「やっぱりサッカーが好き」 ニュージーランドに来て再確認した大事な気持ち

　9月11日に行われた、ニュージーランド女子サッカー「New Zealand Women’s Knockout Cup」の決勝に、ワーキングホリデービザで滞在している日本人女性が出場していました。彼女の名前は、長濱千郷さん。長濱さんの所属する「フォレストヒルミルフォード」は、PK戦までもつれた試合に4-3で勝利。この試合にフル出場し、優勝メンバーの一人となった長濱さんにお話を伺いました。

言葉が不自由でもサッカーでつながる快感

Photo: © Forrest Hill Milford AFC

　選手の中ではひときわ小柄な体型。それでも、ディフェンスから一気に攻撃へと駆け上がる俊足と、試合時間いっぱい走りきる持久力はチーム随一。決勝戦では、シーズンを通して負け越していたチームを相手に最後まで粘り強いプレーを続け、優勝に貢献しました。

　チームメイトやコーチからは「チー」の愛称で呼ばれている長濱さん。「英語もあまり喋れないし、コミュニケーションも下手な方。でもサッカーのプレーを通じて“あうんの呼吸”みたいなものが感じられた時は、すごく気持ちがいい」と話します。

サッカーとの出合いと他競技への転向

　長濱さんがサッカーを始めたのは小学校4年生の時。引っ越し先で仲良くなった友人がサッカーをしていて、練習に付いて行ったことがきっかけでした。高校時代には、なでしこリーグ2部（当時）の「アギラス神戸」に所属。持ち前の俊足と持久力が磨かれていきます。高校卒業後は体育教師を志し国立大学に進学するも、学校に女子のサッカーチームがなかったため、ハンドボールに転向。4年次にはキャプテンとして活躍します。

　大学卒業が近づいていた頃、2016年と2020年のオリンピック種目に登録が決まり、注目が集まっていた「7人制ラグビー」のクラブが他競技から選手の引き抜きをしていました。長濱さんは東京都内のクラブ「ラガール7」に入団。仕事をしながらラグビーに打ち込み、昨年10月にはオーストラリアで7人制ラグビーのニュージーランド代表「オールブラックス」と対戦。この試合をきっかけに、海外経験に興味を持つようになります。

サッカー再始動のきっかけは「ダニ」？

 「強いところでラグビーがやりたい」。クラブを離れ、日本を発ったのが昨年末。友人とともにワーキングホリデービザでニュージーランドへとやってきました。オークランドでの滞在先は、所属していたラグビークラブの元チームメイトの実家。快適なニュージランドの夏を満喫していた長濱さんですが、ある日、猛烈な痒みに襲われます。痒みの元は、ダニ。あまりの痒さに耐えきれず、ノースショア・タカプナへと引っ越すことになりました。

　年が明け、地元のラグビーチームを探し始めたものの、理想のチームはなかなか見つからず。たまたま近所の公園で声を掛けた人が地元のサッカーチームの代表者の友人で、聞けば「週明けに選手のセレクションがある」とのこと。入団テストを受けると、見事合格。「フォレストヒルミルフォード」の女子プレミアチームの右サイドバックとして今シーズンを戦うことになりました。

海外で得た貴重な体験とこれからの目標

　ビザの有効期限の都合で、チームへの所属は今シーズンのみ。海外でのプレーを通して感じたのは、「こっち（ニュージーランド）の人は、スポーツを本当に好きでやっていて、生活の一部として楽しんでいる」ということ。長濱さん自身、仕事などサッカー以外の生活も楽しみながら、のびのびとプレーができたと言います。

　ニュージーランドで再びサッカーと出合い、貴重な経験を積んだ長濱さん。海外での生活は今後の生活を考える上で大きなきっかけとなったようです。

「日本にいても何も変わらない気がして海外に出た。もし、海外に出ることを迷っている人がいるなら、『やってみないと何も変わらない』って伝えたいですね。自分が本当にしたいこと、大切なことは何かを考えていけば、いつも答えは出てくるから」