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資生堂ニュージーランド 取締役社長 高井信之さん

資生堂ニュージーランド 取締役社長 高井信之

こだわりの製品でニュージーランドの顧客を美しくハッピーにしたい。

日本国内シェア1位を誇る老舗化粧品メーカーの資生堂。1957年より海外展開をスタートし、ニュージーランドには1971年に上陸。現在の海外売上比率は全体の53%と国内よりも多く、世界市場での存在感を高めています。2011年より資生堂ニュージーランド社の代表取締役を務める高井信之さんに、ニュージーランドでの同社の動向や今後の展望について伺いました。

製品への徹底したこだわりでグローバル企業へと成長

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 オークランドのグレンイネスにオフィスを構える資生堂ニュージーランド社。資生堂は1872年に東京・銀座で創業した日本最大手の化粧品メーカーですが、ニュージーランドでの歴史も長く、1971年より現地で愛され続けています。

 その資生堂ニュージーランド社の代表取締役を2011年4月から務めているのが高井信之さん。海外勤務歴は長く、資生堂タイランド社や資生堂ドイツ社の社長として現地での大幅な売り上げアップに貢献してきた経歴の持ち主です。現在は海外を含めてグループ会社98社を抱え、約120の国と地域で展開し、海外売り上げ比率が全体の半分以上である53%を占めるなど、グローバル化の進む資生堂。競争の厳しい化粧品業界で飛躍を続ける理由はどこにあるのでしょうか。

「創業以来変わらない製品へのこだわりが一番の理由だと思います。初代の福原信三社長は“物事はすべてリッチでなければならない”を企業の基本精神に掲げた人で、その姿勢が今も資生堂には生きているんです。たとえ手間やお金がかかったとしてもよりいいものを求めますし、品質はリリースに必要な基準を満たすだけでは満足せず、常に最大限まで精度を高めます。

 社内に独自の宣伝部を持ち、クリエイティブな部分もオリジナルです。パッケージや宣伝素材もあまり外注せず、ほとんどインハウスのデザイナーが手がけてきました。また、2014年に魚谷雅彦が社長に就任してからはとりわけ研究開発に力を入れていて、現在も1000人ほどの研究員がいますが、今後はさらに人数を増やす予定です。そうした製品に対する徹底的なこだわりが他社との差別化につながり、そこに商品価値を見出してくださる方にはご理解いただけるというスタンスでモノづくりを行ってきました」

 細部にまで力を注いで生まれたハイクオリティな商品は、ニュージーランドの顧客からも厚い信頼を寄せられているといいます。ニュージーランドと日本では環境や文化が異なりますが、売れ筋アイテムも変わるのでしょうか。

「ニュージーランドは移民の国で、ヨーロッパ系、パシフィック・アイランダー、アジア系など多様な背景を持つ人々が暮らしており、その点は日本と全く違います。売れ筋商品もさまざまで、例えばアジア系の方々には美白アイテム、ヨーロッパ系の方々にはアンチエイジングが求められます。また、日本ではもう販売されていない水あり・なし両用ファンデーション“ビューティーケイク”が今でもこの国ではベストセラーなんですよ。昔ながらの製品に対するロイヤルティが高いのかもしれません。

 ニュージーランドで販売している商品は日本、アメリカ、フランスから輸入しています。6年ほど前まで今のオフィスが立っているこの場所に工場もあり、生産を行っていたのですが、関税が引き下げられたため、その必要がなくなりました」

自然とゴルフとワインが好きな人には最高の環境

 資生堂ニュージーランド社の社員数は50人ほどですが店頭のBCを入れると200人くらいになります。日本から派遣されているのは高井さんだけであとは全員が現地採用です。移民の国らしくヨーロッパ系キウィもいればアジア人の社員も多く、とても国際色豊かでダイバーシティ(多様性)な会社といえます。

「ダイバーシティは企業がグローバル化していく上で非常に重要でこのダイバーシティによりより強みを発揮することを目指しています」

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 ニュージーランド生活も6年目に突入した高井さん。休日には趣味のゴルフや旅行を楽しんでいるそうです。

「ニュージーランドは自然に恵まれて住民もフレンドリーですし、日本食品が比較的安く手に入るので日本人にも暮らしやすいと思います。特にゴルフとワインが好きな人には最高ですね。僕はゴルフが趣味で会社の近くにあるレミュエラゴルフクラブや、ほかのゴルフコースにもよく行きます。例えば市営のチャンバーレインパークは車で10分ほどで、週末の午後ぶらりと行ってもNZ$20~30くらいでできます。

 ニュージーランドは南島のグレイマウス周辺を除いてほとんど仕事や旅行で回りましたが、出かけた先でゴルフコースを見つけると立ち寄ることができます。地方では土日でも空いていて、オネスティボックス(グリーンフィーを入れる箱)にNZ$20~30入れるだけですぐできるのが便利。日本では事前予約が必要ですし、1人ではなかなかコースを回ることができません。ニュージーランドでは思いついたときに1人でもゴルフができるなんて、まさにゴルファーズ・パラダイスですよ。カジュアルなコースもあれば、ケープ・キッドナッパーズのような世界有数の高級コースもあり、幅が広いのも魅力です」

さまざまなブランドをバランスよく紹介していきたい

 高井さんがこれまで手がけてきたヨーロッパやアジア諸国と異なり、人口の少ないニュージーランド。マーケットという意味では小さいですが、安定した成長は期待できると話します。

「大きなビジネスは難しいけれど移民もドンドン増えていますし、ニュージーランドはまだまだ可能性のある国だと思います。日本企業がもっと入ってきてもいいのではないかと。企業自体が参入していても駐在員の数が少ないので、もっと多くなってもいいと考えています」

 資生堂ニュージーランド社としては、資生堂に数多くあるブランドをさらにニュージーランドに紹介し、スキンケア、メイクアップ、フレグランスの3分野でバランスよく広げていくことを考えているそうです。

「資生堂グループ子会社のBPIがフレグランス専門で、イッセイミヤケ、エリーサーブ、ナルシソロドリゲス、アズディンアライヤなどがあり、今年も新しいブランドが出るのですが、これらがヨーロッパ系の人々に好評なので一層拡大していきたいですね」

 製品へのこだわりを大切に、資生堂の高品質なアイテムでニュージーランドの顧客をより美しく、ハッピーにしたいと語る高井さん。日本生まれのコスメブランドは遠く離れたニュージーランドでさらなる躍進を遂げそうです。

高井信之

たかい・のぶゆき●岐阜県出身。

東京北支社に勤務した後、1981~83年にドイツに研修。帰国後は名古屋北支社を経て1990年、国際部署へ移動し、ドイツ、スイス、オランダ、香港、マレーシア、シンガポールの各エリアマネージャーとなる。1999年より資生堂アジアパシフィック本社でインド、インドネシア、タイ、ベトナムを担当。2000年から5年半、タイのバンコクで資生堂タイラインド社の社長となり、売り上げの倍増を記録。2006~2009年は資生堂ドイツ社の社長を務め、2008年、ドイツで売り上げナンバー1を達成。2009~2011年は日本の資生堂プロフェッショナル社の社長となる。

2011年、資生堂ニュージーランド社の社長としてオークランドへ赴任。国際色豊かなスタッフと共に働きながら、休日は趣味のゴルフや旅行を楽しんでいる。

資生堂ニュージーランド
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