3月にイーストオークランドでかなり大きな火事がありました。そのせいかいろいろなところで、「賃貸している家が火事になったら?」という質問を受けました。今回は保険屋の立場から賃貸物件の火事についてごく一般的な話をしてみます。
賃貸物件から出火した場合、借家人が納めている通常2週間分のボンド(日本でいう敷金)は返ってきません。逆に言えば、借家人に不法行為があった・借家人に賃貸契約違反があったなど特別な場合を除き、借家人の責任はボンドの没収のみとなります。(この負担が軽すぎるとして、現在は見直しを求める声が強まっています)
では燃えてしまった家の補償は誰がするのでしょうか? 家主です。NZの住宅保険(日本の火災保険に相当しますが地震や自然災害も補償の対象)は通常、物件の所有者しか加入できないため、賃貸物件の住宅保険は家主の負担となります。この場合、保険加入時に「賃貸物件」であることを明確にしておくことが重要です。賃貸物件だと保険料が高くなるため「自宅」と偽ったりしていると、借家人が起こした出火は対象外のため(というよりこの場合は保険契約における申告義務違反)、補償の対象になりません。
ちなみに、家主が同居するフラッティングも賃貸物件としての申告が必要です。
賃貸物件として保険に加入していて特に違法性が認められない限り(警察や消防の現場検証があり保険会社も必ず査定します)、借家人の過失による出火でも保険がおります。契約している保険の内容にもよりますが、全焼した場合は一般的に、できる限り現状復帰に近いかたちで建て直します。特約によっては修復期間の家賃も保険で支払われるため、住宅ローンを返済している人には心強いと思います。全焼した家を丸ごと一軒建て直してくれる、これが保険です。
日本での火事は借家人の過失が問われるので、「家を借りたので火災保険に入りたい」というお問い合わせを受けることがありますが、以上のような理由で保険に加入できるのは借家人ではなく家主なので、心配であれば契約時に確認してみてください。(ときどき家主が誤解している場合もあるので、その場合は不動産仲介業者との再確認も有効です)
投資目的で不動産を購入して賃貸に出している場合、家主側の保険加入が必須であることをご理解ください。支払う保険料は賃貸事業の経費となるので、費用面からみても家賃補償のある家主特約を付けるのは一案です。保険料を抑えたい場合は、免責(損害保険に付きものの自己負担金)を高めに設定することです。火災は起きる可能性が低い反面、起きた時の負担が非常に高いので、その時に免責が数千ドル高くても家一軒分が補償されると考えれば、決して高くはないでしょう。それにより月々の保険料を抑えることができます。
以上はあくまでも一般論で、法律や個々の賃貸契約の内容が優先するため、必ずしも上述の通りにならないこともあるのでご注意ください。当然ですが家を借りる時は渡された契約書をよく読んでからサインし、契約内容を守るようにしましょう。いずれにしても火事など起きないに越したことはありません。これから暖房器具を使う機会も増えるので、お互い火の元にはくれぐれも注意していきましょう。
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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