世界最強のオールブラックスが試合の前に踊るHAKA(ハカ)。 実はこのHAKAには、所属する学校によって独自のスクールハカがあるのです。
HAKA(ハカ)って?
2015年のラグビーワールドカップで、史上初の連覇を成し遂げたオールブラックス。 その世界最強のオールブラックスが試合の前に踊るHAKA(ハカ)。 2015年ワールドカップでは、キャプテンリッチー・マッコウ選手を頂点とした三角形の配置でのHAKAは、とてもかっこよかったです。
もともとHAKAという言葉は、HA=Breath (呼吸)、KA=Fire(火)の意味からきているそうです。 気持ちを火のように吐き出すということを表しているのだということです。 つまり、HAKAとは、人々の気持ちのほとばしり、魂の叫びなのです。 歌や掛け声、動きも合わせたものを総称してHAKAと呼びます。 マオリの子どもたちは、小さい頃からHAKAを練習します。
小学校でのKapa Haka(カパハカ)の授業
先週、校長先生ミスターブレルをご紹介したロトルアのマルフロイ小学校は、マオリの子どもが比較的多い学校です。 Rumaki(ルマキ)クラスと呼ばれるマオリ語のバイリンガルクラスがあり、そこではマオリ語で授業が行われています。 そのルマキクラスの子どもたちを中心に、HAKAの授業が行われています。
ロトルアのマルフロイ小学校のKapa Haka(カパハカ)の授業を見せてもらいました。 Kapaとは英語でGroupのことなので、Kapa Hakaとは「ハカのグループ」の意味です。 マルフロイ小学校のKapa Hakaは、週に1回1時間半みっちりとマオリ語の歌や踊りを練習します。 先生は、Jamus Webster(ジェームス・ウェブスター)さん。 情熱あふれる楽しい先生です。
HAKAの練習が楽しくて仕方ない子どもたち
まずは、マオリ語の歌の練習から。 マルフロイ小学校の子どもたちは、みんなとても大きな声で一生懸命に歌います。 この子たちの歌を聴くと、私はいつも泣きそうになります。 そのひたむきさと声量に圧倒され、胸が熱くなってしまうのです。 あごがはずれるほどの大きな口をあけて、鼻の上にしわがよるくらい一生懸命歌っている男の子もいます。
ジェームス先生も楽しそうに教えていますが、子どもたちはみんなとても楽しそうです。 どの子も目をきらきらせさています。
「口を思い切り閉じて!鼻の穴も体も全部小さく閉じてー!」というジェームス先生の指示で、一斉に子どもたちは目も口も閉じて顔をくしゃくしゃにします。
「そして、今度は口も目も思い切り大きく開いてみよう!」
子どもたちは、目も口もこれ以上ないほどに大きく開きます。
「そう!それが口を大きく開けるということだ!今の感じを忘れずに。 その調子で大きく口と目を開けて歌ってみよう!」
先生も子どもたちも、両方ノリノリの授業です。 先生と子どもたちの、そして子ども同士もとても息が合っています。
HAKAをする際に重要な三つのこととは、「Respect, Discipline, Timing(リスペクト、ディシプリン、タイミング)」だ、とジェームス先生は言っています。 「お互いを尊重し、自らを鍛錬し、動きと呼吸のタイミングを合わせる。」ことが大事なのです。
Pukana(プカナ)!
