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AICアクティング・エクゼクティブ・ディレクター 中村敬志

AICアクティング・エクゼクティブ・ディレクター 中村敬志

未来を担う子供たちを国際的リーダーに育てたい。

2003年、オークランドに創立されたオークランド・インターナショナル・カレッジ(AIC)は世界の名門大学への高い進学率を誇る高等学校。その経営母体は広島県に本拠地を置く教育関連企業、鷗州コーポレーションだ。真の国際的リーダーを目指して国籍もさまざまな約300人の生徒が学ぶAICの経営業務全般を担当する中村敬志さんに、同校の教育理念について話を聞いた。

世界トップの名門大学への道を開く国際高校

グローバルな視野を持ち、国際社会で活躍する人材の育成を目指し、2003年、オークランドに門を開いたオークランド・インターナショナル・カレッジ(AIC)。広島県に本拠地を置く教育関連企業、鷗州コーポレーションが設立した高等学校だ。

この高校の大きな特徴は、ニュージーランドで主流であるNCEA(National Certificate of Educational Achievement)ではなく、IB(国際バカロレア)を専門にした高校であるということ。NCEA、IBともに大学に進学する際の入学要件となる教育プログラムだが、IBのほうが取得により時間がかかり、学力レベルも高いことで知られている。そのためIBを高得点で取得した生徒には、オックスフォード大学、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学といった世界の名門大学に進むことができるのだ。現在、ニュージーランドでIBのみを採用している高校はAIC一校のみ。約300人の生徒のうち約60%が海外からの留学生で、親元を離れて寮で暮らしながら勉学に励む日々を送っているという。

「留学生は中国、韓国、日本、ベトナム、シンガポールなどアジア人が多く、地元のニュージーランド人も移民の2世や3世がほとんどです。3年制の高校ですが入学時の15~16歳からすでに将来のビジョンを明確に持っている子が多く、皆、目的意識が高いですね」

そう話す中村敬志さんはAICで財務や人事など経営全般の業務に携わるアクティング・エクゼクティブ・ディレクター。日本で12年間銀行に勤務した後、教育関連企業の鷗州コーポレーションに転職したという。

「銀行の仕事は面白かったんですが、もっと社会の役に立っていると実感できるような職業に就きたくなったんです。それで畑違いでしたが縁あって教育関連企業に転職することになりました。入社後すぐにAICへの赴任を命じられ、びっくりしましたが銀行時代に中国駐在経験もありましたし、再び海外で働いてみたいという思いも持っていたのでいいチャンスでした」

こうして2006年にオークランドへやってきた中村さん。当時からAICの教育プログラム自体は変わっていないが、生徒数がおよそ100人だったのに対し、現在は約300人と3倍に増えたそうだ。

「私がこちらに来た2006年はちょうど1期生が卒業する年でした。その頃と比べると大学の進学実績も目を瞠るほど残せていますし、学校全体がいい方向へ向かっていると感じています。ただ、生徒数はこれ以上増やすつもりはありません。小さな学校ですが、今の300人くらいが規模としてちょうどいいのではと考えています」

意識が高くアカデミックな環境づくりが学力向上の秘訣

AICの生徒のIB取得率は全体の91%(世界平均は78%)。高ポイントで取得している生徒も多く、各教科は下から順番に1~7ポイントで評価されるが、この7ポイントを得ている生徒も世界平均の7%に対し、AICでは19%。全教科で38ポイント以上を取得すると世界のトップ20大学に進学できるが、AICでは40ポイント以上をマークする生徒が16%もいるという。この素晴らしい実績にさぞかし入学基準も厳しいのではと想像するが、実際はそうではないと中村さんは言う。

「AICの入学基準はある程度の英語力。IELTSのアカデミックでいえば4.5くらいですから、そんなにハイレベルではないんですよ。入学したときから飛びぬけて頭のいい子ももちろん存在しますが、大半はそうではありません。天才が揃っているわけではないんです」

