English Level 1と留学生用英語ESOL
ニュージーランドでは2週間のスクールホリデー(秋休み)が終わり、今週から第二学期(ターム2)が始まりました。ターム2 から、ラグビー、サッカー、ネットボールなどのウィンタースポーツの公式試合も本格的に始まります。
さて、前回のコラムでは、ニュージーランドの高校で取得するNCEAの資格についてお伝えしました。ニュージーランドの大学に入るためには、NCEAの単位を取り、UE(University Entrance)をクリアすることが一般的です。
ドメスティックの生徒たちは、通常は、Year11でNCEAのEnglish(英語) Level 1を履修し、Year12でLevel 2、Year13でLavel 3を履修します。
しかし、留学生の場合は、留学開始の時点では、英語があまりできない場合が多いので、地元の生徒たちと同じようにYear11でEnglish Level 1を履修するのは難しいことがあります。
英語が理解できないと普通の授業についていくことが難しいので、日本のように英語を母語としない国からの留学生は、まずは英語をよく勉強し、英語での授業についていけるようになる必要があります。
そこで日本からの高校留学生は、English Level1ではなく、まずはESOL(イーソル=English for Speakers of Other Languages)と呼ばれる「他言語を話す人のための英語」を履修します。
ちなみに、ニュージーランドの大学に入学するための最低条件UEには、英語はLevel 2まで、数学はLevel 1までを取得することが求められています。(2016年5月現在)
例えば、ニュージーランドに3年間の高校留学をするとしたら、1年目はESOLで英語力をつけて、2年目にはESOLを受講しながらEnglish Level 1を履修し、留学3年目でUEをクリアするためのEnglish Level 2を取得できるようにがんばるということも可能です。
ESOLの到達度レベル
ESOLは留学生用の英語の授業ですが、ESOLにも学習到達度に応じてレベルがあります。
例えば、よくESOLの授業で使われているオックスフォード出版のHeadway(ヘッドウェイ)というテキストブックによると、ESOLのレベルは、以下のように簡単なレベルから難しいレベルに移行していきます。
- Beginner(ビギナー)
- Elementary(初級)
- Pre-Intermediate(中初級)
- Intermediate(中級)
- Upper- Intermidiate(中上級)
- Advance(上級)
高校の留学担当の先生によると、NCEAのEnglish Level 1は、ESOLのIntermediate(中級)と同じぐらいの難易度なので、English Level 1を受講するには、ESOLのPre-Intermediate(中初級)を修了している力がないとなかなか授業についていくのは難しいとのことです。
留学生が英語力をつけるには?
ロトルアレイクスハイスクールという、全校生徒700人程度の公立の共学高校がロトルアにあります。
留学生の数は多くはないですが、留学生担当の先生が二人いて、ESOLを教え、その生徒にあったゴールを設定し、そのゴールに向かってのどのように勉強を進めていったらいいのか、学習計画を立てるのも手伝ってくれます。
生徒一人一人の実力、バックグラウンド、そして希望する進路をふまえてアドバイスしてくれるという、極め細やかなサポートをしてくれる高校です。
ロトルアレイクスハイスクールの留学生担当のGail Hodgkinson(ゲイル・ホジキンソン)先生に、日本の留学生が効果的に英語力をつけるにはどのように勉強したらいいのか、話を聞きました。
「留学生、特に日本の留学生にとって一番重要な英語のレッスンは、”Speaking Practice"(スピーキングの練習)です。ニュージーランドに留学にくることで一番良いのは、ネイティブの英語スピーカーと話すチャンスが簡単に得られることです。
留学生にとって大事なことは、どんどん、積極的に先生やホームステイホストに話しかけること、どんどん地元の学生にかかわっていくようにすることです。
最初は、英語がわからなくて大変かもしれませんが、数ヶ月たてば聞けるようになってきます。
他の人が言っていることがわかるようになってきます。積極的に人にかかわっていくことで、話す力もだんだんについてきます。」
実技中心で、得意異分野での履修科目選択ができる。
また、英語がまだあまり上手ではない留学生も、ESOLで英語を勉強しながら、実技中心の科目を選択することで、高校でNCEAのクレジット(単位)を取っていくことも可能です。
英語が完璧ではなくても、実技中心の科目なら、授業についていくことができますし、またそれらの授業に参加することで、英語力も伸びます。
例えば、今年ロトルアレイクスハイスクールYear12 に留学中の日本人男子生徒は、ESOL以外に、音楽やアウトドア教育のLevel 2の科目を選択しています。英語はまだ完璧ではないですが、得意のギターや運動能力を生かして、音楽とアウトドア教育の両方の科目で良い評価をうけています。
例えば、ある日のアウトドア教育の授業では、幅跳びをやっていました。幅飛び、高飛びなどの記録をとり、それをまとめて、身体能力についてのレポートを書く、という授業です。
また別の学校のYear13の日本のある留学生は、英語でエッセイを書く練習を日々しています。彼が履修しているハイパフォーマンスLevel 3という体育系の授業では、「アルコールとドラッグが身体に及ぼす影響について」というレポートを書いているそうです。
このように、単なる体育の授業ではなく、違った角度からスポーツや身体能力を考えるという授業もあるのです。
また、ある生徒は、マオリカービング(マオリの彫刻)の授業を選択し、先生からすばらしい評価を得ています。「日本にいたときから彫刻は得意なんです。」と言っていました。彼のマオリ彫刻は、地元のマオリの生徒たちに比べても素晴らしいと聞きました。
ニュージーランドの高校の授業には、さまざまな科目があって、英語がパーフェクトでない留学生でも履修できる実技中心の科目を選択することもできます。
(ただし、ニュージーランドの大学に進学するために、NCEA Level 3を履修してUEをクリアしたいというかたは、高校で取得しておくべき科目と単位が、大学によって決められていますので、それに従って高校での科目選択をする必要があることにご留意ください。)
また、(日本を含む)英語を第一言語としない国からの留学生が、高校卒業後に、ニュージーランドの大学に入学したい場合は、ニュージーランドの高校でNCEA Level 3とUEを取る方法以外に、IETLS(アイエルツ=International English Language Testing System)という英語の試験を受け、求められているポイントに達した上で、必要に応じてファンデーションコースに通ってから、メインストリーム(本科コース)に進むという方法もあります。
積極的に人とかかわることが英語上達のキーポイント
英語力をつけるために、シンプルですが一番重要なことは、「英語を話す人と積極的に自分からかかわること」だそうです。また、科目選択を少し工夫すると、NCEAの資格を効果的に得られます。ESOL以外の科目を受講することで、英語力もさらに伸びていきます。
英語でも、音楽でも、スポーツでも、アートでも、留学中に自分がしようと思ったことについて達成する目標(ゴール)を決め、そのゴールに達するために努力することを楽しめたら、それが一番良いのではないかと思います。
- 参考URL:
- Rotorua Lakes High School
- rotorualakes.school.nz/index.php/en/homepage
- 上野清子(Seiko Ueno)
- 新婚旅行でNZに魅せられ、1997年に夫婦でロトルアに移住。
- ジュニアからオールブラックスまで、NZラグビーが大好き。
- 娘一人。
- 留学エージェント「キックオフNZ」マネージャー
- モンテッソーリ小学校Trust Chairperson、通訳/翻訳。