ニュージーランドに移住して、気がつけば25年が経ちました。
正直に言うと、僕は最初から「海外で成功してやろう」とか「グローバルに活躍したい」というような、かっこいい志を持ってこの国に来たわけではありません。むしろ逆で、何も考えていなかった。そんな人間が、なぜ今こうして「海外という選択肢」というコラムを綴るのか。今回は僕の海外生活人生のスタートのお話です。
なぜ日本を出ようと思ったのか
新卒で入社したのは世界でも有数のコンピューターメーカーで、僕は金融担当のシステムエンジニアとして働いていました。担当は銀行や信用金庫、生命保険会社。全国各地の拠点に3〜6ヶ月単位で常駐しながら、システム開発の現場を渡り歩く日々でした。
転機が訪れたのは、最後に赴任した現場でのことです。開発体制に納得がいかず、上司といっても直属の上司ではなく取引先の上司とぶつかりました。そして、勢いのまま会社を辞めてしまったのです。
当時はまだ「転職」自体にネガティブなイメージが色濃く残っていた時代でした。そのため正直、辞めたことを友人たちに知られるのが気まずかったし、なにより会いたくなかったのです。そんな気持ちが、以前からうっすらと憧れていた「海外生活」への夢と結びつき、僕は半ば「逃亡」するようにして日本を飛び出しました。
つまり、明確なビジョンがあって海外に出たのではありません。かっこよく言えば「決断」でしたが、実態は「勢い」と「逃避」だったというのが正直なところです。
なぜニュージーランドだったのか
海外に出ると決めたのはいいけど、フランス語もスペイン語も話せない。唯一頼れそうだったのは、中学・高校で習った英語だけでした。とはいえ、その英語も実は苦手科目。得意でも何でもありませんでした。
それでも「英語圏なら基礎は覚えているし何とかなるかもしれない」という淡い期待と、「友人たちが簡単には遊びに来られなさそうな国」「自分自身も行ったことのない国」という条件で、ニュージーランドを選びました。要するに、深い理由はありません。海外であれば、本当にどこでもよかったのです。
来た当初、将来をどう考えていたか
将来のプランなど、正直まったくない状態でした。とにかく現地で就職さえできれば何とかなるだろう、という漠然とした思いだけで、ただの勢いでニュージーランドに来てしまった感じです。起業するなんて発想は、頭の片隅にもありませんでした。
起業のきっかけは、思いがけない形でやってきました。当時付き合いのあった会社の社長から「NZの掲示板サイトがあるけど、買わないか?」と声をかけられたのがきっかけです。掲示板というのは、当時日本で流行っていた「2ちゃんねる」みたいな感じでいい意味でも悪い意味でも匿名で好き勝手書き込みができるものです。一見ビジネスになりそうもないですが、「これを有名サイトに育てれば、広告収入というビジネスモデルが成立するのでは」という考えが頭に浮かび、思い切って購入しました。その後、自分なりに手を加えてスタートさせたのが「NZDAISUKI.COM」です。これが、僕の起業の始まりでした。
海外に来てよかったと強く感じたこと
海外生活で何より良かったと感じるのは、家族との時間を自分の裁量で確保できたことです。子供が生まれたときは立ち会うことができたし、幼稚園から高校まで、送り迎えもずっと可能な限りしてきました。もし日本であのまま会社に勤め続けていたら、きっとこうはいかなかっただろうと思います。この「家族優先」というライフスタイルを実現できたことは、僕にとって本当に大きな意味を持っています。
また、日本の事業者団体などに所属していると、「海外に拠点がある」というだけで、ある種の目立ち方ができます。これは自分自身のブランディングという意味でも、思わぬ優位性になっていると感じています。
なぜ今、「海外という選択肢」を伝えたいのか
誤解のないように言っておきたいのですが、日本で働き続けることは十分素晴らしい選択肢であることに変わりはありません。それでも僕があえて「海外という選択肢」を伝えたいのは、視野を海外に広げることで、ビジネスとしてのマーケットそのものが大きく広がるからです。
拠点を海外に持てば、仕事の内容によっては、好きな季節を選んで移動しながら、心豊かに暮らすことだってできますし、海外に拠点を持つということは、単なる「移住」ではなく、可能性そのものを広げてくれます。もし子供がいるなら、小さいときから「世界」という大きな視野を持たせることができます。
拠点を海外に移さなくても、インターネットが発達している昨今、日本にいながら海外取引だってできてしまう。
もちろん海外に目を向ければ、言葉や文化の違いなど大変なこともあります。それでも僕は、海外という選択肢を持つことで得られるものの方がずっと大きいと思っています。
僕自身、明確なビジョンも野心もないまま、ほとんど「勢い」でこの国にたどり着きました。今振り返って得たものと考えると、仕事だけではありません。家族との時間、人との出会い、経験、そして日本の外から物事を見る視点。これらはすべて、今の僕にとって大切な資産です。
この連載では、僕がニュージーランドで仕事をし、生活してきた中で経験したこと、失敗したこと、気づいたことなどをお伝えしていきます。
海外へ移住する必要も、いきなり起業する必要もありません。
でも、これからの仕事や人生を考えるとき、「海外という選択肢」を一つ加えてみる。
それだけで、今まで見えていなかった何かが見えてくるかもしれません。
次回から、そんな「世界で何かやってみる話」を、僕自身の経験を交えながらお話ししていきたいと思います。
海外で何かやってみたい、日本にいながら海外を相手に仕事をしてみたい、海外移住や起業を考えている。でも「自分の場合は何ができるんだろう?」と思っている方は、お気軽にご相談ください。テリー野澤:terry@nzdaisuki.com
テリー野澤
大学卒業後、新卒で日本のコンピュータメーカーに就職。金融系システムエンジニアとしてプログラマー、上流エンジニア、ブリッジSE、顧客サポート業務を歴任して退職。
その後、ニュージーランドに渡航して起業。ニュージーランドの日本人コミュニティ基盤をオンラインで構築して運営している。そのNZDAISUKI.COMは、ニュージーランド国内の日本人向け最大のコミュニティサイトとなっている。
LINE:https://lin.ee/9dVD1au
