメンバーに選ばれています。
- 2016年サニックスワールドラグビーユース交流大会の、世界8カ国と日本の8高校の参加チームは以下です。
- ロトルアボーイズ ハイスクール(ニュージーランド)
- セントエドマンズ カレッジ キャンベラ(オーストラリア)
- ジエングオ ハイスクール(中華台北)
- トルロ カレッジ(イングランド)
- クイーンヴィクトリア スクール(フィジー)
- ソウル ナショナル ユニバーシティ ハイスクール(大韓民国)
- エニセイ-STM(ロシア)
- グレンウッド ハイスクール(南アフリカ)
- 國學院大學栃木高等学校(栃木)
- 桐蔭学園高等学校(神奈川)
- 慶應義塾高等学校(神奈川)
- 東海大学付属仰星高等学校(大阪)
- 大阪桐蔭高等学校(大阪)
- 石見智翠館高等学校(島根)
- 佐賀工業高等学校(佐賀)
- 東福岡高等学校(福岡)
今年のニュージーランド代表のロトルアボーイズハイスクールは、過去に2回ニュージーランド全国優勝をして、2002年と2003年のサニックス大会にも参加しています。
2002年、2003年ともサニックス大会では、ロトルアボーイズハイスクールが優勝しています。
サニックス大会には、今回が3回目の参加となるロトルアボーイズハイスクール。3回優勝した高校は過去になかったので、コーチや選手や父兄たちは、初の3回優勝校になるぞという目標と期待を胸に抱き、この大会に臨みました。
予選リーグ 4プールに分かれて総当り戦
まずは予選リーグ。全16チームが、4チームずつの4つのプールに分かれて総当り戦を行います。ロトルアボーイズハイスクールは、國學院栃木、石見智翠館、ジエングオ(中華台北)と共にプールDにはいりました。
初戦 : RBHS VS 国学院栃木
初戦の國學院栃木高校との試合は、ロトルアボーイズは慣れない人工芝にとまどい、急な雨と寒さで本調子ではなかったようですが、25-7で勝利。
第2戦 : RBHS VS 石見智翠館
第2戦、石見智翠館高校との試合は、石見智翠館の低い良いタックルに驚きながらも持ち前の速いパス回しで、ロトルアボーイズハイスクールが28-7で勝利。
予選リーグ最終戦 : RBHS VS 建國高級中學(台北)
予選リーグ最終戦のジエングオハイスクール(中華台北)には、本領発揮でたくさんトライをし、ロトルアボーイズハイスクールが45-0で勝利しました。
こうしてロトルアボーイズハイスクールは、予選リーグ戦を3試合とも勝利し、予選リーグを1位で通過しました。
プロのラグビーコーチのコメント。「日本の選手たちの低いタックルはすばらしい。スペースを生かしきれていないのが残念。」
ロトルアボーイズハイスクールの一軍のコーチであり、学校のラグビーダイレクターであるNgarimu Simpkins(ナリム・シンプキンズ)さんが、予選リーグの試合を終えて日本の高校生のラグビーについてこのように言っていたそうです。
「日本の高校生選手たちは、低くてとても良いタックルをします。そして、ブレイクダウン周辺のプレイは非常によく訓練されています。ただ、残念なことに縦にも横にもスペースを生かしきれていないので、相手チームからしたらディフェンスしやすいのです。」
「ボールばかりにフォーカスせずに、スペースを意識することが大切です。」
決勝トーナメント開始 ロトルアボーイズ準々決勝も快勝
予選リーグの各プール上位2チームが、準々決勝(1位~8位決定戦)に臨みます。予選リーグプールDを1位で通過したロトルアボーイズハイスクールは、準々決勝で、プールA2位の東海大仰星高校と対戦しました。
準々決勝 : RBHS VS 東海大仰星高校
前半15分過ぎからのロトルアボーイズの3連続トライを観ていた人がこのように感想を言っていました。
「アタックラインが生き物のように意思統一され動く。これがまさに『連動』ということかと思いました。」
準々決勝もロトルアボーイズハイスクールは調子良く、東海大仰星高校に52-10で勝利しました。
そして準決勝。ロトルアボーイズ敗れる。
そして、迎えた準決勝(セミファイナル)。本大会優勝候補と言われている南アフリカのグレンウッドハイスクールとの対戦です。
準決勝 : RBHS VS グレンウッドハイスクール(南アフリカ)
このセミファイナルの試合に勝てば、決勝戦も勝てるのではないか、きっとロトルアボーイズハイスクールが勝つだろうと、私は期待半分に思っていました。
結果を先に言うと、ロトルアボーイズハイスクールは、準決勝で南アフリカのグレンウッドハイスクールに負けてしまいました。
上の写真は、自分たちの力を出し切れずに負けた後、円陣を組むロトルアボーイズです。
前半終了時点で、スコアは13-12。
負けていない、勝てるチャンスはある、勝てるはずだとみんなが思っていました。きっと選手たちもそう思っていたことでしょう。
ところが、後半で、ロトルアボーイズハイスクールは1点も得点できず、かたやグレンウッドハイスクールはペナルティゴールで確実に得点を重ね、最終的には29-12で、グレンウッドハイスクールが勝ち、決勝戦に進みました。
決勝戦と3位決定戦の勝敗
この準決勝の試合を観ていた人たちや、日本に帯同したロトルアボーイズハイスクールのコーチたちのSNSへのコメントなどから、準決勝のロトルアボーイズハイスクールの敗因は、
「審判の判断にロトルアボーイズのフラストレーションがたまり、良いところを出せなかった試合だったから。」とか、
「ロトルアボーイズハイスクールの選手たちのメンタルタフネスが少し足りなかったから。」などと聞きました。
翌日の決勝戦は、南アフリカのグレンウッドハイスクールが東福岡高校と対戦することに決まりました。ロトルアボーイズハイスクールは、3位決定戦で、イングランドのトルロカレッジとの対戦です。
