ニュージーランドの有名人インタビュー

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Interview vol.31

写真家
大原正也さん
自分らしい感性を大切に、“写心”の世界を極めていきたいです。

山頂付近に万年雪をたたえたサザン・アルプスの山々、深く入り組んだフィヨルド、どこまでも続く海岸線、太古の昔から変らぬ温帯雨林の森──「地球の箱庭」と称されるほどバラエティに富んだ雄大な自然が残るニュージーランド。そんなこの国の雄大な風景を、独自の視点でカメラに収める日本人写真家がいる。オークランドに在住し、国内外のさまざまなメディアで活躍する大原正也さんだ。2009年4月に横浜で初の個展を開催する彼に、写真への想いをお話いただこう。

ヘイリーとの出会いで写真に目覚める

 ニュージーランドのマオリ語名はアオテアロア。「白く長い雲のたなびく国」という意味だ。オークランド在住の写真家・大原正也さんが2005年に出版した『New Zealand Land of Clouds』は、そんなこの国の象徴ともいえる“雲“がキーワードの写真集。ニュージーランドの空に浮かぶ表情豊かな雲を美しい風景と絡めた、ユニークな作品の数々が収められている。

「雲はニュージーランドの国名にもなっているのに、雲をテーマにした写真集は1冊も出ていなかった。キーウィのフォトグラファーがやらないのなら、僕が挑戦しようと思ったんです。もともとほかの人がやらないこと、自分にしかできないことをしたいとずっと考えていたし、自分らしい写真が撮りたかったので、いいチャンスでした」

 独特の視点でニュージーランドの風景を撮り続ける大原さん。プロの写真家としてさまざまなメディアで活躍する彼が初めてこの国を訪れたのは1999年。大学卒業後、IT業界に身を置いていた時のことだった。

「’98年に友人とタイ旅行に出かけて海外旅行に開眼したんです。そして翌年はニュージーランドを一人旅したのですが、すこぶる印象がよくて。海外生活にも興味があったので、またこの国に戻って来たいと望むようになりました」

 海外に出ていろんなことを経験して、自分の可能性をもっと試してみたい──。そんな気持ちが強くなった大原さんは、2000年、仕事を辞めてオークランドへ留学。ホームステイをしながら語学学校に通い、英語を学んだ。そしてその間にますますこの国が気に入ったため、一旦帰国した後、’01年にワーキングホリデービザを取得して再渡航。この年、彼の人生を大きく変えることになる、いわば運命の出会いが待っていた。

「ある日何気なくテレビを観ていたら、ヘイリーのデビューアルバムのコマーシャルが流れたんです。“こんなにキレイな声の子がいるんだ!?”と衝撃を受けて、すぐにアルバムを買いました。子供の頃から音楽が好きでいろいろなジャンルの曲を聴いていたけど、ヘイリーの歌声には体が震えましたね。彼女の素晴らしさを日本の人たちにも伝えたいと思いました」

 今や世界的シンガーとなったヘイリーも、当時はまだオフィシャルサイトもない駆け出しの新人歌手。大原さんはヘイリーのファンサイトを開設したロトルア在住のキーウィ男性にコンタクトを取り、情報を共有しあって自身も日本語の応援サイトを立ち上げた。初の日本人サポーターである大原さんの活動はヘイリーや彼女の家族から歓迎され、ヘイリーと直接会って話す機会にも恵まれたという。

「その時、僕が運営するヘイリーのサイト用に彼女の写真を撮らせてもらったんです。200万画素のコンパクトデジタルカメラだったんですけど、とてもかわいらしく撮れていたんですよ。それで、自分の手でもっとちゃんとヘイリーの写真を撮ってみたいという欲求が湧いてきた。それが本格的に写真を始めるきっかけになりました」

テーマのある風景写真が持ち味

 ヘイリーを自らの手で撮影したいという情熱に突き動かされた大原さんは、デジタル一眼レフカメラを購入し、本腰を入れて撮影を開始。カメラに関する参考書を何冊も読破し、いろいろな写真雑誌や作品を見て構図や撮り方のアイディアを得、そして何より枚数をたくさん撮ることで、スキルアップを図っていった。それ以前も風景写真を撮ることは趣味のひとつではあったが、そこまでのめりこんだことはなかったという。

