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第54回  ガンになったら来てください 

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今日は身近な人に起きた話をします。先日、知人のキーウィの女性に、「子宮に腫瘍ができて来週手術する」と言われました。彼女は見るからに健康そうで、ティーンエイジャーの子供が二人もいるとは思えないほど若々しく活動的で、スラリとしています。場所が場所だけに詳しく聞けずにいると、彼女の方から状況を説明してくれました。
 
 去年のクリスマス前から下腹部に痛みを感じ始めたものの、子供が夏休みには入ったりクリスマスで親戚が大勢集まったりで、病院に行くどころではなかったそうです。年が明け、生理を迎えたところ、いつもと違う異様なものを感じ、すぐに医者に行ったそうです。
 
 医者によれば、腫瘍ができていてどこかの管を圧迫しているということでした。そして、
「今、この腫瘍はこの段階にあるけれど、放っておくとこうなり、その後はこうなり
、、、、」
と、医者は線を引きながら、病気の進行状況を説明してくれたそうです。
 
「そして、ここからはガンになります。」
と、延びた線の先に印を付けてはっきりと言ったのです。彼女の年齢であればそこまで行くのにたいした時間がかからないことは誰でもわかるかと思います。しかし、彼女のショックはこれで終わりませんでした。
 
 無料の公共医療を頼りに手術をしようとしたら、なんと最低でも6ヶ月待ちだと言われたそうです。いつガンになるかわからない爆弾をお腹に抱えて半年も待つことが、精神的・肉体的にどれほどの苦痛かは、女性でなくてもおわかりでしょう。診察した医師からは、
「ま、今の制度ではガンになったらまた来てください、ということなんです。ガンであれば待ち時間の優先順位が上がるので、もう少し早く手術ができます。」
と言われたそうです。
 
 彼女はパートナーと相談した結果、高くはつくものの私立病院で一刻も早く手術をすることを決めました。あいにく医療保険に入っていなかったため、何万ドルかになる手術費は全額自己負担になってしまいますが、彼女もパートナーも「命には代えられない。とにかくガンになる前に」と、決断したそうです。
 
 別の友人経由で手術が成功したと聞きました。今は自宅療養中で、見舞いに行ってきた友人によれば、疲れているようだけれど元気だったそうで、ほっとしました。ここでも何度か取り上げてきた国の無料医療の思わぬ落とし穴は、頻繁に報道されているように改善どころか悪化の一途です。
 
 仕事柄、いろいろな病例を聞きますが、予防的な手術(知人のケースもこれに入ります)は実施の優先順位が低く、本来予防したかった病気が発病すると順位が上がります。予防の段階であれば小さな手術で済んでいた、という話もたくさんあります。厳しいようですが、無料と引き換えに多くのリスクを受け入れざるをえないのが、今のニュージーランドの公共医療なのです。
 

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高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)

アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。

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