今回は、僕がニュージーランドに来て一番驚いたと言っても過言ではない「アフターマッチ」の文化について解説していきたいと思います。
日本でサッカーをして育ってきた僕からすると、新鮮を通り越してカルチャーショックに近いものでしたが、今ではとても大事な文化として気に入っています。ニュージーランドならではの「アフターマッチ」という文化を紹介していければと思います。
はじめに — 試合後の意外な光景
日本でサッカーの試合といえば、試合終了のホイッスルが鳴った瞬間に、握手や挨拶を交わし、あとは各チームがそれぞれ帰路につく光景が一般的ではないでしょうか。
ですが、ニュージーランドのサッカーでは、試合後にもうひとつの「イベント」が待っています。
それが、「アフターマッチ」と呼ばれる文化です。
アフターマッチとは何か?
アフターマッチとは、試合後にホームチームが対戦相手チーム、審判団、スタッフを招いて、軽食やドリンクを囲みながら時間を過ごす習慣のことです。
ニュージーランドのクラブはホームグラウンドとクラブハウスを併設しているクラブが多く、選手やスタッフは試合後にシャワーを浴びてすぐに、クラブハウスに集まり、相手チームとの団欒を楽しみます。
何が行われているのか?
簡単なサンドイッチやホットドッグ、スナック類
ホームチームのクラブは軽い食事を用意します。クラブハウスや食事の準備が難しいクラブは、パブに移動してアフターマッチを行うこともあります。
クラブハウスやバーでのビール、ジュース
試合後であろうと、ニュージーランドのサッカー選手はビールを飲みます。日本で厳しく育ってきた私からすると、この光景にかなり驚かされました。
しかし、平日はフルタイムで働き週末に試合を行ったニュージーランドの選手からすると、ここでの一杯が至福なのかもしれません(そのように見えます)。
コーチ、選手同士がカジュアルに会話を楽しむ
アフターマッチでは試合で激しく競い合った直後でも、「試合が終わればフレンドリー」という雰囲気が会場に広がります。
試合中に散々喧嘩していた相手と、試合後に笑い合って楽しそうに話ている姿を見ると、ニュージーランドの選手は人間関係の構築やコミュニケーションがとても上手で、寛容であるなと感心します。
「ONとOFFの切り替え」をはっきりしており、試合での出来事をプライベートに持ち越さないすっきりとした人間性は、さすがだなと思います。
日本にはない文化、その背景
とはいえ、日本のサッカーでは、対戦相手とは「試合の場」だけで関わるのが普通です。
どちらかといえば、対戦相手は“ライバル”として距離を置くことが多いのではないでしょうか。
日本でサッカーをしてきた私にとって、試合後にすぐにお酒を飲むことや、直前まで喧嘩のように戦っていた相手選手と会話を楽しむということは、かなりのカルチャーショックでした。
一方でニュージーランドでは、その逆。
「サッカーは競技であって、敵同士ではない」という考え方が根付いており、特にアマチュアや地域クラブでは、コミュニティとしてのつながりを重視します。
この背景には、ニュージーランドの社会自体が「フラットでフレンドリー」な文化を持っていることが関係しているかと思います。
クラブ間の距離も物理的・人間的に近いため、顔見知りになる機会が多く、試合の勝敗に関係なく、スポーツを通じた交流を楽しむという価値観が根付いているのです。
アフターマッチで得られるもの
実際に参加してみると、アフターマッチは単なる食事会ではありません。
- 対戦相手の選手と話すことで、異なる戦術やスタイルを知るきっかけになる
- コーチ同士が情報交換し、チーム運営や練習法のアイデアが得られる
- 若い選手にとっては、先輩や他クラブの選手とつながるチャンス
実際に私もアフターマッチで相手選手と会話することで新たに知れたことや、人間関係の輪を広げることができた事がありました。
日本で導入したら?
もし日本のサッカーでも、アフターマッチのような文化がもっと広がったらどうでしょう?
Jリーグのようなプロの舞台では難しいとは思いますが、社会人リーグなどのアマチュア、そして学生年代では人間関係の幅を広げることができますし、閉鎖的な体育会の環境にはとてもいい機会のように思えます。
もちろん、日本には日本ならではの良さもありますが、ニュージーランドの「試合後は仲間」という考え方は、多様な人間関係を築く上で大いに参考になるのではないでしょうか。
まとめ
・ニュージーランドのサッカーでは、試合後に敵味方関係なく集まり、食事を楽しむ「アフターマッチ文化」がある。
この文化は、「サッカーを超えた人と人のつながりを大切にする」ニュージーランド社会の一端を映し出しています。
サッカーは勝ち負けを競うだけでなく、人と人とをつなげるもの。
もしかするとアマチュアならではの文化かもしれませんが、ローカルコミュニティを大切にするニュージーランドならではの文化なのかもしれません。
はじめは慣れませんでしたが、今ではとても美しいと思えているニュージーランドサッカーのアフターマッチという文化についての紹介でした。
NZで現役サッカー選手として活動する日本育ちの日本人。他にもオーストラリアやスペインでもプレー。
現在は選手としてプレーしながらも、自身の経験から世界のサッカーを伝えるべく、サッカースクールを開設。
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