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Interview vol.21

ファッション・デザイナー
トレリス・クーパーさん
世界中の女性を幸せにするファッションを発信したい

ニュージーランド人は服装に無頓着──そう言われたのは、もう過去のこと。近年、都市部を中心にスタイリッシュなブティックや新進の国産ブランド・ストアが続々とオープンし、おしゃれを楽しむキウィも増えてきた。そんな活性化するニュージーランド・ファッション業界の担い手の一人が、トレリス・クーパー。ハリウッド・セレブの顧客も多数抱える彼女に、自身のブランド秘話を語っていただこう。

天性の芸術センスでファッション業界へ

 オークランドの商業エリア、ニューマーケットに位置する「トレリス・クーパー」のオフィス。現在、75人のスタッフが働くこの企業の朝は、一般的な会社とは大きく異なっている。午前9時15分、トレリスを含む従業員全員が一つの部屋に集まり、キャンドルに灯りを点して香を焚き、静かな音楽をかけて5分間、瞑想をする──それが始業時間前の日課となっているのだ。

「毎朝メディテーション・タイムを設けることで、魂を清め、会社の目標や夢を一緒に働く仲間たちと分かち合うことができるのです。私はスピリチュアルなことが好きだし、生まれながらに芸術肌なタイプ。仕事上でも理論ではなく、自分の美意識やインスピレーションを大切にしていますから、就業前の精神統一は欠かせません」

 美しい色使いとフェミニンなシルエットで女性の心をつかみ、今やニュージーランド・ファッションの代名詞ともなった「トレリス・クーパー」。しかし、オーナー兼デザイナーのトレリスは、ファッションやデザインについて正式に学んだことはない。彼女が語る通り、天性のセンスを活かして作品を生み出し続けているのだ。

「母がおしゃれ好きな人で、自宅に50年代、60年代のグラマラスな服やアクセサリーをたくさん集めていたんです。だから私の体の中にはファッション中毒の血が流れているのかも(笑)。なにしろ物心ついたときから洋服や靴に夢中で、毎日コーディネートやアレンジを考えたり、デザインのスケッチをしたりして遊んでいたくらいですから。私のファッション感覚は、きっとその頃に磨かれたのでしょうね」

 1980年代、20歳を迎えたトレリスは、自身が所有していた家を売却し、その資金でオークランドのハイストリートにブティックをオープン。自らセレクトしたファッション・アイテムのほか、自分でデザインした作品も販売した。それまで服飾学校に通ったことも業界で働いたこともなかったが、彼女の店はたちまち評判を呼び、ウェリントンに2号店を開くまでになったという。

「当時の私は若く、経験もありませんでしたが、自身の芸術感覚を強く信じ、心の命じるままに従ったことが成功につながったのではないかと思っています。オークランドに店を持つ前、アメリカ人のヒーラーが開催したスピリチュアル・セミナーに出かけたのですが、その時、“自分の夢や魂に忠実に生きなさい”というアドバイスをもらったんですよ。それ以来、ビジネスでもプライベートでもフィーリングを大事にしていますが、元来、ファッション・デザイナーというのは感覚的な職業ですから、本当に天職だと感じています」

ハリウッド・セレブにも愛されるトレリスのデザイン

 トレリスはその後、オーストラリアのテキスタイル会社を経営するジャック・クーパーと結婚。1988年に一人息子のジャスパーを授かった。

「ジャスパーとともに過ごす時間を増やしたくて、1989年にブティックを閉店しました。そしてしばらく育児に専念していたのですが、息子も手を離れてきた1997年、再び仕事を始める決心をしました」

 ファッション業界に復帰したトレリスは、長年のブランクを感じさせない研ぎ澄まされたセンスで作品づくりに励み、ほどなく自身のブランド「トレリス・クーパー」を立ち上げた。当初は「スモールビジネスを」と考えていたそうだが、以前の顧客の大半が戻ってきたこともあり、事業は瞬く間に軌道に乗り始めた。

「ニュージーランド・ファッションウイークをはじめ、国内外のファッションショーにも積極的に参加しました。その結果、世界各地のエージェントやスタイリストから引き合いがあり、海外での販売数が爆発的に伸びました」

