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第7回 ニュージーランドの高校は国が認めた資格を取得するところ- NCEAのしくみと概念

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ニュージーランドは4学期制

ニュージーランドの学校は、先週4月18日から2週間のスクールホリデー(秋休み)にはいっています。

ニュージーランドの小中学校、高校は、2月に第1学期が始まり12月に第4学期が終わる4学期制です。学期と学期のあいだには、2週間のスクールホリデーがあり、12月半ばで学年(School Year)が終了し、夏休みとなります。

2016年の学期日程は以下のようになっています。学期開始日や4学期の終了日は、学校や学年により多少異なります。
高校のシニア学年(Year11 - Year13)は、11月の半ばからNCEA試験が始まるため、実際は通常授業は11月初旬で終了します。

このスクールタームは、毎年大きな変更はありません。

2016年
ターム1(1学期): 2月1日~4月15日
ターム2(2学期): 5月2日~7月8日
ターム3(3学期): 7月25日~9月23日
ターム4(4学期): 10月10日~12月16~20日

NCEAとは?

さて、今回はニュージーランドのSecondary School シニア学年 (Year11-Year13=日本の高1から高3)が、学校で取得するNCEAという資格について、詳しくご紹介いたします。
ニュージーランドで高校を修了し、さらに上の学校に進学するためには、全国統一の高校教育認定資格であるNCEA(National Certificates of Educational Achievement)という資格を高校で取得します。
ケンブリッジ試験やIB(International Baccalaureate)をカリキュラムに取り入れている高校もありますが、ニュージーランドの大学に進学するには、NCEAを取得することが主流となっています。
また、NCEAの取得資格は、就職の際にも考慮されることもあります。

ニュージーランドの高校の多くは5年制でYear9 からYear13 までです。(Year 7から生徒を受け入れている7年制の高校もあります。)
Seniorと呼ばれるYear11 以上は、NCEA(National Certificate of Educational Achievement)という国が定めた基準で単位認定され、国で統一された資格を取得することができます。

NCEAには、Level 1から Level 3まで3段階のレベルがあり、通常はLevel 1をYear11(高校1年生)、Level 2をYear12(高校2年生)、Level 3をYear13(高校3年生)で取得します。

その資格の認定をおこなったり、基準を定めたり、試験や資格の作成や施行を行う「国の機関」をNZQA(New Zealand Qualifications Authority) といいます。

ニュージーランドの高校での単位取得システムについて

まず、単位取得も含めて、ニュージーランドの高校のシステムは、日本とは根本的な考え方から違います。

日本では「高校に一定期間通って、卒業に必要な単位を取得し、高校を卒業する。大学に行きたい場合は、別途大学入学試験を受ける。」というのが一般的だと思います。
NCEAは、どちらかと言えば、高校を卒業するための単位というよりも、「NZの高校で取得可能な資格」「該当レベルの修了認定」という意味合いが強いです。

例えば、高校のYear11 に在籍中にNCEAの数学のLevel 1代数の単位を取得すれば、NZのNCEAの数学のLevel 1の代数の資格を取得した(=数学の代数の分野でLevel 1 を修了したと認定された)」ということになります。つまり、その科目その分野の、国による修了認定です。

Year 12 に在籍していてもLevel 1 の単位を取得できますし、Year 11に在籍していてもLevel 2 の単位を取得できます。また、同じ科目の同じレベルの単位を2年間に渡って取得することもできます。また、例えばLevel 1の数学をYear11で単位取得できなくても、Year12 でLevel 2 の数学を履修することもできますし、Level 1を再度履修することもできます。また、得意な科目はLevel 2、苦手科目はLevel 1というふうに、科目ごとに履修レベルが違ってもかまいません。
言い換えますと、学年(年齢)と資格のレベルはリンクしていなくてもかまいません。
従って、「進級」という概念も、日本の「進級」または「落第(留年)」という概念とは異なります。

Internal Assessment (学内審査)とExternal Assessment(全国統一試験)

また各科目の各分野の単位認定の審査(試験)は、大きく2種類あります。

一つは学校の授業中の試験や提出物による審査(試験)=Internal Assessment、
もう一つは11月の全国統一試験=External Assessment(NCEA Exam)です。

学内審査と学外審査の両方の試験で少しずつ単位を取得していきます。従って、宿題で課された提出物、授業中の実技、などでも先生による審査が行われ、一定以上の評価を得れば、単位が取得できます。NCEA全国統一試験は筆記型の試験ですので、実技中心の科目は、
Internal Assessment でこつこつと単位を取っていくことが多いようです。

幅広い選択ができるさまざまな科目

また、ニュージーランドの高校は、日本の普通科と商業、工業科を合わせたような内容になっており、選択科目は、実に多種多様です。英語や数学などのコアカリキュラムのほかにも、会計学、ツーリズム、テクノロジー、料理、建築学、語学、マオリ文化、アートデザイン、裁縫など、多くの選択科目オプションがあります。
ロトルアの高校の、さまざまな科目の授業の様子を少しご紹介します。

まずは、コアカリキュラムの授業風景。Year13の生徒対象の数学のひとつ、統計学Level 3の授業です。

数学

コンピュータを使って作曲をするYear11の学生。Music Level 1の授業です。

音楽作曲

コンピュータで、夢の家をデザインするYear11の学生。建築Level 2の授業です。

建築

Art design Level 2の授業では、Year12の学生が製図を行っていました。

製図

Year11、Drawing Artの授業中の様子と、壁に飾ってあったYear13の生徒の作品です。

アート

アート

Adventure Education Level 2の授業では、Year12の学生たちが幅飛びをし、記録をつけていました。幅飛び、高飛び、砲丸投げなどいくつかの種目で記録をとり、それをまとめて身体能力のレポートをする授業です。

