
ロトルア - マオリの街を歩く

オヒネムツ村のマスターカーバー、トニーが彫っているのはマオリの武器の一つ、タイアハ(剣)/オヒネムツ村
マオリの木彫りに魅せられた私は翌日、ロトルア湖を湖畔づたいに歩いて、もう一つの工芸学校があるといわれるオヒネムツ村を訪ねた。マオリの人々が日常生活を営むこの村には、若者たちが伝統工芸を習得しようと通う地元の工芸学校がある。周辺にはロトルア湖を臨むマラエのほか、マオリとキリスト教が融合した教会もあり、マオリの衣装をまとったイエス・キリストが描かれたステンドグラスが有名だ。閑静な村の片隅に、“Maori Handcrafts School”と記された看板を見つけた。小さな2階建ての建物内に入ると、土産屋らしき店の奥に木彫りをしている男性の姿が見えた。トニーと名乗るこの男性は、かつて村のマラエを彫った祖父と父からその技術を受け継いで木彫りを続ける、オヒネムツ村の“マスターカーバー”だという。今はトニー一人が作業をし、手前の店では過去に作られた作品などが販売されている。
「今の若者は西洋や近代の産物に夢中で、独自の文化に目を向けたがらない傾向がある。でもね、歳を取るに連れて、おのずと自らのアイデンティティーに目覚め、木彫りやマオリ語、踊りなどを見つめ直したいと思うものなんだよ。これは日本人でも同じじゃないかな。そうやって小数ながらも伝統は確実に継承されていくんだよ」工芸学校としては2年前に資金不足と生徒数の減少により、やむを得ず閉校してしまったものの、彼はここを作業場として、今でもタネ(森の神)の許しを得た木でマオリ文化を後世に残す作品を彫り続けている。
この工房を切り盛りしているのが、若く美しいマオリ女性のボビー。彼女はマオリ語を話せない、歴史について知識が薄いということを自覚して、自らのルーツを探しにこの工房へやって来たのだという。読み書きの文化がなく、すべてが口承で伝えられて来たという背景を持つマオリ文化は、押し寄せる西洋文化の波にのまれつつある。しかし、移りゆく時代と新しい文化を受け入れつつも、バランスを保ちながら独自の文化を守り続けようと地道な努力を続ける人々がいる。
今回、ロトルアの旅で出会った人たちからは、マオリであることへの誇りと地元に対する愛情が伝わってきた。人々を引き付けるロトルアの魅力は、地熱活動とともに当分衰えることはなさそうだ。>>次のページへ
Ohinemutu Maori Handcrafts
住所:Ohinemutu
Ph:07-350-3378
営業時間:8:30〜17:00
定休日:土・日(冬季)
Tamaki Maori Village
住所:Tarawera Rd., Rd 5
Ph:07-346-2823
Website:http://www.maoriculture.co.nz
出発時間:17:00、18:00、19:00(冬季 17:00、19:00)※宿泊所までの無料送迎あり
定休日:クリスマス
入場料:大人75ドル、子ども35ドル