 特に大きかったのは、全米有数の高級デパートであるニーマン・マーカスやサックス・フィフス・アベニューで商品が扱われるようになったこと。そうした百貨店にはメディア関係者も出入りしており、その縁でジュリア・ロバーツ、ミシェル・ファイファー、リーズ・ウィザースプーン、メグ・ライアン、シャロン・ストーンといったトップクラスのハリウッド・セレブが顧客リストに加わった。また、メルボルンで開催されたファッションショーの後、大ヒットドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』の専属スタイリスト、レベッカ・ウェインベルグがトレリスの服を山ほど抱えて会場を後にしたという逸話も残っている。2002年度のオスカー・ウイークの際には、アカデミー賞史上最年少の主演女優賞候補となったニュージーランド人女優ケイシャ・キャッスル=ヒューズが、トレリスのドレスを誇らしげにまとっていたことが業界の話題にのぼったという。

「さまざまな国の女性たちに私のブランドを認めてもらえるのは、この上なく名誉なことです。また、そのことでニュージーランドの服飾産業全体にいい影響があれば、なおうれしい。最近、この国のデザインはグングンよくなっていますからね。ストリートウエアからハイファッション、下着、水着、そして農作業着にいたるまで、おもしろいものがドンドン生まれています。いわば高度成長期の真っ只中にあるニュージーランドのファッション業界に身を置いているのは、非常にエキサイティングですね」

世界市場で支持されるグローバル・ブランドを目指す

 2006年、トレリスは新たなラインとして子供服の展開を開始。再開発されたニューマーケットのナッフィールド・ストリートに専門店を構えた。それに加え、昨年は初のファブリック・ショップを手懸け、今年後半には香水も発表するという。

「新しいことを始めるのはエネルギーが必要ですが、すごく楽しみでもあります。今、すでに9月のニュージーランド・ファッションウイークに向けての準備も進めていて多忙を極めていますが、大好きな仕事なので、全く苦になりません。私の信条は“女性を幸せにするファッションを生み出すこと”。そのためにはどうしたらいいか、常に思いをめぐらせています」

 国内外への出張も頻繁にこなすスーパー・ビジネス・ウーマン、トレリス。しかし忙しい日々の合間に友人と話したり、家族との時間を過ごしたり、映画やアートに触れたりすることで、アイディアの糧を得ているという。

「今シーズンのテーマは60年代の映画女優なんです。ブリジット・バルドーやソフィア・ローレン、エリザベス・テイラーといった一世を風靡したゴージャスなアクトレスたち。そして彼女たちの映画の背景もイメージに取り入れています。こんな風に、映画や小説などからヒントをもらうことが多々ありますが、旅先で刺激を受けることも多いですね。つい先日、日本への出張があったのですが、ちょうど桜が満開でね。ピンク一色の世界が幻想的で、ロマンティックでした。こうした旅のひとコマも、後々、デザインに活かされると思います」

 トレリスが次に目指すのは、世界各地に直営店を増やし、「トレリス・クーパー」をグローバル・ブランドへと成長させることだとか。ニュージーランドを代表するファッション・デザイナーは、世界市場にターゲットを絞り、さらに飛躍を遂げようとしている。

Text/グルービー美子(Media 4 New Zealand)
提供/ニュージーランドの歩き方

Trelise Cooper

とれりす・くーぱー●オークランド生まれ。幼少時よりファッションに興味を持ち、1980年代にオークランドのハイストリートにブティックをオープン。自身で服飾のデザインも始め、好評を博す。ウェリントンに2号店を開くが、1988年、育児に専念するため閉店。97年に再びファッション業界へ戻り、自らのブランド「トレリス・クーパー」を立ち上げる。ニュージーランド、オーストラリアに直営店を持つほか、アメリカやヨーロッパ諸国、シンガポールなどで商品を展開中。2002年にはトレード・ニュージーランド・エクスポート・アワードを受賞した。ジュリア・ロバーツ、リーズ・ウィザースプーンなど、ハリウッド女優の顧客も多い。
トレリス・クーパー オフィシャルサイト

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