海外(NZ)での就職活動や海外マーケットで成功するためのTipsなどをご紹介してたこのコラムも、今回で最後となります。 最終回はこれまでのまとめとして、「なぜ日本人は海外就職で苦労するのか?」その理由について考えてみたいと思います。
このコラムでも何度も登場した言葉に「ジョブタイトル」や「ジョブディスクリプション」などがありますが、初めて海外で就職活動をされる方にとっては、聞き慣れない言葉も多くあったかと思います。
日本でこれらの言葉をあまり聞かない理由として、実は日本の雇用市場が世界の中でも非常に独特である、ということをご存知でしょうか?
【メンバーシップ型 v.s. ジョブ型】
最近は少しずつ変わりつつありますが、日本には古くから「終身雇用」という考え方があります。
日本の雇用制度は、「企業に新卒として入社したら、そのまま定年退職まで勤続をする」という終身雇用の文化に基づいて進化してきました。
企業は新卒の学生を一斉に採用し、新入社員として教育、トレーニングし、その後は同じ組織の中で色々な部署に異動しながら昇進をしていきます。入社時は営業部、その後マーケティング部に配属され、人事部へ異動、などというのは珍しいことではありません。
日本で「お仕事は?」と聞かれると「〇〇会社に勤めています」と答える人が多いのもそのためです。会社員は、一つの組織の中で豊富な知識と人脈を構築し、その組織のことを幅広くジェネラルに知る「組織のプロ」となります。
これは「メンバーシップ型雇用」と呼ばれ、世界でもめずらしい雇用の文化です。
対して海外での雇用は「ジョブ型」であることがほとんどです。
ジョブ型雇用では、大学や専門学校で特定のスキルを習得し、その専門性を活かして雇用される形式です。例えば、ITエンジニアとしてプログラミングスキルやデータ解析の経験を活かし、スペシャリストとして、一つの会社から次の会社に転職をしながらキャリアアップをしていく、というスタイルです。
【率先力を求める海外の企業】
終身雇用とまではいかなくても、日本の企業はある程度の長期雇用を前提に、新入社員を専門スキルよりも将来性や成長の可能性を重視して採用する傾向があります。
一方、海外では「雇用=スキルと対価の交換」という考え方が一般的で、新入社員であっても即戦力としての役割が求められることが多いです。日本のように新卒を一斉に雇用してトレーニングするというようなシステムもあまりないので、大学を卒業したばかりの新卒者は、最初の就職活動にとても苦労します。CV(履歴書)に仕事の経験がないと採用のチャンスが減ってしまうため、学生は卒業するまでにインターンやパートタイムの仕事などを探して経験を積みます。
【日本人のハードル】
日本人が初めて海外で就職活動をする際、言語、ビザなどの壁があるのはもちろんですが、ここで述べたような雇用文化の違いもハードルとなりえます。海外の企業は率先力を求め、その国でのこれまでの経験を期待しています。初めて就職活動をする外国人にとっては、その国での経験がないことは少なからずハンディとなります。そのうえ、ジョブ型の文化の知識がないままにCVやカバーレターを作成すると、企業が求める専門性やスキルをきちんとCVで伝えることができずに、インタビューに呼ばれるチャンスも減ってしまいます。
私自身、実際にコンサルティングをしていて最もよく見かける間違いが、「日本語の履歴書を英語に訳せば大丈夫」という誤った思い込みです。そういうクライアントさんには、「日本と海外の就職活動は、全くの別物と考えた方がいい」とお伝えしています。 海外での就職活動は、雇用マーケットや就活の方法が日本とはまったく異なるため、その点をしっかり理解して取り組むことが賢明です。
これまでのコラムが、海外での就職活動に少しでもお役に立てれば幸いです。
Sally OTAKE(公認キャリアコーチ)
NZの上場企業などにて人材管理やマネジメントを10年以上経験。現在は海外キャリアコンサルタントとして、仕事の探し方から履歴書、面接のアドバイスまで実践的にサポート。お客様の満足度100%を保っている。
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