「IT業界で働いた経験があるのでデジタルに対しての抵抗がなかったことも僕の強みでした。写真を撮ったらすぐにパソコンでチェックして、よかったところ、悪かったところを確認し、次に活かす。それを繰り返して、技術を向上させていきました」

 ほどなく写真コンクールで入賞を果たすほど腕を上げた大原さんのもとには、プロの写真家としての仕事も舞い込むようになった。’05年10月にはニュージーランドの老舗出版社Reed Publishingより先述の写真集『New Zealand Land of Clouds』を発表。’06年にも同社から『Moods of New Zealand』という2冊目の写真集を上梓した。これは日本人写真家初の快挙である。

「1冊目の“雲”は自分で考えたテーマですが、2冊目の“ムード”は出版社から出された課題だったんです。国内各地を撮影旅行で周りながらとても悩んだし、試行錯誤しましたよ。“ムードって一体何なんだ?”ってね」

 思案を巡らせながら大原さんがたどり着いた答えは「ムードとは雰囲気ではないか」ということ。快晴の日だけではなく、曇りでも雨でも嵐でも、すべての瞬間にニュージーランドの雰囲気がある。そんなニュージーランドの雰囲気を伝える写真を撮ればいいのではないか──そう気づいた瞬間から俄然、作品づくりに勢いが増したという。

「雲やムードのように何かテーマを設けて写真を撮るのが僕のスタイル。テーマがあると、必然的にアングルを変えたり露出を変えたりとさまざまな工夫をするので、非常にためになるんです。僕はそうすることでプロのレベルまで上達できたんだと思います」

横浜で初の個展を開催

 ヘイリーとの出会いから早8年。大原さんは現在もオークランドを拠点にプロ写真家のキャリアを積み上げ、自身の求める写真を撮り続けている。彼に「撮影する上で大切にしていることは何ですか?」と尋ねたら、「写心です」と答えた。写真は目に見えている現象だけではなく、心も写すものだから、という。

「写真には、被写体と撮る側両方の気持ちが現れます。だから人を撮る時にはなるべく相手にリラックスしてもらうよう、いろいろと声を掛けるようにしています。不思議なもので被写体と僕の心がピッタリ合うとすごくいい写真になるんですよ。仕事でもプライベートでも作品づくりでも、多くの人が喜んでくれるような“写心”を撮ることを常に心がけています」

 来る4月、大原さんは横浜で初の個展「写心 of 恋人たちに捧げるニュージーランド」を開催する。ニュージーランドの風景写真にロマンティックな詩を添えるという、彼らしいひと味違った趣向の写真展だ。会場となるギャラリーでは心を感じる写心がたくさん観られることだろう。

「文章を書くことも好きなので、写真に添える詩も僕が考えました。この個展を機に、次のステップへ進んでいきたいと思っています」

 日本とニュージーランドで培われた独特の感性を持つ大原さん。ファインダーを覗く彼は、その向こうに何を見ているのだろう。今後の作品に、大いに注目したい。

Text/グルービー美子(Media 4 New Zealand)
提供/ニュージーランドの歩き方

大原正也

おおはら・まさや●7月28日、兵庫県生まれ。埼玉大学卒業後、IT企業勤務を経て、2000年に語学留学のためニュージーランドへ。’01年、ワーキングホリデーメーカーとして再びこの国へ渡り、デビュー直後のヘイリーと出会う。その際、彼女の写真を撮ったことをきっかけに、本格的な撮影活動をスタート。数々の写真コンテストで入賞し、’05年10月にニュージーランドの老舗出版社Reed Publishingより初の写真集『New Zealand Land of Clouds』を上梓。’06年にも同社より2冊目の写真集『Moods of New Zealand』を出版する。現在もオークランド在住で、プロの写真家として幅広く活躍中。’09年4月には横浜で初の個展「写心 of 恋人たちに捧げるニュージーランド」が開催される。
公式サイト
個展「写心 of 恋人たちに捧げるニュージーランド」に関する情報

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