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ワインの「新世界」ニュージーランドで
日本人が造るピノ・ノワールを世界に発信しています
KUSUDA WINES ワイン醸造家 楠田 浩之さん

●氏名:くすだ ひろゆき:1964年12月4日、埼玉県生まれ、O型
●趣味:ラグビー観戦
●座右の銘:一期一会
●ビジネスの歩み
31歳から勝負――ワイン留学のためドイツ語を一から習得
「自然が造り出したものを、いかにうまくグラスの中に注ぎ込むか。それがワイン造りの極意ですね。その過程に、自分しかできないことがあると信じています」と語るのは、楠田浩之さん。
ワイン用ぶどう品種の中で、最も栽培が難しいとされるピノ・ノワールの醸造家として、世界的に認められつつある人物だ。
首都ウェリントンから北東へ約100キロ。険しい山道を越えると、マーティンボロ、というワイン名産地が開ける。楠田さんは、5年前にドイツの大学を卒業後、夫人と二人の子どもを連れ、ワイン醸造家としてこの地へ移住してきた。
ワインの世界に足を踏み入れたのは、大学生のとき。兄に勧められて飲んだ一本のドイツワインに感動して以来、世界中のワインを飲み比べ、ワインに関する書物を読みあさるようになったのだという。「興味があることは、とことん突き詰めないと気が済まない性格」と、自己分析する。
趣味にとどめようと思っていたワインの造り手になろうと決めたのは、シドニーの総領事館で働いていたときのことだ。
「海外に出てから、個人として世界に通用する何かを成し遂げてみたい、と考えるようになったんです。そのうち、自分で造ったワインが世界に通用したらどれだけエキサイティングだろう、それを目標に人生を賭けてチャレンジしてみよう、と居ても立ってもいられなくなりました」
ワインの歴史がない日本の醸造家として世界に認められるには、どこでも通用する資格が必要と判断した楠田さん。学費も考慮に入れ、ワイン醸造家の学歴としては最高峰のひとつ、ドイツ・ガイゼンハイム大学を留学先に選んだ。
31歳、長男が生まれたばかり。貯金を少しずつ崩しながら、ドイツ語を一から勉強し、一年間で大学レベルに達することから始めたという。本人と夫人の双方に、想像を絶するプレッシャーがあったに違いない。
しかし、たゆまぬ努力と情熱が運を呼んだ、といえるだろう。卒業間近に、マーティンボロに移り住んだばかりのドイツ人、カイ・シューベルト氏と出会い、夢にまで見たニュージーランドでワインを造る道が開けたのだ。

2006年4月に購入したシラー種のぶどう畑で
夫人手作りのワインマーカーを飾って
醸造所でワインの熟成具合を定期的にチェックする
60歳まで無休――大自然のジェットコースターに乗り続ける
「ニュージーランドは、国全体がワイン産業を盛り立てようとしていて、よそ者にも手を差し伸べてくれる国。保守的なヨーロッパで修行した分、好意がいっそう身に染みますね」と、楠田さん。
また、マーティンボロには、繊細なピノ・ノワールに適した気候と土壌が揃っており、フランスの本場ブルゴーニュに匹敵するワインが造れる、と確信しているそうだ。
雨の日を除き、毎日数時間の畑仕事。普通の醸造家なら手や足でむしり取る新芽も、楠田さんは一つずつハサミを使って取り除いていく。「丁寧に扱えば、翌年以降の手入れが楽になるんです」と解説する。収穫も、ぶどうの実を一粒つ選別しながらの完全な手作業になるそうだ。
年間の生産量については、「その年の天候によって上がったり落ちたり、まるでジェットコースターですね」と笑う。異常気象にやられて2005年のピノ・ノワールは出せなかったが、ベストシーズンを迎えた2006年は、8,000本の出荷予定。現在は、ピノ・ノワールより強い品種、シラー造りにも力を入れているそうだ。
儲けを追求するためのビジネスではない。スクリュー式ボトルに移行する国内ワイン産業の流行に抗って、フランスから最高級コルクを輸入。「上質コルクを使えばブショネ(コルクに発生したカビの臭いがワインにうつること)の発生率も格段に低くなるし、コルク式のワインには、説明のできない奥行きが生まれるんです」と、こだわりを見せる。
「体力的に60歳くらいが限界ですから、あと何回ビンテージを出せるか考えると、毎日が真剣勝負。今後は、この土地の自然とよりうまく付き合って、ワインのレベルをさらに上げていきたいですね」
現在、ニュージーランドと日本、シドニーで、自ら厳選した代理販売店、またはレストランにのみ卸しているという、「幻」のクスダ・ピノ。ふんわりと優しい香りと、主張しすぎない上品な味わいが印象的だ。「この雰囲気、何かに似ている」と考えていたら、楠田さんの横で笑っている夫人が目に入った。ああ、そう、この人だ。
ニュージーランドで起業を目指す日本人へのアドバイス
夫人(右)、インターンの日本人女性、二人のお子さんと食卓を囲む
目標を決めたら、それについてしっかりイメージしながら、とにかく努力を続けることです。僕は、「うまく行くなら、こういう人と出会って、こういう会話になるだろう」と、いつも理想を思い描いてきました。ニュージーランドでワイン造りをすることも、ドイツで勉強しながらイメージしていましたね。
また、家族のサポートはとても大切です。「同じ方向を向いて、これを目指して一緒にやって行きましょう」と具体的に説明して、自分がどれだけ本気か理解してもらうことから始めてください。
2006年12月 取材・文:島村 知美(Japan Media Creations (NZ) Co., Ltd.)
写真:辻 牧子
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