保険屋ですが、資格を持つファイナンシャル・アドバイザーでもあるので、これから何回かに分けて家計に役立つ話をしてみます。
7月から始まったETS(温室効果ガス排出量取引制度)の導入で、今月1日からさっそくガソリン代が値上がりしました。これは地球温暖化を食い止めるために京都議定書に基づいて、2012年までに温暖化の原因の一つとされる温室効果ガスを1990年水準にまで削減することを目指すものです。
それでなぜガソリン代が値上がりするのかというと、導入で輸送燃料、電力・エネルギー、加工工業業界がその対象となったためです。こうした温室効果ガスの排出量の多い業界に属する企業は排出した分を帳消しにするために、温室効果ガスの代表である二酸化炭素(CO2)1トン分を1単位に、政府から1単位25ドルで排出権を購入することができます。
つまり、今まで通りCO2を排出する企業は政府に相当分の金を支払って、排出する権利を買い取らなくてはならないのです。(他にも帳消しの方法はありますが、ここでは省きます)その負担分を企業が全額吸収することはできないので、消費者にも転嫁されてくるわけです。制度の変更に伴う経費も価格転嫁されるでしょうし、どの業界も輸送やエネルギー抜きには成り立たないので、影響は小売業など広範囲に広がっています。つまりETSに便乗するかたちで、物価上昇が全面的に進んでいるのです。
最近はスーパーに行って「物が高いな」と感じることも多いかと思いますが、これからETSの影響はジワジワと生活や企業活動全体に広がっていくことでしょう。特にガソリン代や公共料金を始めとして、食品や日用雑貨など生活必需品に影響が出そうです。どれも買いだめや節約ができないものばかりなので、今まで以上にやり繰りを考えないといけなくなりそうです。
ETSは税金ではないものの、政府の決定で避けては通れないという意味では、その影響は増税に近いと思います。4月に値上がりしたACC税(ACC levy)、今月から値上がりした火災税(Fire levy)や、このコラムでもさんざん連載を続けた今月からの生命保険商品への課税など、細かい税金は多くの人が気付かないうちに、どんどん増えています。
最近、自動車保険の更新の通知を受け取った人のほとんどが、去年と比べて「ずい分高いな」と思ったことでしょうが、保険を取り巻くさまざまな税制の変更も値上げの大きな理由になっています。これに対抗できる自衛手段は少しでも保険料の安い保険会社に切り替えるか、フルカバーの場合であれば車にアラームを付けて保険料を安く抑える、排気量の小さい車に買い換えるなど、ごく限られてしまいます。
さらに10月1日からは現在12.5%の消費税(GST)が15%に引き上げられます。2.5%は決して小さな税率ではありません。NZは日本と違いほとんどのGSTが内税なので、支払っている実感がありませんが、貯金以外のほとんどすべての収入が消費に回っていることを考えると、実際は相当な金額のGSTを負担しているわけです。
GSTについては9月末までに大きな買い物をしておくという手があります。車や家電の買い替え、家や店舗の改築・改装なども金額を考えると大きな節税になるでしょう。10月以降はシステムの移行に伴う企業の負担(コンピューターソフトの更新費用など)も価格転嫁されてくるでしょうから、値上げは2.5%にとどまらない公算が高いと考えられます。
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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