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第10回 ニュージーランドで働く大工が日本人だからこそ苦労したこと

『【海外で大工】高卒でニュージーランド移住したタケが語る現地事情』の記事一覧へ

んびりとした働き方や職場のフラットな人間関係が魅力のニュージーランドですが、日本人ならではの常識を持っていたことで、適応するまでに苦労したり戸惑ったエピソードを紹介します。

 

同僚や顧客との人間関係がフレンドリーすぎて戸惑う

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前回までのコラムで、海外の職場ならではのフラットな人間関係について紹介しました。タテ社会の日本とは違い、こちらでは上司や顧客ともフラットでフレンドリーに話をします。

サングラスをかけて車に寄りかかりながら施主と会話をするのは当たり前。見習いの10代の若者でさえも、50代の施主に”Hey, how’s it going? (ヘイ!調子どう?)” とカジュアルに話をしています。

「上司や顧客と、上下関係なくフラットに話せるのは楽でしょ?」と思う方もいるかもしれません。たしかにそうなんですが、これは慣れるまでかなり戸惑ったポイントでした。

日本人は上下関係があることに慣れていますが、こちらでは12歳上のボスを名前で呼び捨てたり、「ヘイ!Yo!」と呼んだりします。今では慣れたのでフラットな関係でいられるのは楽ですが、初めは上司に対してどこまでフレンドリーにしていいのか分からず困りました。

10代の新入りからも「タケ」と呼び捨てにされるのはもちろんのこと、”Heeey, what’s up bro?(うえーい、ブラザー調子どう?)”と、初めて話しかけられた時は「 えっ、何なに!?俺けっこう年上やけど!??」と、びっくりして少しイラっとしてしまったことも正直ありました。

「いやいやでも、ここは日本ちゃうからな。」と自分に言い聞かせ、戸惑いながらもニュージーランドのスタイルに適応していきました。今ではもうこのカジュアルな人間関係が楽すぎて、タテ社会に戻れる気がしません。

どちらかというと上下関係にはゆるい俺でもこのような葛藤があったので、真面目な人にとっては上下関係が無いというのは少し苦しむポイントになるかもしれません。

日本とニュージーランドでは仕事のペースが違いすぎる

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もう一つ苦労したことは、日本人とニュージーランドでの仕事に対する感覚やスピードが違いすぎたことです。

大工さんや職人さんに限らず、日本で働いている人は「正確で、スピードも早い」ことが仕事をする上でとても重要視されていますよね。これはニュージーランドでももちろん同じく大切なことですが、日本人の仕事に対する正確さや完璧主義は、おそらく世界でもトップレベルではないでしょうか。

「正確な技術をものすごいスピードで提供できる日本人なら、さぞ現地で重宝されるのでは?」と思ってしまいますが、一概にそうとも言えないのが実際のところです。

ニュージーランドにはワークライフバランスをとても大切にするカルチャーがあり、また仕事の失敗に対しても、上司や同僚の反応は日本よりも寛容です。(もちろん失敗はダメですが)

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施工の期間も、店舗などの商業施設はスピードを求められますが、個人の住宅などはおおらかな雰囲気の中、チームで仕事をするのが基本。日本人のようにバリバリとした早すぎるスピードで仕事を片付ける建築屋はいません。

そもそもの仕事スピードに対する常識が違いすぎるため、どんなに手を抜いたとしても、まわりのみんなのペースを遅く感じてしまい、自分ばかり仕事をやりすぎて損をしている気にさえなるほど。

仕事へのやる気を「テキパキと猛スピードで片付ける仕事ぶり」で示そうもんなら、チームのメンバーから「Calm down, bro. 落ち着けブラザー。俺たちが仕事をやっていないように見えてしまうから、そんなペースで働かないでくれ。」と言われてしまいます。他の建築現場で働いていた日本人の友人も、日本の感覚でバリバリ働いて効率よく仕事を終わらせると、褒められるどころか「ヘイ!仕事やりすぎだ。お前大丈夫か?」と言われたそうです。

「のんびり働ける」といえば聞こえはいいですが、ニュージーランドスタイルの仕事のペースに適応するまでは、もどかしく感じる期間がありました。

日本人は完璧主義な働き方ができるからこそ、失敗も少ないし仕事の精度が高いけど、ある意味では真面目すぎるとも言えるかもしれませんね。

次回のコラムに続きます。

コラムに掲載している内容は、すべて私、個人の経験にもとづく情報提供のみです。移民法も私が経験した当時とコラム執筆時点では大きく変わっています。私は移住をアドバイスする資格をもっていないので相談にも応じませんのでご了承ください。あくまで私の経験談です。

 

高卒から大工としてニュージーランド永住権を取得した関西人。オーストラリアでも建築現場を経験。ニュージーランドでは見習いから始め、大工の国家資格を取得。高級注文住宅を建てている。SNSやYouTubeで発信中
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