先週はセミナー続きでいろいろ勉強してきました。その中で取り上げられた一例をご紹介します。
キーウィのスピーカー自身の体験談です。84歳の母を連れてウェリントンに旅行に出かけたところ、旅先で胸の痛みを訴えたので、ウェリントン病院に駆け込んだそうです。そこでの対応は、
「いずれ心臓発作を起こすだろうが、今の段階では発作が起きていないので治療することはできない。まずはGP(一般医)に行ってはどうか。」
というものでした。
飛行機には乗せられないと判断した家族はレンタカーを借り、オークランドまで10時間かけて帰りました。すぐにGPに連絡をとり、そのまま私立病院に入院し心臓のバイパス手術を受け、事なきを得ました。手術費は3万5,000ドルだったそうです。
これを読んでどう思われるでしょうか。NZは公共医療が無料の国ですが、公立病院が真っ先に対応するのは「急性」(心臓発作などの急病)と「緊急」(交通事故など)の病気や事故で、すぐに命に別状がない病気は優先順位が低くなります。
84歳の高齢者が胸の痛みを訴えたとなれば、「急性疾患」に相当しそうなものですが、ウェリントン病院の解釈は違いました。これには正直言って驚きました。一緒に参加していたキーウィも同感だったと思います。
胸の痛みといえば、まず疑われるのが動脈硬化による狭心症です。心臓の血管が狭くなって血流が不十分になることで、胸に圧迫感を感じ痛みを覚えます。それが悪化し、血管の一部が塞がってしまうと心臓発作(心筋梗塞)になります。少しでも早い段階で治療すべきなのは言うまでもありません。血管が複数狭くなっている場合や狭窄部ができてしまった場合はバイパス手術が必要になるので、この高齢者が一命を取り留めたのは不幸中の幸いと言わざるをえないでしょう。
このコラムでも「ガンになったら来てください」というタイトルで、いずれにガンになる腫瘍が見つかった友人の話を取り上げたことがありました。
第54回 ガンになったら来てください
http://www.nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=54
あれはオークランド病院の話でしたが、状況はどの公立病院でも大差ないようです。心臓発作の前兆である狭心症では、公立病院の治療が直接受けられない可能性があるわけです。
「公共医療が無料の国でなぜ医療保険が必要なのか」という疑問はキーウィの間にも根強くあります。事情に疎い外国人であれば、もっと不可解でしょう。無料ということは、乳がんの女性が温存希望でも摘出を勧められるなど「提供される医療を受け入れるしかない」ことだと思うことがよくありましたが、今回の話を知り、「医療が提供されないことにも文句が言えない」ものでもあると、つくづく思いました。
手術費の3万5,000ドルは医療保険でカバーされたそうです。
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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