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第9回 海外で仕事をしてわかった。「信用」は言葉より強い

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第9回 海外で仕事をしてわかった。「信用」は言葉より強い

第2回で書いたとおり、僕はいまだに英会話が苦手です。第3回では、職場で私語を「しなかった」のではなく「できなかった」という話もしました(笑)。

そんな僕が、どうしてニュージーランドで25年以上もビジネスを続けてこられたのか。改めて考えてみると、その理由の一つとして思い浮かぶのが「信用」です。

……と書くと、なんだか立派なことをしてきたように聞こえますが、そうではありません。今回は、僕が考える「信用」について書いてみます。

信用を得ようとしたことはない

先に言っておくと、僕は「信用を得よう」と思って何か特別な行動をしたことはありません。やってきたことは、本当に単純です。

「やります」と言ったことは、最後までやり抜く。約束した納期は守る。

それだけです。

もちろん、仕事をしていれば、自分たちの技術や努力ではどうにもならない外的な理由で、納期に間に合わなくなることもあります。そういうときは、間に合わないとわかった時点ですぐに相手に連絡して、事情を説明し、了承をもらうようにしています。

ここで大事にしているのは、自分勝手に判断しないこと。「少しくらい遅れても大丈夫だろう」「あとで言えばいいか」と自分で決めてしまわない。判断するのは、あくまで相手です。

「このエピソードで信用を得た」と言えるような劇的な話は、正直思いつきません。日本の会社員時代に当たり前に教わってきたことを、ただ地道に積み重ねてきただけです。でも振り返ると、その積み重ねこそが信用だったのだと思います。

偉そうには語れない、信用を失った話

とはいえ、僕も偉そうに語れる立場ではありません。信用を失った経験もあるからです。

あるイベントのコーディネートを引き受けたときのことです。依頼内容の理解が曖昧なまま進めてしまい、当日の通訳の手配ができていませんでした。当日、とにかく急きょ通訳を手配しましたが、最低限のことしかできず、イベント全体が思うように進みませんでした。当初描いていた構想と比べると、明らかにクオリティの低いものになってしまいました。

その日本の依頼主からは、それ以来、二度とイベントコーディネートの依頼は来ていません。

当然だと思います。僕自身も「あのとき、なぜもっと細かく確認しなかったんだろう」と、今でも反省しています。わからないことを「たぶんこういう意味だろう」で進めてしまったのは、完全に僕のミスでした。

「信用は何年もかけて少しずつ積み上がるのに、失うのは一瞬。」それを身をもって知った出来事でした。

「できない」と言うことも、信用になる

この失敗から、僕が決めたことがあります。依頼内容があまりに曖昧なものは、お断りする、ということです。

曖昧な依頼というのは、多くの場合、依頼主自身も「なんとなく」しかわかっていない状態です。話を進めていけば形になるのかもしれません。でも、そこまで一緒に詰めていくなら、それなりのコストがかかり、請求額も跳ね上がります。

そのことを正直に伝えると、たいてい「それなら他のところに頼みます」で話は終わります。

僕は、それでいいと思っています。

お互いの守備範囲をはっきりさせて、そこにかかるコストをお互いが理解してからでないと、プロジェクトは進みません。曖昧なまま引き受けて、最後に相手をがっかりさせるほうが、よほど信用を失います。

同じように、依頼があまりに壮大で、自分やスタッフを総動員しても到底できないと判断したときもお断りしています。

日本だと、頼まれたことを断るのは何となく気まずいものですよね。でも海外で仕事をしていると、「できないことを、できないと言う」ことも、ちゃんと信用になると感じています。第2回で「わからないときは『わからない』と言えばいい」と書きましたが、仕事でもそれは同じなんです。

信用は、貯金に似ている

信用というのは、貯金に似ていると思います。

約束を守った。納期に間に合わせた。無理なものは無理と伝えた。どれも、その場では誰も褒めてくれないような、当たり前のことばかりです。一回一回は小さな額です。

でも、それが少しずつ積み上がっていく。そして、自分の知らないところで、その貯金が働いてくれることがあります。

第7回で、日本の大手中古車会社の方が突然オフィスにやってきた話を書きました。オークランドのカフェで働いていた日本人に相談したら「それならNZDAISUKI一択です」と言われた、という話です。あれも、どこかで積み上がっていた信用が、知らないところで仕事を連れてきてくれたのだと思っています。

逆に、約束を破れば減るし、あのイベントのように一度の失敗で大きく減ることもある。そこも貯金とよく似ています。

信用には、英語はいらない

英語が苦手な僕が、25年以上この国でビジネスを続けてこられた理由。それは、流暢な英語でも、巧みな交渉術でもありませんでした。

約束を守る。
やると言ったことはやり抜く。
できないことは、できないと言う。

どれも、英語力とはまったく関係のないことです。

英語が完璧でなくても、信用を積み重ねることはできる。

25年以上やってきて、僕はそう確信しています。

もし「英語ができないから海外では無理だ」と思っているなら、まずは今日の約束を一つ、きちんと守ることから始めてみてください。それは、海外でもそのまま通用する、いちばん確かな武器になるはずです。

海外で何かやってみたい、日本にいながら海外を相手に仕事をしてみたい、海外移住や起業を考えている。でも「自分の場合は何ができるんだろう?」「英語ができないのにいいのかな?」と思っている方は、お気軽にご相談ください。
テリー野澤:terry@nzdaisuki.com

テリー野澤
大学卒業後、新卒で日本のコンピュータメーカーに就職。金融系システムエンジニアとしてプログラマー、上流エンジニア、ブリッジSE、顧客サポート業務を歴任して退職。
その後、ニュージーランドに渡航して起業。ニュージーランドの日本人コミュニティ基盤をオンラインで構築して運営している。そのNZDAISUKI.COMは、ニュージーランド国内の日本人向け最大のコミュニティサイトとなっている。
LINE:https://lin.ee/9dVD1au