
プケ・アリキでタラナキ探訪
「プケ・アリキ」は、博物館、図書館、リサーチ&インフォメーションセンターが合体した国内初のコンプレックスとして、2003年6月にオープン。その斬新なデザインの建物はすでに多くの建築賞を受賞、館内には従来型だけでなく、インタラクティブ形式の展示がそろい、来館者を楽しませている。「族長たちの丘」の名を持つこの施設は、北島西部タラナキ地方の中心、ニュープリマス市内、マオリにとってこの地方で最も神聖な場所の一つでもある地に立っている。ここを訪れれば、タラナキの素顔が見えてくる。
(Quarter 2004夏号より)
Text by Mari Clothier
Photo by Puke Ariki, Jane Dove Juneau, Pip Guthrie

ハワイキから大航海を経てタラナキ地方にやってきたのは、ナティ・タマ、ナティ・ムトゥンガ、ナティ・マル、テ・アティアワ、タラナキ、ナティ・ルアヌイ、ナティ・ルアヒネの各部族。1820年ごろにワイカト部族に攻められ、南下せざるを得なかった彼らは、その間に入植した英国人移民たちによって、土地を奪われてしまう。
こうして英国軍とマオリとの間に、ワイタラの土地の所有権をめぐって勃発したのがタラナキ戦争。戦後、英国軍は52万ヘクタールもの土地を没収。それに対し、1879年テ・フィティ・オ・ロンゴマイとトフ・カカヒは2,000人に及ぶ彼の支持者と、非暴力の抗議を実行する。1881年11月、約1,600人の英国軍は、この平和主義者のパ(要塞の機能を持つ村落)、パリハカに突入。無抵抗な人々に暴行を加え、略奪を行い、家々を焼き払った上、作物を全滅させた。最近行われたワイタンギ裁判で、これは「前世紀、世界では多くの暴挙が政府の判断で行われたが、その中でもこれは最も卑劣な行為」と評価された。
「タラナキの編まれた聖なるマット」と名付けられた、このマオリ・ギャラリーで語られる解説はすべて地元マオリの人々の肉声によるもの。これは国内のほかのどの博物館でも行われていない、プケ・アリキならではの展示手法だ。
テ・アティアワ部族による秀逸なカービング、ハワイキから人々とともに渡来し、すでに絶滅してしまった犬、クリの毛を用いた現存する唯一のマント、フルフル・クリなど、ここでの見どころは数知れない。
英国軍に対し、非暴力に訴えたマオリのコミュニティ、パリハカは、多くの文化人に影響を与えている。ディック・スコット著の『Ask That Mountain』を読んだ姉キャロリンに「パリハカに関する曲を書くべき」と勧められたのがきっかけで、トップ・ミュージシャン、ティム・フィンは『Parihaka』を生み出した。この曲は1989年に発表されたアルバム、『Tim Finn』に収録されている。

1841年、英国からの移民が初めて入植。彼らは約10年間で、穀類、ジャガイモなどを育て、この地方を「ニュージーランドの庭」と呼ぶにふさわしい豊かな土地に開墾していった。1865年にはニュープリマス市内のモトゥロアで油田が発見されるなど、川沿いに開けた港を中心に急成長。1881年にはその人口は約1万5,000人に膨れ上がり、国内で最も人口密度の高い地方となった。
1885年にイングルウッドとオプナケに共同酪農工場が開設されたのをきっかけに同地方は本格的な酪農地帯に。これら工場を1956年に集約した、ハウェラの大工場は南半球で最も大きいといわれている。1959年にカプニで、その10年後にマウイで天然ガスが発見され、今では年間20億ドルの収益を上げている。2001年現在の人口は約10万3,000人。2003年にはハリウッド映画『The Last Samurai』のロケ地として注目を浴びた。
このギャラリーでは、過去150年間にわたるタラナキの歴史を振り返っている。酪農やエネルギー産業について、タラナキ山にまつわる歴史やタラナキ戦争などの戦史、さらには教育、ファッションなど、当時の人々の日常生活までを垣間見ることができる。
1988年にタラナキ地方に共和国が建国された。名付けて「ファンガモモナ共和国」。ニュープリマスから車で30分ほど南下したストラトフォードからさらに東へ64キロのところにある。行政区分上タラナキからワンガヌイになるのを拒否、独立を宣言したのだ。毎年10月の最後の土曜には建国記念日を祝うが、祝う国民の数は25人だけだそう。

この地方では、約2,000万年前からタラナキ山などの火山が活動を続けている。と同時に、インド・オーストラリア・プレート上にあり、その断層からは石油が産出されている。
5,500万年前から150万年前の間に、気候は劇的に変化。近海では体長約13メートルのホオジロザメの一種、ジャイアント・ホワイトシャークなどの珍しい動物が栄えては滅びていった。150万年前には、ニュージーランド・アオバズク、プケコなど、この地方の生態系を代表する鳥類が登場。これらはリムやトタラ、ブナの森林をすみかとしていた。
一方、ニュープリマス沿岸にあるシュガー・ローヴズ諸島海洋保護区はニュージーランド・ファーシールの繁殖地の北限とされている。また、世界最小、そして最も希少なマウイズ・ドルフィンは国内ではこの地方の水域にしか生息せず、その数は現在100匹ほど。
このギャラリーでは、タラナキ山を代表とする火山地帯の成り立ち、豊富な天然資源、陸、海、空に生息するこの地方独特の動植物などを紹介している。
ニュープリマスから車で北上すること約40分。トンガポルトゥは海沿いに断崖絶壁が続くことで知られている。そこに立つ3つの巨岩は地元の人々には「スリーシスターズ」と呼ばれているが、その三姉妹がたったここ半年の間に「二姉妹とめい」になってしまった。最も西にある岩が海によって侵食され、今では波間にわずかにその先端部を見せるだけになっているのだ。2004年6月、プケ・アリキではこれらの厳しい海岸線の自然を収めた写真の展覧会を予定している。