幅跳び

社会で生かせるNCEAの資格

例えば、会計のLevel 3 の必要単位を全て取得した学生は、NCEA Accounting Level 3の資格を取得できます。この資格を持っていれば、例えばですが、会計士の会社の求人に応募して、もしかすると資格のない人よりも少し有利になることもあるかもしれません。つまり、国が会計のLevel 3 までの知識があると認めたことになりますので、社会でもそのように扱われる、ということです。
高校で取ったNCEAの資格は、大学進学だけではなく、就職のときも「資格」として認知されています。

また例えば、Year 12 で英語と数学のLevel 2 まで一定以上の単位を取得してYear13は高校を辞めた学生でも、「NCEAの英語と数学のLevel 2 の資格(国による修了認定)」を持っている、ということになります。
ニュージーランドの国立の専門学校であるポリテクニックのコースの中には、Level 2 までの取得で入学できるコースもありますので、例えば、Year 12 までで高校を辞めた場合も、ニュージーランドのポリテクニックのコースに入学できる場合があります。

従って、ニュージーランドの高校では、日本のような「卒業」の概念があまり強くありません。途中で高校をやめても、それまでに取得したNCEAの資格(修了認定)は一生持っていられますので、それを持って専門学校に入学したり、Level 3をまた取得するための勉強をどこかの学校でしたりすることもできます。

NCEA全体の三つのレベル

NCEA English Level 3など各科目のNECAの資格のほかに、NCEA Level 1、NCEA Level 2、NCEA Level 3 という資格があります。各レベルで一定以上の単位を取得すれば、それぞれの資格が取得できます。
NCEA Level 1 の資格を取得するためには、Level 1 の科目で合計80単位を取得する必要があります。Level 2 の資格はLevel 2 の単位60単位以上に加えてどのレベルでも20単位を取得していれば、NCEA  Level 2 の資格が取得できます。
Level 3 は、Level 3 の単位60単位に加えてLevel 2以上の20単位を取得していればNCEA Level 3 の資格が取得できます。
(加えて各レベルとも、文系科目と理系科目のLevel 1の指定科目を一定以上の単位取得することが必須です。)

University Entrance(UE)-大学入学に必要な高校でのNCEAの単位

ニュージーランドの大学は、すべて国立で、全部で8大学あります。
Auckland University of Technology(AUT- オークランド)
Lincoln University(リンカーン大学- クライストチャーチ)
Massey University(マッセイ大学- パーマストンノース)
University of Auckland(オークランド大学- オークランド)
University of Canterbury(カンタベリー大学- クライストチャーチ)
University of Otago(オタゴ大学- ダニーデン)
University of Waikato(ワイカト大学- ハミルトン)
Victoria University of Wellington(ビクトリア大学- ウェリントン)

ニュージーランドの大学に入学するためには、NCEAで最低でもこれだけは取得しておかなければならないという単位があります。
ニュージーランドの大学にはいるための必要最小条件のことをUniversity Entrance(UE)といいます。
UEを満たした上で、さらに各大学、各学部にそれぞれの入学条件があります。例えば、「オークランド大学の○○学部の△△専攻に入学したいなら、高校で☆☆という科目のLevel 3で□□単位以上は、必ず取っておかなければならない。」というふうに、各大学、各学部で、入学に必要な科目や単位数は異なります。
反対に言うと、その大学が提示する入学に必要な科目と単位数を満たしていれば、希望の大学にはいれるということです。ただし、入学希望者が多かった場合は、これまでの高校で取得した単位数や成績が考慮され、面接などによって入学の可否が決定されます。入学できるかどうかは、最終的には個々の大学が判断します。

日本のように、いくらこれまでの成績がよくても、入試の日に体調不良などで試験がうまくいかなかったら大学に入学できないというのではなく、高校でコツコツと日ごろから勉強して、しっかりNCEAの単位をとっておけば、希望の大学に入学できる可能性が高い、というのがニュージーランドの大学入学選考の特徴です。

入学選考基準にこれまでの努力の積み重ねを考慮してもらえるのは、生徒にとって、よりフェアであるような気がします。

―参考ウェブサイト 

NCEAについて(NZQAのウェブサイト内) 
http://www.nzqa.govt.nz/qualifications-standards/qualifications/ncea/

ニュージーランドのUE (University Entrance)
http://www.nzqa.govt.nz/qualifications-standards/awards/university-entrance/

参考までに、NZQAのウェブサイトによりますと、現在のUEが大学からの要求に見合ったものであるか、現在NZQAで審議されているとのことです。
NZQAのウェブサイトによると、2016年末までに、UEが変更になるか現行のままかの審議の結果が出るそうです。
http://www.nzqa.govt.nz/qualifications-standards/awards/university-entrance/review-of-university-entrance-requirements-2016/

上野清子(Seiko Ueno)
新婚旅行でNZに魅せられ、1997年に夫婦でロトルアに移住。
ジュニアからオールブラックスまで、NZラグビーが大好き。
娘一人。
留学エージェント「キックオフNZ」マネージャー
モンテッソーリ小学校Trust Chairperson、通訳/翻訳。

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