いよいよ、擬似遭難の実習の日が来ました。この日までに、 サバイバルの授業で生き残る上で大切なことも色々勉強したし、班ごとに遭難した日の夜の献立や調理方法を考えたりして、遭難する準備(?)は万全だという感じでした。
いざ遭難?!
実習の初日bush walkを始めた頃は、肉体的にも精神的にも、かなり余裕がありました。NZの森に魅了されている私は、訓練とはいえ、森を何時間も歩けることが嬉しかったし、NZ滞在がまだ2年目で、土地勘があまりなかった私なので、1人で遭難しろと言われたら不安と恐怖心ばかりあったと思いましたが、「みんなと一緒に遭難?!」ということだったので妙に心強かったです。
今まで見たこともなかった、大きなkauri snailにも遭遇することができて、とても感動しました。
kauri snailは、直径6〜8センチ、高さ4センチほどの大きな肉食のカタツムリです。
痛恨の判断ミス
いざ、班のみんなと一緒にわざと遭難して、夜の真っ暗な森で過ごすことになった時、私の班の人が各自自分のリュックから取り出したのは、青いビニールシートでした。「えっ!何それ?なぜみんな持っているの?」と聞いたら「tarpaulinだよ。装備リストにあったでしょ?」との返答でした。ここで、自分の判断が痛恨のミスであったことに気付きました。実はその夜小雨が降っていたので、どう体を濡らさずに保つかが大きな課題となっていたのです。 tarpaulinを持っている人は各自、 1人用のテントを作り体が極力濡れないようにすることができたのですが、テントを作る材料を持っていない私は、当然それができませんでした。でも、班のみんなは優しく、私のために一丸となって打開策を考えてくれました。
結局、私が持っていた1m x 1m のピクニックシートを1枚下に敷いて、班の1人が持っていたほぼ同サイズのピクニックシートを1枚貸してもらって屋根にすることで、私の体をその2枚でサンドイッチする形で乗り切ることになりました。周辺に落ちている tree fernの枯れ葉を敷き詰めると地面の湿気や泥から身を守ることは勉強済みだったので、ひたすらtree fernの枯れ葉を集め(その枯れ葉も結局濡れていたのですが)、その上にピクニックシートを1枚敷きました。屋根が高いと雨が凌げないので、極力低く設定することになり、試行錯誤の末最終的には、屋根が私の顔に当たる低さで地面から約30センチの高さになりました。屋根の四隅を持ち合わせの紐でいくつかのtree fernに括り付ける工夫も必要でした。
とりあえず、何とか一晩このテントで眠れそうだと思っていましたが、大きな誤算が2つありました。1つは、斜面しかない場所だったので、寝ていると体がどんどん滑ってテントの外に出てしまい雨に濡れてしまうことでした。足の濡れに氣付く度に、這い上がってテントに戻らなくてはなりませんでした。2つ目は、 私のテントは他のみんなのテントのように壁がなかったせいで、虫(多分weta)の侵入が凄く、顔の上を歩かれる度、 目が覚めて叫んでしまうことでした。 おかげで、ほとんど眠ることが出来ませんでした。
学んだ教訓
擬似遭難の実習を通して、サバイバルの方法をある程度身に付けられたのはもちろん、自然の雄大さや、一歩間違えたら怖さに変わること、仲間と助け合うことのありがたさを実感できて、とても有意義な体験になりました。しかし、この擬似遭難で得た私自身への個人的な教訓は「分からない言葉は、きちんと調べる」でした(笑)。
- 水谷公美 (みずたに さとみ)
- オークランド在住。
- 兵庫県淡路島出身。
- 1995年阪神・淡路大震災に被災後、NZ移住。
- 動物・植物など自然が大好き。
- 日本語を教える仕事の傍ら、趣味が高じて理学準修士号(環境マネージメント)を取得。