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第3回 日本では普通のことが、海外では武器になる

『海外という選択肢 〜テリー野澤の「世界で何かやってみる」話〜』の記事一覧へ

第1回では「なぜ僕は海外に出たのか」、第2回では「英語ができなくても仕事はできるのか」という話を書いてきました。今回は少し視点を変えて、「日本人として当たり前にやってきたことが、海外ではどう見られているのか」について書いてみます。

「え?NZではこれが普通なの?」と思ったこと

ニュージーランドに来てみて戸惑ったことはいっぱいありましたが、強烈だったのは「時間の概念」です。

打ち合わせの時間になっても来ない、電話すると「今そっちに向かっている」という蕎麦屋の出前状態(こんな言葉知っている人も少なくなってきているかも)。同じ予定のドタキャンを2度3度とやられた日には、憤りすら覚えました(笑)。

とあるレストランで、オープン時間と書いてある時刻ぴったりに言ったら、オーナーさんらしき人がドアの鍵を開けていました・・・・・「え?今オープン時刻だよね?今から準備?」と聞いたら「そうだよこれから支度するから、中入って待ってて。日本の時間と違うんだよ」という返事でした。「日本の時間とは違う」つまり、日本人は時間ぴったりだけど、ここ(NZ)では違うんだよという意味です。

もちろんニュージーランド人全員が時間にルーズというわけではありません。ただ、日本から来たばかりの僕にとって、「時間」に対する感覚の違いを感じる場面が何度もあったのは事実です。

「すごいね」と感心された、意外な理由

僕の日本での前職は、金融担当のシステムエンジニアでした。銀行や信用金庫、生命保険会社を渡り歩きながら開発の現場に入り、現場SEと取引先の間に入って進捗状況を確認したり、仕様書を確認したり、ミスがないかのチェックをしたりと、現場SEの裏方に徹した作業を日々こなしてきました。日本ではごく当たり前の、いわば「基本動作」だったこの正確さと丁寧な確認作業が、こちらに来てからは「感心される」ポイントでした。

とあるサーバーのメンテナンス業務を請け負っていた会社では、夜通し届くSPAMメールを毎朝全従業員がそれぞれ手作業で受信ボックスから削除していました。とくに仕事の範疇ではなかったのですが、それをみていて「この方法でこうやるといいですよ。ついでに他のところももっと効率化できるところがあるのでシステム部の人のレクチャしましょうか?」と提案し講義しました。僕にとってみれば、同僚とランチタイムに食事しながら会話をする程度の内容です。もちろんそんな内容なので仕事範囲外ですが余計な請求はしませんでした。すると、その会社の社長さんから連絡があり「あんな凄いことしてくれて、スタッフの研修までしてくれて仕事料は支払うよ」とものすごく感動してくれました。(請求しないと一度言ったものは頂かない主義なので、ありがたいお言葉でしたが謹んでお断りしました)

別に技術のレベルがどうというつもりではなく、ポイントはそこではなくて、「依頼されている仕事以外のところでも気がついたら対応する」というところです。少なくとも、僕が日本で会社員をしていた頃は、そう教えられてきました。「仕事は自分でみつけろ!」新人時代によく言われた言葉です。与えられた仕事「だけ」をするのではなく、回りみながら視野を広くもって、こまっている人がいれば助ける。当然のことをしただけなのです。

もうひとつ、想像しなかったところで評価されたことがあります。それは「業務中に私語をしない」「休憩もあまり取らない」という勤勉ぶりです。真面目な社員だと思われていたようですが、種明かしをすると、単純に英会話が苦手で、雑談に加われなかっただけです。第2回で書いた「TOEIC550点、想定外の質問には対応できない」あの英語力です。私語をしなかったのではなく、私語ができなかったから。それでも結果として、周りからは「勤勉な日本人」として映っていたのですから、人生というのは面白いです。笑

「対応が早い」という、日本人らしい信頼のつくり方

この「何事も丁寧に、正確に」という日本の習慣は、NZDAISUKI.COMのサイト運営でもそのまま活きていると感じています。広告主やユーザーとのやり取りでいつも言われるのが、「対応が早い」という一言。特別なことをしているつもりはなく、来たメッセージにはできるだけ早く目を通し、返す。日本では当たり前とされているスピード感が、こちらでは信頼につながっている実感があります。

こうして振り返ってみると、僕自身は、こうしたことを「海外で通用する特別な強み」だと思ったことはありませんでした。日本で染みついた「当たり前」の積み重ねが、結果としてこの国での評価や信頼を作ってきたのだと思います。

「自分には何もない」と思っている人ほど、海外に目を向けてほしい

「海外で何かやってみたいけれど、自分には特別なスキルなんてない」

そう思っている人もいるかもしれません。僕自身もそうでした。僕にとっては当たり前だった「時間を守る」「早く返事をする」「視野を広く持つ」。そんなことが、ニュージーランドでは信頼につながりました。自分の強みというのは、自分ではなかなか気づかないものです。

なぜなら、自分にとっては「できて当たり前」だからです。でも、環境を変えると、その「当たり前」の価値が変わることがあります。

だから僕は、「自分には海外で通用するものなんて何もない」と最初から決めつけなくていいと思っています。場所を変えれば、あなたの「普通」が、誰かにとっての「価値」になるかもしれません。

これが僕が一番感じていることです。

いかがでしたでしょうか。第1回、第2回、第3回と、僕がこれまで経験してきたことを綴ってみました。

読んでいただくと分かる通り、なかなかのポンコツぶりですよね(笑)。それでも、気がつけばニュージーランドで20年以上、会社を経営している自分がいます。特別な才能があったわけでも、英語がペラペラだったわけでも、最初から立派な事業計画があったわけでもありません。では、なぜそれでも続けてこられたのか。

次回からは、そんな「海外で仕事を続けていくために僕が大切にしてきたこと」も、少しずつお伝えしていきたいと思います。

海外で何かやってみたい、日本にいながら海外を相手に仕事をしてみたい、海外移住や起業を考えている。でも「自分の場合は何ができるんだろう?」「英語ができないのにいいのかな?」と思っている方は、お気軽にご相談ください。
テリー野澤:terry@nzdaisuki.com

テリー野澤
大学卒業後、新卒で日本のコンピュータメーカーに就職。金融系システムエンジニアとしてプログラマー、上流エンジニア、ブリッジSE、顧客サポート業務を歴任して退職。
その後、ニュージーランドに渡航して起業。ニュージーランドの日本人コミュニティ基盤をオンラインで構築して運営している。そのNZDAISUKI.COMは、ニュージーランド国内の日本人向け最大のコミュニティサイトとなっている。
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