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第5回 Monarch Butterfly飼育のススメ

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NZでモナークの個体数が劇的に減っていることに危機感を覚えた私は、その個体数を増やすため、幼虫の餌となる swan plant (風船唐綿: ふうせんとうわた)の苗をまず1本買って庭に植えました。後にこぼれ種でたくさんのswan plantが育っています。「モナークの個体数が増えたイコール環境改善」みたいな単純な環境問題ではないと思いますが、とにかく個体数が増えないことにはどうにもならないと感じています。

天敵からの護衛のお手伝い

photo-05-1NZでは、モナークは、基本的にswan plantの葉っぱと茎と花だけを食べて育ちます(大きい幼虫なら、かぼちゃも少し食べられる様です)。幼虫は天敵のカマキリやスズメバチ、鳥に狙われやすいので、私の庭では、レースのカーテンで swan plantを覆ってみました。しかし、カマキリの侵入が防げないので幼虫を天敵から守るため、すくすく育っている幼虫を庭で見つけたら、swan plantの枝を少し切って、室内の花瓶にさして保護しています。

モナークは、エンジニア?!

モナークの成長を間近で見ていて特に面白いと思うのは、幼虫が蛹に変わる少し前の過程が、私には知見あるエンジニアの仕事に見えることです。

発見1: 蛹が安定してぶら下がれる場所を探す

幼虫が幅約1cm、長さ約5cmに育つと、周辺にある枝や構造物を(時々壁や屋根も!)行ったり来たりして、 蛹が安定してぶら下がれる場所を探し始めます。不安定な場所は好まないようです。

発見2: 周囲に障害物がないか確認する

幼虫は体を思いっきり縦横斜めに反らして、近い将来、蝶々になった時に安心して翅を広げられるスペースがあるかチェックしているようです。まだ自ら経験したこともない蝶々の形になることを考慮して、蛹になる場所を決められるのは本当に凄い!といつも感動します。

発見3: 蛹がぶら下がると決めた場所を補強する

将来必要なスペースが確保できる場所を見つけたら、幼虫は口から出した糸でその場所を補強します。まずその場所の枝周り全体に糸を張り巡らせて土台を作っていきます。葉の根元や枝分かれしている場所を選んだ場合、その場所の特徴を活かして、きちんと複数の点を結ぶように糸を張り巡らせて補強して土台を作ります。

発見4: ぶら下がる時に必要なsilk pad・silk buttonの形を整える

幼虫は、作った土台に、逆さまにぶら下がる時に必要なsilk pad 、あるいはsilk buttonと呼ばれるものを、口から出した糸で紡いで作って付けます。2本の前足を使って少し先が尖った円柱形に上手に整えていきます。その姿がおにぎりを作っているような手つきで、とても可愛いのです。silk padのサイズは自分のお尻の穴の大きさに合うように計算済みのようです。

発見5: silk pad・silk buttonを(温めて?)固めて補強する

silk padを作り終えたら、自分の体の真ん中ぐらいにそれを持って行き、しばらくそのままにして固めます。完成したsilk padを触ると、きちんと固まって結構固いです。

発見6: お尻にsilk padを入れて逆さまにぶら下がる前に、必ず最後の糞(フン)をする

幼虫が逆さまにぶら下がる時は、お尻にsilk padを入れて栓をする形になります。体内に排泄物を入れたまま栓をしたくないのか、必ず最後の糞(フン)をしてから、お尻にsilk padを入れます。

仲間から教わった訳でもなく、マニュアルを読んだ訳でもないのに、エンジニアとしての知見があるかの様な蛹になる準備を進めていく姿は、本当に見る価値ありです!

Win-win Situation

photo-05-2もし、皆さんの家に庭やベランダがあって、$7ぐらいなら環境保全のために出費できると思えるなら、 是非Kings Plant Barn などの園芸店でswan plantを購入して、モナークを助けてあげて頂きたいと思います。蝶々にとっては、生息地と餌が増えて次の世代に繋げていける確率が増えるし、人間にとっては、 農作物の面で持続可能社会にしていける確率も増えると思います。おまけに、その蝶々の面白い生態を間近で見ることもできます。まさに、win-win situationです。蛹になるとミルキーグリーン色になり、上の方の縁を彩るように、金色の粒が並びます。蛹の下の方にも金色の粒がいくつか付きます。このミルキーグリーン色と金色の組み合わせが、とても綺麗なのです。楽しみながら、自然環境にも良いことができること、受け合いです。

 
水谷公美 (みずたに さとみ)
 
オークランド在住。
兵庫県淡路島出身。
1995年阪神・淡路大震災に被災後、NZ移住。
動物・植物など自然が大好き。
日本語を教える仕事の傍ら、趣味が高じて理学準修士号(環境マネージメント)を取得。