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第11回 日本国外でも注目されている日本の環境教育 (1)

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環境教育を勉強している時に、日本の環境教育関連のコンセプトや物がNZを含む日本国外でも注目されていることに気付いて、嬉しくなったことがあります。今回と次回の最終回で、2つの例をご紹介させて頂きたいと思います。

(1) 里地・里山・里海

「里地・里山」とは、原生的な自然と都市の中間にあって、雑木林や、農地、小川、ため池、草原、集落などが調和して存在しているところです。農林業など人の手が入って、自然資源が適度に消費されたり整備されてきたからこそ維持できてきた自然環境で、小動物や昆虫・鳥など多くの生き物にとっても大切な生息空間になっています。「里海」は、「里地・里山」の沿岸部バージョンで、漁業活動や藻場(海藻が茂っている場所)からの海産物を適度に消費しながら、沿岸部を手入れしたりすることで維持されてきた環境です。「里地・里山・里海」では、「資源を使いすぎない知恵」や「足るを知る精神」を持って、自然の再生力を超えない範囲で、資源の調達や再生が何世代にも渡って繰り返されてきています。人の手が入ることで、色々な動植物や海洋生物にとっても生息するのに恵まれた環境が整い、「里地・里山・里海」は、まさに持続可能な暮らしのお手本なのです。

世界が注目する里地・里山・里海のコンセプト

数年前から、日本国内でこのコンセプトを再認識・再活用しようとしているだけではなく、NZを含む日本国外からも「持続可能社会を実現できる可能性が高いモデル」だと注目されています。2010年には、生物多様性条約の国際会議に世界中から国連関連機関を含む51団体が出席して 「SATOYAMA INITIATIVE」が発足し、二次的自然環境における生物多様性の維持・管理と持続可能な資源利用の両立に取り組む国際的な土台を設立しました。

NZも、日本のコンセプトが、マオリ族の自然と人間の密接な繋がりを表すKi Uta, Ki Tai(山から海へ)の考え方と、マオリ族の世界観に基づいたKaitiakitanga(自然環境の管理者・保護者)という環境資源管理の考え方を融合させたのと似ていることから、日本のコンセプトをNZ国内で応用する可能性を模索しています。日本のコンセプトが、世界レベルでの持続可能社会実現にどう役立っていくのか興味深く、これからも注視していきたいと思います。

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(2) マイエンザ

NZの環境教育のことを調べていて、ふと「日本の学校ではどんな環境教育のアイデアがあるのだろう」と思い調べていると「 マイエンザ (Maienza)」なるものに遭遇しました。「Microorganism Active Impact Enzyme Action」の略で、ヨーグルトや納豆など100%食品由来の「環境浄化微生物資材」で、愛媛県在住の曽我部義明氏によって開発されました。 日本では環境教育の一環として、生徒自身が作って学校のプール掃除に役立てている学校があるとの事でした。「食品を環境浄化に役立てる」というコンセプトに興味が湧いたので、自分で色々調べて実際に作って使用してみたのですが、 「これは凄い!」と思えるものでした。

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多目的に使える優れ物

マイエンザは、元々、下水や河川の浄化を目的に開発されたそうですが、有用微生物の働きのおかげで、多岐にわたる効果があるようです。まず、マイエンザ の消臭効果に驚きました。私は猫を飼っているのですが、猫用トイレの臭いが消えました。生ゴミの分解の速度も早めるということで庭のコンポスターで試してみたら、今までの半分ぐらいの期間で生ゴミが土に変わりました。その上、毛穴の汚れも分解できるようで、化粧水として使ったら2週間ほどで肌がすべすべになりました!日本国外では、カンボジアやスリランカでも主に土壌改善のために製造・使用されていて、オーストラリアでも紹介されました。NZでは、私がNZでも応用できると感じて、Ecomatters Environmental Trustで 、数回ワークショップを開催する機会を頂きました(例:https://www.ecomatters.org.nz/mad-about-maienza/)。なぜ多目的に使えるのか、マイエンザの仕組みなどは、次回の最終回でお話させて頂きたいと思います。

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水谷公美 (みずたに さとみ)
 
オークランド在住。
兵庫県淡路島出身。
1995年阪神・淡路大震災に被災後、NZ移住。
動物・植物など自然が大好き。
日本語を教える仕事の傍ら、趣味が高じて理学準修士号(環境マネージメント)を取得。