子どもにサッカーを習わせたいけれど、日本とニュージーランドではどんな違いがあるのか?海外在住の日本人にとって、子どものスポーツ環境はとても気になるところ。
今回は、日本のサッカー環境で育ってきた私が、ニュージーランドの育成年代におけるサッカートレーニングの特徴を、日本の育成環境と比較しながら紹介していきたいと思います。
ニュージーランドの育成年代のトレーニングの特徴
プレイヤーの意思を尊重
ニュージーランドでは「プレイヤー中心」の育成が基本とされています。トレーニングの場は、子どもたちが自分で考え、決断し、自由にプレーすることを重視してデザインされています。
もう少し具体的にいうと、指導者からの「〇〇しろ!」というような具体的な指示が少なく、選手(子供)が下した判断について後から褒めてあげることが多いです。
とにかくゲームが大好きニュージーランド
トレーニングの多くはゲーム形式が中心です。細かいドリルや退屈な技術練習が苦手なニュージーランドでは、ゲーム形式のメニューが多く、ポイントをつけるなどの工夫がなされています。
また、トレーニング時間は日本よりも短めで、**集中して楽しむ**ことが優先されます。1セッションは1時間程度、週1〜2回が標準的です。
積極的に発言するニュージーランドの子供たち
日本との比較で一番顕著なのは、ミーティング時における子供の発言数だと思います。日本では「コーチのいうことを聞く」事がミーティングの主流ですが、ニュージーランドでは子供達が積極的に意見をかわし議論しています。
コーチは細かく指示を出すというよりも、問いかけを通して子どもの思考を引き出すスタイルが一般的です。例えば、「今のプレーはなぜうまくいったと思う?」といった質問が飛び交う場面もよく見られます。
日本の育成年代の特徴と比較
とにかく反復的に行うドリル練習
一方で日本の育成年代では、技術習得のための反復的なトレーニングが一般的です。
パス練習やシュート練習など、細かな技術を反復する練習が多く、また練習時間も2〜3時間と比較的長いのが特徴です。
厳しく叱る文化
コーチは厳しく、細かい技術指導を行うことが多く、子どもたちは「教えられる」ことに慣れています。また、日本独特の文化として、「挨拶や礼儀」、「団体行動」がトレーニング内でも重視されます。
このようなスタイルは、規律や技術力の向上には効果的ですが、自由な発想やクリエイティビティの面では抑制されがちという見方もあります。
ニュージーランド育成環境のメリット・デメリット
ニュージーランドのアプローチは、「個性や創造性を育む」のに非常に適していると思います。自分で判断し、仲間とコミュニケーションを取りながらプレーすることで、サッカーだけでなく、自己表現や協調性も伸ばせるのが魅力です。
一方で、競争が比較的緩やかであるため、「勝ちたい」「上手くなりたい」と強く思っている子どもにとっては、やや物足りなさを感じることもあるかもしれません。また、技術的な基礎練習が少ないため、日本式の補完が必要な場面もあるでしょう。
日本の技術練習の弊害について
ここでは少し専門的な個人的意見を述べさせてもらいます。
たしかにニュージーランドの育成年代を見ていると、日本の子供達と比較して技術が低かったり、ボールの扱いがぎこちないことが見られます。
だからといって日本式の技術ドリル練習が必要なのかというと、そうでもないというのが私の見解です。
たしかに日本の子供には、リフティング(ジャグリング)がとても上手な子が多かったり、ドリブルで派手なスキルを見せる選手が多いです。
しかし、彼らが試合でそのスキルを発揮できるかというとそうでもない印象が強いです。
一方で、ニュージーランドの子供は魅せるためのスキルは持っていなくても、試合で活躍するための実用的なスキルを持ち合わせている人が多いです。
したがって、一概にニュージーランドの練習方法が正しいとか、日本の技術練習が必要とは言えないのがサッカーの奥深いところだと思います。
日本人家庭が意識したいこと
ニュージーランドでサッカーを始める際は、とにかく「楽しむこと」が最優先だという点を理解することが大切です。日本のように、技術や勝敗にこだわりすぎると、現地の文化とギャップが生まれ、子どもがプレッシャーを感じてしまうかもしれません。
もし「もっと上達させたい」という場合は、個別トレーニングやテクニカルスクール(技術に特化したサッカースクール)を併用するのも一つの手です。
おわりに
サッカー育成において、ニュージーランドと日本は大きく異なるアプローチを取っています。どちらが良い悪いではなく、「どちらも子どもの成長にとって大切な要素」を持っています。
子どもがサッカーを通じてどんなことを学んでいくのか。国によって学べることは違うかもしれませんが、そうした違いを学び取れることもサッカーの魅力の一つなのかもしれません。
最後に私自身が運営しているサッカースクールでは、こうした「違い」を伝えていくことを目的としています。もし興味がございましたら、ご覧ください。
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NZで現役サッカー選手として活動する日本育ちの日本人。他にもオーストラリアやスペインでもプレー。
現在は選手としてプレーしながらも、自身の経験から世界のサッカーを伝えるべく、サッカースクールを開設。
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