タイトルの「お金があったら保険はいりません」は、あるセミナーのゲストスピーカーが言ったもので、出席者の間からどっと笑いが起きました。保険を作って引き受けている保険会社にせよ、それを販売するファイナンシャルアドバイザーにせよ、業界のプロ中のプロから(その人は大きな保険ブローカーのトップでした)「保険はいりません」と言われたら、苦笑いになってしまいます。
ただ、「お金があったら」というところがミソです。新車のポルシェに追突してしまっても、家が火事で全焼してしまっても、狭心症が発覚して心臓のバイパス手術が必要になっても、現金でばんばん問題なく払えるなら、確かに保険なんていりません。
「しかし、ほんとうにお金がある人はみんな保険に入っています」と、スピーカーは話を続けました。彼の会社はNZを代表するような企業やそのオーナー一族とも取引があります。皆さんお金のある人たちに違いありませんが、彼の会社を通じて保険に入っています。なぜでしょう?その答えは。。。。。
「彼らにはビジネス、工場、オフィス、倉庫、家や別荘、車やクルーザー、そして何よりも家族や自分の健康という守るべきものがたくさんあり、それらを守るには保険がいかに安上がりか、よく知っているからです。お金のことを知リ尽くしているからこそ賢く保険を利用して、大切なものを守っているのです」ということでした。皆さんはどう思われますか?
クライストチャーチ地震ではっきりしたように、住宅保険に入っていない家には国の自然災害機関であるEQCからの支援はありません。住宅保険の保険料と一緒に徴収されているEQC Levy(年間上限150ドル)がEQCの運営費になっているため、保険に入っていない家はいくら国の機関とはいえ、救済の対象にしないのです。
「心臓のバイパス手術なんて大きな手術は公立病院ですれば?」と思われるかもしれませんが、心臓の血管が細くなるだけではこの国の場合、まず無料の公共医療の対象になりません。心臓のバイパス手術とは簡単に言えば、体の他の部分から採取した血管を問題の部分のバイパスとして取り付け、血管を迂回させる手術です。
狭くなった血管を放置しておくと、さらに詰まって心筋梗塞が起きかねません。NZの場合、GPが「これは心筋梗塞だ」と判断して救急車を呼んで緊急扱いとすれば公共医療の対象になります。しかし、梗塞を起こしてからでは命にかかわり、対処が遅れれば取り返しのつかないことになります。そのため血管の狭窄(狭くなること)が見つかった場合、バイパス手術を行うことがよくあります。しかし、これは予防医療とみなされ、無料医療の対象にならないのです。
一般的な心臓バイパス手術の費用は保険会社の資料によれば、3万2000~4万5000ドルです。なかなか現金でばんばん払える金額ではありません。かといって、心筋梗塞が起きるまでびくびくしながら待ちますか?その間を埋めてくれるのが、保険です。
ちなみに40歳の非喫煙者の男性の医療保険の保険料は月々90ドル程度です。この355~500ヶ月分がバイパス手術の治療費と同額です。実際は手術になるまでに専門医の診察料や検査費用(心電図、CT、心臓周辺の冠動脈の造影検査等)もかかります。もちろん、医療保険に入っていれば、ガンなど他の重大な病気まで対象になります。
やはり保険は賢く利用すべきだと思いませんか?
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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