19世紀ビクトリア朝風の建物が残る、海辺の町「オアマル」。
最盛期は当時のロサンゼルスに並ぶほど栄え、その後急速に衰退、ニュージーランドで最大の負債まで抱えたことがあるという、とても濃い~歴史があります。
そんなオアマルの歴史を、周辺の観光名所とともにご紹介します。
歴史を知ると町の観光がより楽しめるような気がします^^
町のはじまり
1853年、オアマルに最初のヨーロッパ系移民がやってきました。
当時ニュージーランド北島ではマオリ戦争が続いており、オアマルはオタゴ地方の穀物生産とゴールドラッシュの波に乗り、ほかの町に先駆けて急速に発展していきました。
好景気に沸くオアマル
わずか6年後には道路の総延長が30マイル(約48キロ)にもなる都市へと成長していました。
国際貿易の発展
町の産業の成長に伴い、港も発展しました。多いときで1年に450隻もの船が乗入れ、ロケットを装備した海援救助隊も設立されました。
オアマルの海は綺麗な白濁した水色をしています。
町は多くの船乗りで賑わい、娯楽としてホテル、売春宿、醸造所などの産業が発展しました。当時のホテルのうち2軒は現在も残っていて、1つは1877年建設の「Criterion Hotel」、もう1つは1881年建設の「Brydone Hotel」です。
現在閉業中ですがOtago Daily Times(9月25日付)によると今年11月に営業再開予定。
この一角は今年、Netflix限定ハリウッドドラマ「The Power of the Dog」のロケ地になっていました。
現在も営業中で宿泊可能。
Brydone Hotelの名は、ニュージーランドで初めて冷凍肉をイギリスに輸出したトーマス・ブライドンにちなんでいます。冷凍肉の輸出はのちに国の主要産業のひとつとなっていて、ニュージーランドが農業大国となる礎を築きました。
ブライドンが管理した牧場「Totara Estate」は当時15,000エーカー(東京ドーム約1,300個分)と広大なものでした。その一部は現在も残っていて見学可能です。
- Totara Estate
- https://waitakinz.com/totara-estate/
白亜の美しい建築
町の発展に伴い建設ラッシュが起こり、多くの建設労働者もやってきました。
オアマルは樹木が少ない土地だったので建設資材には周辺で採れる白い石灰岩「オアマルストーン」が使われました。これにより、美しい荘厳な建築物が建てられていきました。
手前は、旧Bank of New South Wales(1884年建設)。
その奥は、旧Bank of Otago(1870年建設)で、現在はANZです。
代表的な建物のひとつに「エレベータービル」と呼ばれたビルがあります。1883年建設の5階建て高層ビルで、内部には当時最新の水力技術により25トンもの穀物を運搬するエレベーターが備わっていました。その後火災で上層階は消失し、3階建ての建物となりました。現在は「Steampunk HQ」として観光名所になっています。
- Steampunk HQ
- https://www.steampunkoamaru.co.nz/
オアマルストーンを使った銀行、裁判所、そしてホテルや商店などが立ち並ぶ「テムズストリート」という大通りもできました。
左の時計台の建物は役所です(1884年建設)。
当時のオアマルはロサンゼルスに匹敵するほど繁栄していました。
しかし一方で、無許可の酒屋も多く乱立し、オタゴ地方の無法地帯として悪名が轟くようにもなっていました。
急速な衰退
繁栄の終わりは急に訪れました。
ゴールドラッシュが終わり、1890年代には町の産業を支えていた穀物等の価格も急速に下落、建設ラッシュも去り、労働者たちは仕事を求めてほかの町へと出て行きました。港もまた、新型の大きな船舶には対応できず、その役割が薄れていきました。
船乗りや建設労働者たちが減ったことで、長老派教会等の働きで町の治安改善/労働環境改善の動きが高まり、1906年には禁酒法が施行されました。
この頃から町の財政は傾き始めます。
爆発的な好景気と成長を背景に多くのインフラ融資が行われていましたが、成長が止まったことで経済は著しく衰退、債務も急速に膨らんでいきました。そして1900年代初頭、オアマルはついにニュージーランドで一番負債を抱える町となりました。
その後、半世紀以上にわたり、町の歴史的建物や地域は財政難により手入れがなされない状態となりました。
そして現在
このようにオアマルが長きに渡り開発や投資から見放されてきたことで、皮肉にも当時の建物が壊されずに現在まで残ることに繋がりました。これらの建物は今では観光名所となって、オアマルの町の独特で美しい景観を生み出しています。
オアマルでは毎年夏に、19世紀に町を築き上げた先人たちの精神と歴史を祝う「Victorian Fete」というお祭りが開催されます。祭りの期間中は多くの人がビクトリア朝時代の衣装に身を包み、パレードも行われます。タイムスリップしたような異世界の雰囲気が味わえるので一見の価値ありです^^
- Victorian Fete
- https://www.victorianoamaru.co.nz/fete
・・・と、ここまでオアマルの歴史をご紹介しましたが、オアマル周辺にはこのほか自然を楽しめる観光名所もたくさんあります。
- ● 海辺に並ぶ不思議な形の巨大岩 モエラキボールダーズ
- https://www.newzealand.com/jp/feature/moeraki-boulders/
- ● 世界最小「ブルーペンギン」のコロニー
- https://www.penguins.co.nz/
- ● イエローアイドペンギンが見れるかも? ブッシービーチ
- https://waitakinz.com/bushy-beach-walk/
- ● 牧草地にある奇妙な巨石群 エレファントロック(映画「ナルニア国物語」のロケ地)
- https://waitakinz.com/elephant-rocks/
- ● 400万年以上前の氷河の力で作られた崖 クレイクリフ(今年公開のディズニー映画「ムーラン」のロケ地)
- https://waitakinz.com/clay-cliffs/
などなど。
南島観光の際は、ぜひ立ち寄ってみてください^^
参考
オアマル観光i-SITE内上映動画。※残念ながらi-SITEは今年6月に閉館しました。
- Heritage New Zealand
- https://www.heritage.org.nz/
- Waitaki District Council
- https://www.waitaki.govt.nz/