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第2回 小学校の校長先生の一番重要な任務とは?

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ニュージーランドの小学校の校長先生ってどんな人なのでしょうか。小学校の校長の一番重要な任務とは何でしょう?ロトルアのマルフロイ小学校の校長先生とお話しました。

校長先生はミスターブレル

ロトルアにMalfroy School(マルフロイ・スクール)という小学校があります。Year1からYear6(小学校1年生から6年生)まで、 約350人の子どもたちが在籍しています。

02-1 MalfroySchool

この学校の校長先生は、Nicky Brell(ニッキー・ブレル)さんです。子どもたちは、校長先生を「ミスターブレル」と呼んでいます。

02-2 MrBrell

ニュージーランドでは、先生と生徒の立場はきっちりと区別されていますので、子どもたちが校長先生や先生をファーストネームやニックネームで呼ぶことは認められていません。ラストネームにミスター、ミセス(ミズ)などの敬称をつけて呼ばないといけません。これは、小学校から高校まで、多くの学校で施行されているルールです。

余談ですが、大人同士は、職場や学校でもフレンドリーに呼び合いますので、先生たちや、生徒の保護者たちは、校長先生を「ニッキー」とファーストネームで呼びます。
日本では校長先生を保護者がファーストネームで呼ぶことはまずないと思いますが、これぞ文化の違いでしょう。
実は、私は校長先生を「ニッキー」と呼ぶ度に、「ニッキーでいいのだろうか?」と少しドキドキしてしまいます。

大好きなミスターブレル!

学校で生徒が何かいけないことをすると、担任の先生に注意をされ、それでも改善しなかった場合は、校長先生と面談します。その点はニュージーランドも日本と同じです。
マルフロイ小学校でも、子どもたちが重大な校則違反をした場合、それは「Mr. Brell Matter」とみなされ、校長室に呼ばれてミスターブレルから厳重注意をされることがあります。
しかし、日本と少々異なるのは、このマルフロイ小学校では、校長先生は決して怖いだけの人ではなく、子どもたちはみんなミスターブレルが大好きで、何かあるとミスターブレルに会うために気軽に校長室を訪れるということです。

工作を上手に作ることができたり、何かの実験がうまくいったり、何かで賞をもらったりすると、子どもたちは喜んでミスターブレルに見せにいきます。ただ単にミスターブレルに「Hello!」だけを言いに行く子もいます。校長先生はどの子に対しても、しっかりと向き合い、優しく辛抱強く話を聞いてくれます。
少し前にも、Year1(小学校1年生)の子が、作文がうまく書けたからとミスターブレルに見せにいき、「上手に書けたね。ニッキーより。」とコメントをもらってきていました。

率先して裏方仕事もこなすミスターブレル

日本の校長先生は、学校で一番偉い人で、きっちりとスーツを着て常に校長室にいる人、学校行事の際には全体を把握するために座って監督している人というイメージが私にはありましたが、マルフロイ小学校の校長ミスターブレルは少し違います。
学校で一番偉い人であるのは間違いありませんが、ミスターブレルはスーツを着て座っていることはあまりありません。
カジュアルシャツにハーフ丈パンツをはいてギターを首からぶらさげて構内を歩いていることもありますし、落ちているごみを拾いながら巡回していることもあります。会う子どもみんなに声をかけ、子どもと握手をし、子どもたちに囲まれて立っていることも多いです。

02-3 Tidyup Bike

 

02-4 MrBrellCamera

また学校行事では自ら率先して、他の先生方と一緒に裏方の仕事もします。
先だってのスクールイベント、デュアスロンでもミスターブレルは、バイク用ヘルメットをかぶって、自転車の整理をしたり、レース中はコース誘導係兼カメラ担当としてフィールドにずっと出ていました。

校長先生は子どもたちのモデル

私はミスターブレルに伝えたことがあります。
「ニッキー。あなたは、いつも自分でごみを拾ったり片付けをしたりされますよね。日本では校長先生はあまりそういうことをしないから、私は最初驚きましたが、あなたが率先してそうされることをとても素晴らしいと思うし、尊敬しています。」と。

すると彼からこのように返事がかえってきました。
「自分がまずやらないと他の人は決してしないからね。私は、自分自身が子どもたちのモデルであるべきだと思っているから、自分が率先して何でもやらなくては、と心がけています。
子どもたちは私のすることを見ていますからね。」

なぜ小学校の校長になったのか?

ミスターブレルに聞いてみました。「なぜ、あなたは小学校の校長先生になろうと思ったのですか?」と。

ミスターブレルはこのように答えました。
「私は長年、ロトルアのいくつかのIntermediate Schoolで教職についていましたが、もう少し若いPrimaryの子どもたちの教育に携わりたくなりました。
インターミディエイトの学生に比べ、小学校の年齢の子どもたちは、驚くほど純粋で好奇心旺盛です。自分が見たもの、聞いたことを何でもそのまま素直に吸収します。子どもたちが小学生のときに、何を見て何を聞くか、何を教えられるかが、子どもたちのJourney of Lifeに大きな影響を与えます。小学校の子どもたちを教えるというのは、とても重要で責任のある仕事です。」

校長として一番重要なタスク(任務)とは?

校長先生ミスターブレルに、一番聞いてみたかったことがあります。
それは、「校長先生としてミスターブレルが考える一番重要なタスク(任務)は何なのか」ということです。

彼は即答しました。
「一番重要な私のタスクは、“すべてを楽しむこと”です。」

「自分のするべき仕事すべてを楽しむようにしています。まず自分が仕事を楽しんでハッピーでいないと他の人をハッピーにすることはできないし、子どもたちにハッピーであることの良さを教えてあげることもできません。また、働く先生をハッピーにしてあげることも校長の大事な仕事です。先生がハッピーならそのクラスはハッピーになります。だから、私は自分の最も大事なタスクは、自分自身が仕事の“すべてを楽しむ”ことだと考えています。」

最後に、ミスターブレルはこのように言いました。
「子どもたちはティーンエイジャーになったら、夢を持つようになり、その夢をかなえるために努力するようになります。それは人生の旅です。小学校時代は、その旅のスタート地点です。小学校は、いろんなことに出会って、自分の夢を発見する手がかりをつかむ場所だと思っています。自分の夢をみつけるためのサポートをすることが、私の喜びです。」

02-5 MrBrellandChildren

一番重要な任務は、「すべてを楽しむこと。」と言い切る校長先生。
私はその答えを聞いてうれしくなりました。実にキウィらしい言葉です。
こういう校長先生がだからこそ、子どもたちにとってミスターブレルは、大好きなあこがれの人なのだと思います。

Malfroy School
www.malfroy.school.nz
上野清子(Seiko Ueno)
新婚旅行でNZに魅せられ、1997年に夫婦でロトルアに移住。
ジュニアからオールブラックスまで、NZラグビーが大好き。
娘一人。
留学エージェント「キックオフNZ」マネージャー
モンテッソーリ小学校Trust Chairperson、通訳/翻訳。

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