私のコラムも、いよいよ最終回となりました。最終回は、AICの校長であるキャロリン・ソロモン氏のインタビューで締めくくり、とさせていただきます。キャロリン氏は、ニュージーランド出身で、教職員一筋ウン十年の大ベテランです。NZ国内での校長職キャリアも豊富ですが、タイ、シンガポール、日本等でも校長としての勤務暦があります。長年の教育界への貢献が評価され、英国・エリザベス女王から「New Zealand Order of Merit for services to education」の表彰を受けました。そんな偉い校長先生に、教育について語っていただきました。
- 質問
- どうして教員を目指したのですか?
- キャロリン
- 子供の夢を実現するお手伝いがしたかったのです。子供にとって教員の影響はとても大きなものです。やりがいのある仕事だと予想していましたし、実際そうでした。教員になる前から、いつかは校長になりたいと思ってしました。
- 質問
- その希望通りに38歳の若さでタウランガ女子高校で校長となられましたね。その後、海外でのインターナショナルスクールの校長職に転職されます。その理由は?
- キャロリン
- NZは私には小さすぎた(笑)。NZでの仕事に達成感があったのも事実です。NZを離れる時に生徒には「世界は、向こうからは近づいてくれません。あなた自身が世界に出て行くことが必要です。」と言いました。
- 質問
- 日本での校長職も経験されています。日本とNZの教育の違いを一言で言うと?
- キャロリン
- NZの教育は生徒が主役で、教師はあくまで補助的な立場です。オーケストラの指揮者に例えられるでしょうか?。対して日本は教師が主役になっているように、私には映ります。生徒がもっと発言をする必要がありますね。日本はもっと世界から尊敬されて然るべき国だと思います。そのためには、もっと世界に対して窓を開ける必要があります。その面で教育はとても大切です。
- 質問
- これからの教育に必要なことは何ですか?
- キャロリン
- この何十年かで生徒を取り巻く環境は随分変わりました。例えばテクノロジーにしてもそうです。直接会って会話をするよりも、テキスト等でやりとりすることが多いですよね。でも、いくら技術が進歩したからと言っても、人間の繋がりはとても大事です。例えば国家間の争いは、テキストでは解決しませんよね?。最終的には直接、対話をすることが問題の解決に繋がると私は信じています。そのような対話が出来る人間を育てるのが、教育の重要な仕事の一つだと思います。
- (インタビュー終り)
もう10年も一緒に仕事をしているのですが、こうして彼女の教育哲学を聞くことが出来たことは、私にとっても良い勉強になりました。彼女がOrder of Meritの受賞にあわせて話した文章が印象に残っています。「I have never been to a country where people don’t discuss education」、日本語に訳すと「教育について話をしない国なんてない」ということになるのでしょうか?。国が繁栄するためには、若者の力が必要です。その若者を育てる教育はとても大事ですね。私は直接教壇に立っている訳ではありませんが、そのような大事な仕事、世界を創っている仕事に携わっていることに感謝すると共に、今後も努力していかなければいけないと考えています。
最後になりましたが、長い間拙文にお付き合いをいただき、ありがとうございました。
AICアクティング・エクゼクティブ・ディレクター 中村敬志
1970年、島根県生まれ。 13年間の地方銀行勤務を経て、広島県に本部を置く教育関連企業に転職。 2006年より、Auckland International College(AIC)に勤務。