「Pukana!(プカナ!)」の掛け声で、男の子たちは、一斉に「べえーっ」と舌を出します。
プカナとは男性が舌を出す動作のことで、これも魂のほとばしりなのだそうです。 HAKAでは必ず男性はプカナをします。 そして、女性はPute(プテ)と呼ばれるしぐさをします。 これは、大きく目を見開き、口をへの字に硬く結びゆっくりとあたりを見回すしぐさです。 プテは、ふくろうが夜の見回りと番人をしている様子を真似たもので、このしぐさは、「守護、子どもたちを守る母の象徴」だということです。
このようにニュージーランドの子どもたちは、小学校の頃からHAKAの練習をします。
伝統と誇りと敬意の象徴 それぞれの学校独自のスクールハカ
実はこのHAKAには、所属する学校やチームによって独自のものがあるのです。 それぞれの学校にスクールハカがあり、それぞれのチームにチームハカがあります。
マルフロイ小学校のスクールハカは、”Taku Matauranga" (タク マタウランガ)というHAKAで、このHAKAのタイトルは「My basic education(私の基礎教育=小学校)」という意味だそうです。 歌詞には、「ここは私の学ぶ場所」「ゴールを達成する」「常に前をみている」などのマオリ語の言葉がはいっています。
また、ロトルアボーイズハイスクールという男子高校がロトルアにあります。 この学校は、昨年度のニュージーランド全国大会で優勝したラグビーの強豪高校です。 ロトルアボーイズハイのスクールハカには、Raukura(ラウクラ)という言葉が何度も出てきます。 ラウクラとは、「羽」のことです。 ロトルアボーイズハイスクールのスクール紋章にもありますが、この学校の象徴は、「3つの羽」なのです。 だから、ラウクラとは自分たちの学校であるロトルアボーイズハイという意味だということです。
ちなみに、オールブラックスのHAKAには、有名なKamate(カマテ)の他に、Kapa o Pongo(カパ オ ポンゴ)があります。 ワールドカップでは、クオーターファイナル以降は、試合前にオールブラックスは、このKapa o PongoのHAKAをしました。 Kapa=Group、 Pongo=BlackですのでKapa o Pongoとは、Group of Black、そう、まさにオールブラックスという意味のチームのHAKAなのです。
各学校やチームに、独自のHAKAがあります。 生徒たちは自分の学校やチームと、自分たちのHAKAにプライドを持っています。 スクールハカやチームハカを練習し、勝利を祝うとき、うれしいとき、仲間が偉業を成し遂げたとき、悲しみのときなど、ことあるごとに自発的に誰かがリーダーとなって、ハカを行います。
スクールハカをすることで、自分たちの学校がさらに好きになり、さらに結束が強まるのです。 スクールハカは、愛校心と誇りの象徴であり、学校の仲間たちに敬意を表すパフォーマンスです。
スクールハカのご紹介
以下に、3つの学校のスクールハカを動画でご紹介します。
- マルフロイ小学校
- ロトルアボーイズハイスクールラグビー部
- クライストチャーチハイスクールラグビー部&ティマルボーイズハイスクールラグビー部
それぞれスクールハカは違っていて、それぞれに特徴があり、それぞれがとても良いです。
1. マルフロイ小学校の子どもたち。 まだ声が高くかわいらしいスクールハカの練習風景。 ひたむきさが胸を打ちます。 みんな楽しそうなのがとても良いです。 「Ko Wai Ra , Ko Wai Ra(コワイラ コワイラ)」というのは、「Who am I?」の意味だそうです。「私は何者なんだ?」と自問するところから学問到達への道が始まるということです。
2. ロトルアボーイズハイスクールのラグビー全国優勝を決めた直後の迫力のスクールハカ。「Raukura(ラウクラ)」と何度か叫んでいます。 ラウクラ=羽=3つの羽を象徴とするロトルアボーイズハイ、の意味です。 HAKAの後、選手が一人ずつコーチと肩を抱き合うのが素敵です。
3. クライストチャーチボーイズハイ対ティマルボーイズハイのラグビー試合前のスクールハカ。 まずかぶっているふさのついた帽子を地面に置くところから始まります。 英国紳士を彷彿とさせるスマートなHAKAです。
- 上野清子(Seiko Ueno)
- 新婚旅行でNZに魅せられ、1997年に夫婦でロトルアに移住。
- ジュニアからオールブラックスまで、NZラグビーが大好き。
- 娘一人。
- 留学エージェント「キックオフNZ」マネージャー
- モンテッソーリ小学校Trust Chairperson、通訳/翻訳。