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第11回 海外で起業しても、自由にはなれなかった(笑)

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第11回 海外で起業しても、自由にはなれなかった(笑)

「起業=自由」 「海外生活=自由」

そんなイメージを持っている方は多いと思います。正直に言うと、僕も少しはそう思っていました。

前回は、ニュージーランドで独立して日本の肩書きがゼロになったとき、「ものすごく自由を感じた」と書きました。今回はその続きです。その自由が、実際にはどんなものだったのか。一度、イメージを壊してみようと思います。

ベッドを机の部屋に移した

起業してしばらくした頃、僕はベッドを仕事机のある部屋に移しました。

理由は単純です。寝室まで移動する時間すら、もったいなかったからです(笑)。

朝6時頃に起きて、そのまま机に向かう。食事のときだけキッチンに行って、あとは深夜0時頃に寝るまで、ずっと机の前です。起きている間はずっと仕事していました。

土日もありません。そのうち、今日が平日なのか週末なのかの感覚も薄れていきました。

今思えば、ある意味で強迫観念だったのかもしれません。「仕事をしていないと、収入が止まる」。会社員のときには一度も考えたことのない恐怖でした。

毎月5000NZドルという現実

最初のうちは売上も低く、ビジネスに必要な経費はもちろん、家族の生活費も毎月自分で稼いでいかなければなりませんでした。

会社の経費と家族の生活費を合わせると、当時の僕には毎月5000NZドルほどのお金が必要でした。特に会社の経費が意外とかかりました。

会社員なら、毎月決まった日に給料が振り込まれます。でも経営者には、誰も給料を払ってくれません。稼げなければ、ゼロです。

この数字が、いつも頭のどこかにありました。

会社員時代、毎月当たり前のように振り込まれていた給料。そのありがたみを、僕はこのとき初めて知りました(笑)。そして、その給料の裏側で誰かがこのプレッシャーを背負っていたんだということも。

ゴルフ場から引き返した日

たまに友人からゴルフに誘われて、ゴルフ場に向かったこともあります。ところが途中で「サイトが見れない」という連絡が入りました。持ち歩いていたPCからは、セキュリティ上の理由でサーバーにアクセスできません。結局、そのまま自宅に引き返すことに。もちろんゴルフはキャンセルです(笑)。

また、別の日にはこんなこともありました。空港へ留学生を迎えに行ったのですが、何時間待っても到着出口に出てきません。当時は自分ひとりで仕事を回していたので、誰かに確認を頼むこともできませんでした。

結局、1日を空港で過ごしました(本人は日程を間違えて僕に伝えていて、到着は翌日でした笑)。

ひとりで経営するというのは、自分の代わりがいないということです。食事の誘いも、急な仕事が入れば断るしかありませんでした。

会社員なら、休みの日に電話が鳴っても「担当者は月曜日に対応します」で済んだかもしれません。でも、自分の会社では、その担当者が自分なんです。

会計士に引き継いで、後悔した(笑)

スタッフを雇うようになると、今度は雇用契約書や税金の計算など、会社員時代には考えなくてよかったことが一気に押し寄せてきました。

とても自分では対応しきれなくなり、ここで初めて会計士にお願いしました。

引き継いで言われたのが、

「スタッフの給与から天引きしていた所得税(PAYE)の計算が間違っています。IRDへの納付額に不足があるので、差額を納める必要があります。さらに追加の支払いも発生します」

「え!(泣)」

正直、引き継いだことを後悔しました(笑)。何かを誤魔化そうとしていたわけではなく、単純に計算方法にミスがあったのです。

でも今思えば、あの時点で問題を洗い出せてよかったんです。あのまま気づかずにいたら、もっと大きなペナルティを受けていたかもしれません。

顧客、スタッフ、給与、税金、契約、トラブル……。会社員なら上司が一人いるだけでしたが、経営者になったら、気を配る相手が何倍にも増えました。

あれ?会社員のときより、自由じゃないぞ(笑)。

それでも、楽しかった

ただ、不思議なことに、今振り返ると「楽しかった」と思えるんです。

なぜなら、やっぱり自分で選んだ道だからです。第4回で「辞めたら負け」と書きましたが、起業は誰かのせいにできません。全部、自分で責任をとる。そこは覚悟をもって臨みました。

誰かに決められた仕事ではなく、自分で決めた仕事。うまくいけば自分の手柄、失敗すれば自分のせい。その分かりやすさが、しんどさと同じくらい、面白かったんだと思います。

だから、苦しかったけど、楽しかった。

今は日本との取引もあるので、午前中はNZの仕事、午後は日本の仕事、と時間を分けてこなすようになりました。タイムマネジメントも少しは上手くなって、仕事が一段落すれば、友人を誘って夕食を楽しむこともできるようになりました。ベッドも、ちゃんと寝室に戻っています(笑)。

自由とは、責任をもって行動すること

25年以上、NZでビジネスを続けてきて思うのは、自由とは「好き勝手なことができる」ことではない、ということです。

もちろん、会社員が不自由で、起業すれば自由になれる、というわけではありません。どちらにも、それぞれの責任があります。第8回で「海外に住めば人生が変わるわけじゃない」と書きましたが、起業も同じで、肩書きや場所を変えただけで自由が手に入るわけではありませんでした。

ただ、自分で選んで、自分で責任をとる。そう覚悟を決めたときに初めて、苦しさも含めて「自分の人生だ」と思えるようになりました。

そんな僕だから、今なら声を大にして言いたい。

起業して自由になったのは、時間ではなく、自分の進む道を選べることでした。

もちろん、選んだ道には責任が伴います。でも、その責任も含めて「自分の人生だ」と思えること。それが、僕にとっての自由なのだと思います。

会社員でも、経営者でも、海外にいても、日本にいても、それは同じなのかもしれません。

海外で何かやってみたい、日本にいながら海外を相手に仕事をしてみたい、海外移住や起業を考えている。でも「自分の場合は何ができるんだろう?」「英語ができないのにいいのかな?」と思っている方は、お気軽にご相談ください。
テリー野澤:terry@nzdaisuki.com

テリー野澤
大学卒業後、新卒で日本のコンピュータメーカーに就職。金融系システムエンジニアとしてプログラマー、上流エンジニア、ブリッジSE、顧客サポート業務を歴任して退職。
その後、ニュージーランドに渡航して起業。ニュージーランドの日本人コミュニティ基盤をオンラインで構築して運営している。そのNZDAISUKI.COMは、ニュージーランド国内の日本人向け最大のコミュニティサイトとなっている。
LINE:https://lin.ee/9dVD1au