【インカムプロテクションを勧められたんですが】
今回はときどき受ける質問の中で、所得補償保険(インカムプロテクション保険)を取り上げてみます。というのも前々回取り上げた住宅ローンを組む時に銀行が勧める保険の中によくこの保険が入っており、勧めに応じて加入している人もいるので、改めてこの保険についてお話してみます。前々回のコラムはリンクをご参照下さい。
第271回 住宅ローンを組む時に銀行から保険を勧められたら
http://www.nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=271
【すばらしいネーミング】
この保険の何がすごいって、ネーミングではないでしょうか?日本語の「所得補償」にしても英語の「インカムプロテクション」にしても、なんだか働けなくなったらすぐに保険金がもらえそうな、すばらしい響きではないですか?中には失業しても保険がおりると大きな誤解をしている人もいますので、ご注意下さい。この保険はケガや病気など身体的障害で働けなくなった場合のみを対象としていて、失業は一切関係ありません。
【入るのは簡単でももらうのは難しい】
私は個人的にこの保険には非常に慎重です。すばらしいネーミングに安心感を覚え、「なにかあったらインカムプロテクションがある!」と思っている人が、特にキーウィに多いのですが、業界の者としてこの保険ほど「なにかあっても満額の保険がおりづらい保険はない」と思っています。
【免責期間や複雑な条件に要注意】
保険会社や商品によりますが、所得補償保険にはさまざまな条件が付いています。特に注意しなければならないのが、ケガや病気で働けない、つまり就業不能状態になってから、事前に定めた一定期間は保険金が支払われません。この期間は免責期間と呼ばれ通常は最低14日から、長いものになると2年!というのまでありますが、有給休暇日数の点から1ヶ月程度を選ぶ方が多いです。当然ながら免責期間が長ければ長いほど保険料が安くなります。この辺をよく理解していないと大変なことになります。
【求められる14日間の完全就業不能状態】
さらにこの保険は一般的に、免責期間のうち「連続して14日間完全に就業不能状態であった」後に、「部分的」もしくは「完全に」就業不能状態であったことが保険金支払いの条件になります。この辺の解釈は非常に難しく複雑で、ただ単にケガや病気で「仕事に行けない」とか「仕事ができない」では十分ではなく、例えその間に収入が止まっていても保険の諸条件が満たされなければ保険金がおりない可能性があります。
【週10時間以上働けないこと、ACCとは相殺】
また、一般的に「週10時間以上働けないこと」も重要な条件になっているため、ガン治療でよくあるように仕事を続けながら時々治療で仕事を休むケース(化学療法や放射線治療などのガン治療は連続して受けられません)では、まず保険金を受け取ることができません。また、NZの場合、ケガはACCの対象になります。ACCから保障を受ける場合は所得補償の保険金と相殺され、ダブルで受け取ることはできません。
【ローンがある場合はトラウマ保険をお勧め】
さらに所得補償保険は保険料が非常に高い保険です。それを安く抑えようとすればするほど、上の免責期間の例で見るように条件が悪くなり、保険金がおりるタイミングが遅くなります。住宅ローンがある人にとっては、いずれも金銭的な負担が大きいといえます。こうした点を考慮して、私はローンがある方には基本的に大病をしたら保険金がおりる特定疾病保険(トラウマ保険)を生命保険との組み合わせという便利な方法でお勧めしています。
トラウマ保険に関してはリンクをご参照下さい。
第266回 住宅ローンがある人に勧める保険は?第3回
http://www.nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=266
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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