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高校生、本気の挑戦! 日本語スピーチフェスティバル2018《前編》

 2018年8月18日(土)にAUT(オークランド工科大学)で開催された、日本語スピーチフェスティバル(Auckland Regional Secondary School Japanese Speech Festival)。今回は、プログラムリーダーを務めたAUT日本語科・河井潤二氏のインタビューと共に、Year 12で入賞した生徒のスピーチ内容をご紹介します。

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▲ 日本・ニュージーランド往復航空券を獲得したSophie Sunさん

日本語スピーチフェスティバルとは?

 2009年からほぼ毎年行われている、日本語スピーチコンテストの高校生部門。2018年大会の参加者は5校からの計19名。Year 11、12、13、およびオープンカテゴリーで審査され、テーマは自由。協賛団体・オークランド日本経済懇談会により、Year 13の優勝者には日本とニュージーランドの往復航空券が贈られた。

オークランド日本経済懇談会(二水会)

 オークランド日本経済懇談会は、加盟企業計44社・会員数54名(2018年6月末時点)の、オークランド地域でビジネス活動をしている日系企業商工団体。過去3年にわたる「JAPAN DAY」のサポートにおいて、オールブラックスおよび日本代表ラグビー選手の招聘、野球プログラムや日本人ワイナリーフェア、ビジネスネットワーキングなどを企画・運営。

 Auckland Regional Secondary School Japanese Speech Festivalの2018年大会において初めて協賛し、高校生部門、そして別途開催の大学生部門において各優勝者に日本とニュージーランドの往復航空券を拠出した。

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Year 12:1位入賞

第1位 Gina Dai(Macleans College)
「幸せは、マインド次第なのです」
― Your Happiness Depends on You ―

 私の友達の一人が、最近恋に落ちてしまったようです。毎日「どうしよう」って私に何度も聞きます。彼女の幸せのためにも私も一緒に困り始めました。困っている私は、母にそうだんしてみたが、母は「なんでたにんのことを心配してるの? まず自分の幸せを探しなさいよ」って答えました。

 そのこたえを聞いたから、私はもう一つ困ることが増えました。どうして母は私が今幸せじゃないと思いましたか。幸せという、このみんなが探しているものは、一体なんでしょうか。どうして幸せな人と幸せじゃない人と、両方いますか。

 アメリカの先生は、十年かかって、五万人に「あなたは幸せですか」って調査してみました。その結果は、十年前に「幸せ」と答えた人は、十年後も「幸せ」と答えました。逆に、「幸せじゃない」と答えた人は、十年後も「幸せじゃない」と答えたんです。このちがいは何でしょう? それは、人々の考え方です。

 例えば、母にとって、私の友達へのしんぱいはただの可笑しい悩みだけです、でも私にとって、その悩みは私の幸せです。友達を助ける事、雨の時たまたま傘を持ってること、お腹が空いた時大好きなメロンパンを食べること、…そういうことは全部私の幸せです。幸せは、易しくて、どこでもあるものです。

 「人々の人生は、それぞれの色がある」とみんな言っています。じゃ、質問です。あなたは今日のイベントは何色とみていますか。しょうじきいうと、人の前で話すことは私の一番のじゃくてんで、最初の私はグレーしか見ませんでした。でも私はちょっと考えてみました。このイベントは実はその弱点を変える一番いいチャンスです。そして、日本の文化も感じられて、他の人のとてもゆうしゅうなアイディアも聞けますから、今日は、ピンクになりそうです。

 一生かかって、ずっと幸せを探しても幸せじゃない人がたくさんいるでしょう。もしあなたもそういう人なら、私みたいに自分の考え方をちょっと考えてみましょうか。グレーを感じるか、ピンクを感じるか。あなたの幸せは、あなたのマインド次第なのです。幸せが逃げないように、もう少し明るく考えて、幸せをつかまえましょう。

