ニュージーランドと日本の建築現場では、どのような違いがあるのでしょうか?今回の記事では、仕事のやり方の違い、求められる技術の違いについて紹介していきます。
ニュージーランドと日本の大工仕事のやり方の違いについて、いくつか紹介していきます。たまたま高級注文住宅ばかりを請け負う工務店で働いたので、建売住宅の場合は違うこともあるかもしれませんが、個人の経験から感じたことを紹介していきます。
分業制の日本とは違い、大工が幅広い仕事をするニュージーランド
日本でも大工さんは何でもできますが、基本的にはそれぞれの作業に専門分野の職人さんがいて、かなり細かい分業制で家を建てます。
一方、ニュージーランドでは日本ほど細かい分業制ではなく、大工が幅広くやることが多いです。もちろんこれは仕事によって違い、建売の場合はそれぞれの専門業者が入ると思いますが、注文住宅などは大工がほぼすべての作業をすることもありえます。
以下、いくつか思いつくものを比べてみました。
- 【型枠】
- 日本には型枠専門の大工さんがいますが、基本的にニュージーランドでは大工が施工します。
- 【軽天】
- Gib fixer(石膏ボード貼り屋)が来る現場もあれば、大工がやってしまうこともよくあります。
- 【鉄筋工】
- Steelly, Steel fixer 大型商業施設やビル建設の現場のみ。鉄筋工が一軒家に入ることはほぼなく、大工がやります。
- 【コンクリート】
- コンクリート屋さんもニュージーランドにいますが、大工が行うことも一般的です。
- 【屋根】
- Roofing ニュージーランドでは大工が屋根の下地をやり、仕上げは屋根屋が納めることが多いです。
- 【外壁】
- ニュージーランドでは材料にもよりますが、大工がやることが結構多いです。
- 【クロス】
- ペイントが主流なので、そもそも壁紙を貼ることがほぼありません。昔は壁紙を使う家もあったので、壁紙はオールドスクールと呼ばれています。お金持ちのクライアントから壁紙のリクエストを何度かされた時には、現場でずっと一緒に働いているペンキ屋さんが壁紙を貼ってくれました。
- 【建具屋】
- Joiner(ジョイナー)が家具、棚などを現場に運んできて施工することが一般的ですが、大工が納めることもあります。
ニュージーランドで有資格の大工(Qualified builder)になるためには、基本的に上の表にある全部の作業ができる必要があります。見習いのプログラムでは、英語で幅広い建築技術を勉強するのになかなかの労力を要しましたが、結果的になんでもできるようになったのでよかったです。
以前のコラムでも書いた、スキー場のビル建設の現場では大工もコンクリートをやりましたし、高級注文住宅の現場では、造成から型枠、配筋、コンクリート、フレーミング(建方)、内装、外壁、屋根、ウッドデッキを一通りすべて大工たちがやっています。
先ほども書いたように、ニュージーランドでも建売のホームメイカー(Home builders)は分業制を採用している場合がほとんどですが、日本では建売でも注文住宅でも大工がすべてをやることはないので、かなり違うところです。
求められる技術・正確さの違い
ニュージーランドで大工を始めたばかりの頃、まず驚いたのは求められる正確さの違いです。
コンマ何ミリという正確さで仕事をする日本に対して、英語圏の建築現場では2〜3ミリほどズレることもあります。もちろんそんなにズレない方がいいですし、精密さは仕事内容や会社によって異なりますが、許容範囲が違います。
一流の大工ではなく、几帳面なタイプでもない俺ですら、あまりにも日本とは違う正確さの違いに「え、これで本当にいいの?やばくない?」と、驚きました。(インスペクションという家の検査はちゃんと通っています。)
もし日本で経験を積んだ大工さんが、海外で建築に挑戦する場合、こういった正確さの違いに慣れるまではつまずくところかもしれません。
また、製材技術もまったく違います。日本人の「きちんとまっすぐなものを作りたい」という気質もあるかもしれませんが、日本の製材技術は非常に高いので、はじめからある程度揃ったまっすぐな美しい材料で始められます。
日本には、木の性質を生かして家を建てる在来工法があるので、大工さんは木に対する扱いが細かいですよね。木裏、木表や木目、反り、節など、木の性質をしっかり見極めて、木を使い分けています。
一方、ニュージーランドではツーバイフォー工法のため、そこまでの精度は求められていません。ガタガタな木が届いたり、ギュイーンと曲がったりしていることもあります。
届いた木の反り方を見る大工さんはもちろんいますが、こちらの家は日本のように木の柱が見えるということもないので、日本ほど細かく木を見る必要はないのです。
日本とはもちろん木の種類も違いますが、若くてスカスカな木が届くこともあります。ただ、用途に合わせて木のグレードもちゃんと決められており、テストにも通ってスタンプが押してあるので適当な木ではないですし、ツーバイフォー工法には差し支えありません。
基準さえ満たしていれば問題ないというニュージーランドと、完璧主義でどこまでも精度を高めていく日本とのカルチャーの違いをこういったところでも感じます。
次回のコラムに続きます。
コラムに掲載している内容は、すべて私、個人の経験にもとづく情報提供のみです。移民法も私が経験した当時とコラム執筆時点では大きく変わっています。私は移住をアドバイスする資格をもっていないので相談にも応じませんのでご了承ください。あくまで私の経験談です。
高卒から大工としてニュージーランド永住権を取得した関西人。オーストラリアでも建築現場を経験。ニュージーランドでは見習いから始め、大工の国家資格を取得。高級注文住宅を建てている。SNSやYouTubeで発信中
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