ニュージーランドの建築業界は、上下関係もなくフラットな人間関係。建築屋に対するイメージや、転職・キャリアチェンジについて、日本と違うところを３つ紹介します。

上司やクライアントとも上下なくフラットな関係

日本の建築業界はタテ社会。親方や兄弟子に敬語を使うのは言わずもがな、年齢は関係なく先に業界に入った方が先輩です。

ニュージーランドではみなさんご想像の通り、上司との関係はとてもフラットです。12歳上のボスの名前も呼び捨てにしているし、丁寧な英語を使って話すということもしません。

日本で大工をしていた時には「見て学べ」というのが親方の方針でしたが、こちらでは分からないことは上司や先輩にどんどん聞いてOK。チームでたくさん話をしながら働くスタイルなので、分からないことはみんな教えてくれます。

特に長年お世話になった会社は、みんなとても親切で寛容な人たちばかりだったので、ニュージーランドで働いていてよかったなと何度も感じました。

そして関係がフラットなのは、クライアントに対しても同じです。日本なら「おはようございます！！うっす！」と帽子を取ってあいさつしますが、ニュージーランドなら、帽子はかぶったまま、サングラスもかけたまま、腕を組みながら片手にはコーヒー、車に寄りかかりながら施主と話すのが当たり前です。

上棟式のようなセレモニーはこちらにはありませんが、注文住宅の場合は屋根があがった時にルーフシャウト（Roof shout）といってクラインアントがビールやご飯、BBQを用意してくれて一緒にワイワイ食べることもあります。

建築屋に対するイメージの違い

日本に１０年以上もう住んでいないので、現在は実際どうか分かりませんが、俺が日本で大工をしていた頃の建築業界は「汚い、きつい、危険」の「３K」とも言われていました。

ですが最近のインスタグラムを見ていると、日本も今では昔よりも環境が整ってきて、おしゃれな大工さんや女性の大工さんも増えてきている印象です。

ニュージーランドやオーストラリアでは、建築屋（Tradie、トレーディと呼ばれる）は、「技術職でお金を稼いでいて、鍛えたゴツい体でハイラックスのトラックに乗っている人たち」というイメージを持たれています。

こちらでもかつては安全ルールなどゆるかったとは思いますが、今ではHealth and Safetyと言う職場での安全・リスク管理についてのルールが厳しく決められており、現場でもしっかりと守られています。

そういった働く環境の整備もあってか、女性の建築屋さんも少しずつ増えています。インスタグラマーの大工や電気工事士もいますし、大工の見習い修行に来た10代の女性もいました。

転職はあたりまえ、４０代からのキャリアチェンジも

こちらでは転職が当たり前の文化です。俺も、大工になってから２度ほど工務店を変えましたし、他の建築屋たちも同じです。

また建築業界に限らずですが、ニュージーランドではキャリアチェンジをするのに年齢は関係ありません。

俺がニュージーランドで大工の見習いを始めたのも30歳を超えてからですし、同僚は長い間ホテルで働いていて、40代になってから大工の修行を始めています。

肉体労働も多いので、若くて体力があればもちろんいいですが、キャリアを変える時に年齢が壁になることはありません。むしろ、30代以降の方がある程度の社会経験を積んでいたり、家族もいたりと、働く上での常識があるので重宝されることが多いです。

俺のまわりの話でいうと、若手の大工たちは二日酔いで遅刻したり休んだり、週末はマウンテンバイクやスノーボードなどアウトドアを満喫して怪我ばかりしている人も。「ちゃんと仕事に来る」という当たり前のことがなかなかできない人も多いので、年を重ねた連中の方が、仕事に対する姿勢は信頼されている印象です。

やる気さえあれば間口は誰にでも開かれているので、「もう自分は何歳だから今さら。。」という台詞を聞くことがないのは、この国で働いていて良かったなと感じるところです。

次回のコラムに続きます。

コラムに掲載している内容は、すべて私、個人の経験にもとづく情報提供のみです。移民法も私が経験した当時とコラム執筆時点では大きく変わっています。私は移住をアドバイスする資格をもっていないので相談にも応じませんのでご了承ください。あくまで私の経験談です。