ではなぜこれほど優秀な成績が残せるのか。そう尋ねると中村さんは“環境づくり”が鍵だと教えてくれた。

「高校生といえどもまだ子供ですから、どんなに賢い子でも周りの生徒が皆遊んでいたら、自分も楽なほうへ流されてしまうでしょう。その点、AICはやる気のある生徒が多く、学校全体がアカデミックな雰囲気なのでさほどレベルが高くなかった子もその空気に刺激を受けて勤勉になるんです。それにIBは難しいですから、相当頑張らないとついていけません。必然的に勉強せざるを得ない環境に身をおくことになる。留学生にとっては寮生活ということもいいでしょう。意識の高いクラスメートたちといつも一緒にいるからサボろうという気にならないようです。私たちには親御さんから大切な子供たちをお預かりしているという責任もあるし、言葉は悪いけど目の届くところにおいていくという意味でも寮生活は正解です」

ただがむしゃらに机に向かい、テストでいい点数を取るだけが能でははないこともIBの特色だ。IBを取得するには生徒全員、150時間の課外活動を行うことが義務付けられているという。

「ガリ勉だけでは通用しないのもIBのいいところですね。課外活動は何でもいいんです。例えばスポーツでもOKで、今在学中の生徒の中には卓球のニュージーランドチャンピオンもいるんですよ。そのほかボルネオで貧しい人々のために家を建てる手伝いをするといった奉仕活動でもいいし、子供たちによる模擬国連に参加するのでもいい。AICには課外活動専任の講師もいて、組織的にサポートしています」

AICのビジネスモデルを世界に広めたい

中村さんがニュージーランドに渡った2006年当時、オークランドでNCEAに加えてIBを教えている高校はわずか2校ほどだったが、2014年現在は約10校にまで増加した。ニュージーランドにも教育に力を入れる層が増えつつある証であり、また、子供たちが勉強に集中するにもこの国は適していると中村さんは語る。

「仕事でアジア諸国への出張もありますが、ほかの国を訪れるたびにニュージーランドは静かで安全だと実感します。大人にとってはそれが退屈に感じることもあるかもしれませんが、子供たちが勉強するには最適ですね。私は子供たちがある一定の時期は、具体的にいうと15~17歳くらいの子たちは野放しにするのではなく、適度なプレッシャーを与えて勉強させたほうがいいと思うんです。そういう経験をしないと力がつきません。そしてAICで学ぶと学力面だけではなく、さまざまな国籍の人々と生活をともにすることでグローバルなものの見方や感じ方が身につきます。それも留学する利点でしょう」

2011年に新校舎が完成した際は、落成式にジョン・キー首相も出席するほどニュージーランド全体でもトップ高校として認められているAIC。中村さんはこのシステムを他国の高校に広める活動も考えているという。
 
「AICは進学実績も持ち、学校のビジネスモデルとして成功を収めました。この経験とノウハウを活かして、日本やアジア各地にある高校のコンサルタント業務を行うことも考えています。そうして未来を担う子供たちを国際人に育てることも社会貢献になりますよね」

ニュージーランドの高校はまもなく約2ヶ月の夏休みに入り、生徒や教師もホリデーを満喫する。しかし中村さんたち学校スタッフは長期休暇をとらず、その間もよりよい教育プログラム構築のために尽力するのだとか。AICの1期生はぼちぼち社会に出始め、マイクロソフト社など国際企業で活躍しているという報告も受けているとか。真のグローバルリーダーを輩出するAICの理念が世界の高校で活かされる日も近そうだ。

Keishi Nakamura

なかむら・けいし●1970年島根県生まれ。

大学卒業後、12年間の銀行勤務を経てAICの母体である鷗州コーポレーションに転職。入社後すぐにオークランドにあるIBプログラム専門高校AICのアクティング・エクゼクティブ・ディレクターに就任。世界の名門大学への高い進学率を誇る同校の財務、会計、人事など経営にまつわる業務全般を担当している。

AIC
www.aic.ac.nz