民間の健康保険料が上がる一方で、保険会社が高額な治療費の全額補償を渋る動きが広がり、加入者が想定外の自己負担を強いられるケースが増えている。保険・金融サービスのオンブズマンが6月までの1年間に扱った健康保険関連の苦情は170件で、前年から91%増えた。
オンブズマンのカレン・スティーブンス氏によると、増加の一因は、保険会社が「妥当な費用」までしか支払わないとする約款の条項を実際に適用し始めたことだ。以前はこの条項が事実上適用されないことも多かったが、医療費の高騰を受けて支払額を抑える根拠として使われるようになっている。
実際に、1万2,564ドルの脊椎手術を受けた加入者に対し、保険会社が8,001ドルしか支払わなかった例もある。保険会社は過去10カ月の同じ手術費用の中央値を基準にしたと説明し、オンブズマンも保険会社の判断は妥当だとして苦情を認めなかった。保険の専門家ラッセル・ハッチンソン氏は、判断基準を約款に明記すべきで不公平だと指摘している。
業界最大手のサザンクロスは、高齢化や慢性疾患の悪化、医療従事者の不足、薬価の上昇などで治療の件数と価格が増えていると説明。加入者の保険金請求額は1年で12.2%増え、コロナ前の長期平均6.5%を大きく上回った。
スティーブンス氏は、生活費の高騰による不満に加え、AIで苦情を申し立てやすくなったことも件数増加の背景にあると見ている。同オンブズマンが調べた苦情は全体で833件と46%増え、銀行オンブズマンでも同様に件数が増えている。