第1位受賞コメント

「第一位に選んでいただきありがとうございました。今度のスピーチコンテストはすごく楽しくて、いい経験でした。これからも日本語の勉強を頑張ります。」

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日本語科 プログラムリーダー

河井潤二氏インタビュー

―― 今回の日本語スピーチフェスティバルは、誰でも参加できたのでしょうか。

 対象となっていたのはYear 11~13です。カテゴリーはYear 11、12、13、オープンの4つ。オープンカテゴリーには、日本語ネイティブか、もしくは日本で2年以上の教育を受けた人に登録してもらいました。

 今回は旅行や3カ月程度のホームステイというような短期間の経験は含めませんでしたが、以前はもう少し厳しく、日本語を母語としない学習者の日本語能力を測る試験「日本語能力試験(JLPT)」でN2に合格した人はオープンカテゴリーでなければいけないというルールがあったんです。

 でも、N2を取得していたら日本での経験があるなしにかかわらず、オープン。つまり、せっかくニュージーランドで頑張ったのにYear 13として登録できない。Year 13の優勝者に贈られる日本・ニュージーランド往復航空券の獲得も目指せない。頑張ったがために日本に行く機会が奪われるというのは、不公平ですよね。

 確かにある程度日本で教育を受けていたら、ほかのオープン登録者と同じレベルで参加するのは公平だと思いますが、ニュージーランドで勉強してきた生徒は学年内のカテゴリーに振り分けようと、今年からルールを変更したんです。

―― 皆さんの日本語能力がとても高くて、驚きました。

 中等教育で日本語の学習を始める生徒は、多くの場合、Year 9から習っています。日本人も小学生や中学生のうちから授業の一環として英語を学びますが、大勢の前に立って英語のスピーチをするのは、なかなか難しいのではないでしょうか。

 特に日本語スピーチフェスティバルでは、Year 13の生徒にはスピーチの後に質疑応答の時間があり、その場で答えを考えて自分の意見を話さなければなりません。さらに3位までの入賞者に選ばれるとまた別室でインタビューがあり、テーマを選んだ理由や将来の夢、自分自身のことなどについて聞かれます。

 その結果を踏まえて1~3位までの順位が決まるわけですから、かなりのプレッシャーを感じていたはずですが、そんな状況の中、上手に答えられるのはさすがだなと感じました。

―― ニュージーランドの日本語教育の現状はどうなっているのでしょう。

 高校の場合ですと、20年以上も前の1996年辺りがピークだったと思います。当時は高校の外国語科目の中で最も人気のある授業が日本語で、2万5~6千人もの高校生が勉強していたほどです。

 それ以前も現在も1位はフランス語で、日本語は常に2位を守ってきていたのですが、つい最近、スペイン語に追い抜かれてしまいました。観光者数も一度はオーストラリアに次いで2位まで上り詰めたものの、今は6位まで下がっています。貿易高でも2位に位置していたこともあり、親としても生徒本人としても日本語を勉強するメリットがたくさんあったんです。

 ただ、これは高校生の話。今はどの言語も学習者数は減少する傾向にあるのですが、大学レベルでは日本語がいまだに一番です。

―― 今後「日本語スピーチフェスティバル」はどのようになっていくのでしょう?

 今年初の試みとして、YOSAKOIソーランダンスグループ「Southern Stars」を招いたのですが、パフォーマンスを披露してくれたのはもちろん、ダンスのワークショップまで開いてくれました。参加者だけでなく、家族や関係者まで一体となって盛り上がっていたのが印象的です。

 また、今年はスピーチの合間にAUTの学生ボランティア主催のアクティビティーで山手線ゲームも行いました。日本語や日本文化に触れて楽しんでいる生徒たちの様子を見たら、今後は「日本語スピーチフェスティバル」というよりも、「日本語を使ってみんなで楽しもう」という概念のもと、「日本語フェスティバル」としての要素を置いてもいいのかなと感じました。

 将来的には「日本語の歌を歌いたい!」「合気道を習っているから披露したい」と自ら手を挙げてくれる生徒を募ったりもして、ゆくゆくは大会の関係者だけでなく、日本に興味があるという人にも来てもらいたい。そのために、来年からどのように運営していくかを考えているところです。