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第4回 Monarch Butterflyと環境

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皆さんは「monarch butterfly」という蝶々をご存知でしょうか。NZ最大の蝶々で、翅は濃いオレンジ色で、 翅の脈と縁が黒く、縁取りには白い斑点があります。 「王者の蝶」と言われるだけあって鮮やかな模様が印象的です。NZで蝶々と言えば、地元の人達がまず思い浮かべるのが、monarch butterflyだと思います。私は、様々な理由から、この蝶々が無事育って巣立ちする(?!)お手伝いを10年以上しています。日本語では「オオカバマダラ」と呼ばれているようですが、私は勝手に「モナーク」とニックネームを付けて呼びやすくしているので、この記事では「モナーク」と呼ばせて頂きます。

モナークと私達の食べ物との関係

photo-04-1モナークは、私達人間が食べ物を確保するために、重要な役割を果たしてくれています。花粉媒介者として知られていて、ミツバチなどの昆虫と同様、植物の花粉を運んで受粉を助けて、果実などを実らせる役割をしてくれているのです。花粉媒介者のおかげで、動植物による受粉の助けが必要な野菜や果物(きゅうり・なす・トマト・リンゴ・モモ・ブドウ・みかん・すいか等)を、私達人間が食べることができる訳です。

モナークの個体数の減少

モナークのメスは、約300〜500個の卵を産むと言われていますが、無事蝶々になって飛び立てるのは、 場所にもよりますが、そのうち平均約1〜2%だという研究結果が出ています。実はもう10年以上も前から、ミツバチ同様、世界的にモナークの個体数の大幅な減少が問題になっています。昨年末のNZの新聞記事でも、2018年は国内での個体数がさらに減少したとニュースになっていました。ほとんど見かけられなくなった場所もあり、たとえ見かけても、モナークのメスの中には卵を産む気配がないのもいて、過去50年にわたる観察記録の中では見られなかった現象だと報道がありました。花粉媒介者の数が減り続けると、私達人間が確保できる野菜や果物の数もどんどん減っていく可能性が高いので、この現象は私達にとっても決して無関心ではいられないのです。

環境評価指標 としてのモナーク

photo-04-2モナークの数の大幅な減少の原因は色々あるようですが、生息地の消失や劣化、幼虫が必要な食べ物であるswan plant(風船唐綿:ふうせんとうわた)の数の減少、それから環境中に散布・放出されている除草剤や殺虫剤による環境汚染も原因ではないかと言われています。モナークは、環境の変化にとても敏感で、人間が感知できない何らかの環境的危機が迫っている前兆を知らせてくれる「炭鉱のカナリア」的な存在だとも言われています。つまり、NZでモナークの個体数が減っている場所やその周辺には、 環境の悪化が示唆されていると考えられます。イッチする形で乗り切ることになりました。

 

私は十数年前に「炭鉱のカナリア」的な存在のモナークの個体数の劇的な減少を知って、迫り来る見えない危機感を感じてぞっとしました。そして、自然環境やモナークの個体数を改善するために、自分でも何かできないかと考えて「除草剤や殺虫剤、農薬を家庭で一切使わない」こと、そして「swan plantを庭で育てる」ことを実行することにして、 現在でも続けています。私一人が実行してみたところで、他の人達が除草剤や殺虫剤を使ったり、swan plantの数を増やすことに注意を向けていなければ、あまり良い変化は望めないのかもしれません。それでも実行すると決意したほど、モナークの個体数の大幅な減少のニュースは、私にはとてもショックなことだったのです。

 

水谷公美 (みずたに さとみ)
 
オークランド在住。
兵庫県淡路島出身。
1995年阪神・淡路大震災に被災後、NZ移住。
動物・植物など自然が大好き。
日本語を教える仕事の傍ら、趣味が高じて理学準修士号(環境マネージメント)を取得。