準決勝で負けたロトルアボーイズハイスクールの選手たちに対し、日本に帯同しているコーチはもちろん、ニュージーランドにいる父兄や友達からたくさんの激励の言葉が寄せられました。
「ボーイズはとてもよくやった。」
「ボーイズを誇りに思う。」
「Just wasn't our day today.(今日は我々の日じゃなかっただけだ。ツキがなかったという意味。)」
「明日は、三つの羽(=ロトルアボーイズハイの象徴)を空に掲げよう!」
結局、翌日の決勝戦では、南アフリカのグレンウッドハイスクールが東福岡高校を45-6で降し、優勝しました。
3位決定戦 : RBHS VS トロルカレッジ(イングランド)
そして、ロトルアボーイズハイスクールは、前日の準決勝とはうってかわって、ロトルアボーイズらしい良い試合をし、イングランドのトロルカレッジに75-12(前半54-0、後半21-12)で勝ち、3位でサニックス大会を終えました。
日本の文化を尊重し、試合終了後には、感謝のおじぎをするロトルアボーイズハイスクール。
なぜ負けたのか?答えは簡単。「相手の方が強かったから。」
それほど、実力に違いがあると思えなかったロトルアボーイズハイスクールとグレンウッドハイスクール。
ロトルアボーイズハイスクールは、準決勝でグレンウッドハイスクールに、なぜ勝てなかったのでしょう。
準決勝でロトルアボーイズハイスクールが、負けた原因はは何だったのでしょうか。
また、翌日の3位決定戦では見違えるような良い動きをして、ロトルアボーイズハイスクールが勝てたのはなぜなのでしょうか。
それが知りたいと思いました。
大会終了後に、ロトルアボーイズハイのコーチのナリムさんに聞きました。
「準決勝の試合でロトルアボーイズハイスクールは、なぜ負けたのですか?
負けた後、次の日の3位決定戦に向けてどのように立て直したのですか?
なぜ、3位決定戦は勝てたのですか?」と。
ナリムさんはこのように答えました。
「The best team won.( 一番強いチームが勝ったのです。)
我々がなぜ負けたかというと、南アフリカの高校が我々より強かったからです。彼らは、とてもよく訓練されていて情熱のあるチームでした。
我々は、あの試合から学ぶことがあったし、それを学んだことでこれからもっと強くなれます。」
「準決勝のあと、軽い怪我をした選手が何名かいたので、そこを補強してチーム編成を考えました。3位決定戦でより良いパフォーマンスをするため、(戦略の)いくつかの間違っていた部分を修正しました。」
「We played extremely well in the first half and much happier with our game.
イングランドのトルロカレッジとの3位決定戦では、前半はものすごく良いプレイができたし、試合内容にも(準決勝と比べて)もっと満足しています。」
勝利の要因は、基本のスキルを身につけた上で、正しいディシジョンメーキングをすることにある。
ナリムさんは、いつもこのように言います。
「より良い選手になるための、勝つための、成功の鍵は「Basic Skills(基本)」にあるのです。」
「パス、キャッチ、キック、ランなど基本的な動作に焦点をあて、基本に忠実に行うことを心がけてください。一番重要なことは、いつでも一番基本的なところに帰依するのです。」と。
「基本的な正しいスキルがしっかり身についたら、次に大事なことは、Decision Making(ディシジョンメーキング=意思決定)です。どのタイミングでどう判断し、どう動くのか。瞬時に判断して動くことが必要です。しっかりした基本スキルを身につけた上で、正しいディシジョンメーキングができないといけません。
コーチがしなければいけないことは、正しい基本スキルと正しいディシジョンメーキングの仕方を教えること、そして間違いがあるなら、それを修正することです。」
2016年サニックスワールドラグビーユース交流大会 最終結果
- 2016年サニックスワールドラグビーユース交流大会の、男子16チームの最終的な結果は以下の通りです。
- 1位 グレンウッド ハイスクール(南アフリカ)
- 2位 東福岡高等学校(福岡)
- 3位 ロトルアボーイズ ハイスクール(ニュージーランド)
- 4位 トルロ カレッジ(イングランド)
- 5位 東海大学付属仰星高等学校(大阪)
- 6位 桐蔭学園高等学校(神奈川)
- 7位 慶應義塾高等学校(神奈川)
- 8位 石見智翠館高等学校(島根)
- 9位 クイーンヴィクトリア スクール(フィジー)
- 10位 エニセイ-STM(ロシア)
- 11位 國學院大學栃木高等学校(栃木)
- 12位 ジエングオ ハイスクール(中華台北)
- 13位 セントエドマンズ カレッジ キャンベラ(オーストラリア)
- 14位 大阪桐蔭高等学校(大阪)
- 15位 佐賀工業高等学校(佐賀)
- 16位 ソウル ナショナル ユニバーシティ ハイスクール(大韓民国)
参考URL:
- サニックスワールドラグビーユース交流大会 ウェブサイト
- sanix-sports.info/rugby/
- Rotorua Boys’High School
- www.rbhs.school.nz/
- 上野清子(Seiko Ueno)
- 新婚旅行でNZに魅せられ、1997年に夫婦でロトルアに移住。
- ジュニアからオールブラックスまで、NZラグビーが大好き。
- 娘一人。
- 留学エージェント「キックオフNZ」マネージャー
- モンテッソーリ小学校Trust Chairperson、通訳/翻訳。