
Interview vol.15
『LOTRロケーション・ガイドブック』著者
イアン・ブロディーさん
映画のロケ地に足を運ぶ世界中のLOTRファンのために
(Quarter 2004年夏号より)

『LOTRロケーション・ガイドブック』のアイデアは、どのように浮かんだのですか?
J・R・R・トールキンの原作『The Lord of the Rings(1954年イギリス、邦題:指輪物語)』を、ニュージーランド人のピーター・ジャクソン監督が映画化し、撮影もすべてニュージーランドで行うと聞いたのが1999年のことでした。興奮しましたね。というのも、初めて原作を読んだ14歳のときから、物語の舞台「ミドル・アース(中つ国)」がニュージーランドの南島に実在するのでは、と空想をめぐらせていたんです。子どものころに旅行で訪れた南島の雄大な自然風景の記憶は、私にとってミドル・アースそのものでした。それから30年以上、この一大ファンタジーの世界の虜です。世界中にいる多くのファンと同じように、毎年少なくとも一度は読み返しています。そうだ、また「あの旅」に出よう、と急に思い立つんです。トールキンの描く世界には、何度読んでも新たな発見があります。もう40回近くは読み返したことになりますね。
LOTRと同様に子どものころから夢中なのが、飛行機です。戦闘機ミュージアムの館長という今の職に就く前も、何かしら飛行機に関わる仕事をしてきました。現在では、各地で開かれる航空ショーの準備を手伝ったり、戦闘機についての本を出版する機会にも恵まれ、ニュージーランドの自然美を空から眺めることも度々です。
ピーターとの偶然の出会いは、飛行機が導いてくれたものでした。彼らが15カ月に及ぶ映画の撮影を終えた後、2001年4月に南島のブレナムで開かれた航空ショーで意気投合し、戦闘機について熱く語り合ったことを思い出します。そのときは映画については触れませんでしたが、直後にふと思いついたんです――もし映画が大ヒットしたら、実際のロケ地をこの目で見たいというLOTRのファンが、世界中からやって来るに違いない。全国のロケ地情報をまとめたガイドブックがあれば彼らの役に立つだろう、と。製作会社のニュー・ライン・シネマに連絡を取って広報担当者にアイデアを告げたところ、すぐにウェリントンに呼ばれて台本を渡され、6月にはハリウッドへ行って写真選び。あまりにもトントン拍子に話が進んで、自分でも驚くほどでした。1万2,000点にも上る候補写真の中から200点ほどを選ぶために、ハリウッドの高層ビルの一室で祖国の美しい風景写真を眺めているときは、まるで夢を見ているような不思議な感じがしました。
初版は18週間連続で国内売り上げ1位を記録、その後5カ月間でオーストラリアと合わせて7万5,000部という大変な売れ行きを見せました。空前のベストセラーが完成に至るまでのエピソードを教えてください。
当初は映画が未公開だった上、真冬の調査は難しかったため、実際に作成に取り掛かるまで少し待つことになりました。2001年の12月に第1部『The Fellowship of the Ring』を見るまで、映画の出来映えにわずかな不安があったことは否めません。何しろLOTRの原作は、これまで映像化不可能といわてきた壮大なファンタジーです。でも、そんな心配は無用でしたね。自分の想像どおりの世界が目の前に三次元で広がっていました。特に、エルフの王国「リヴェンデール(裂け谷)」や私の好きな登場人物、魔法使いガンダルフの描写は素晴らしかったです。公開直後から私の勤めているミュージアムにも、映画のロケ地を見にきたという外国人旅行者が訪れるようになり、自分の読みが当たったことを確信しました。
翌年2月、妻と二人の子どもと一緒に3週間かけて全国のロケ地を回りました。ヘリコプターでしか行けない、へき地でのロケもたくさん行われたので、LOTRファンのための特別遊覧飛行を企画していたヘリコプター会社と提携。そうした場所まで連れていってもらう代わりに、ツアー用の解説コメントを書いたりもしました。地図に載っていない場所に行くためには、人工衛星からの電波で自分の正確な位置を確かめるGPS(全地球測位システム)装置を使ったのですが、私が初めて原作を読んだときと同じ、14歳になる息子が作業を手伝ってくれました。トールキンはLOTR執筆に14年の歳月を費やしたといわれていますから、何だか感慨深い数字に思えてきますね。また、飛行機からの空撮は何度も経験していますし、実際に一般の人が見られるロケ地跡の写真も載せたいと思って、陸からも空からもたくさんの写真を撮りました。
LOTRの名前を出すだけで大勢の人が率先して協力してくれたため、調査は順調そのものだったといえます。あえて大変だったことを挙げるなら、当時はまだ第2部『The Two Towers(邦題:二つの塔)』を見る前だったので、ロケ現場やセット、演出などの詳細については、ハリウッドから借りてきた写真をもとに想像の範囲で執筆を進めなければならなかったということでしょうか。
初版の発売は2002年11月、第2部公開の直前でした。さすがにここまで売れるとは予測していなかったので、うれしい驚きとともに、映画のクオリティーの高さを改めて実感しました。
第3部『The Return of the King(邦題:王の帰還)』が国内では12月18日公開となりますが、今後このガイドブック、またLOTRに関連する予定があれば教えてください。
多くの新しい友人をはじめ、この本を手掛けたことによって得たものはたくさんありますが、中でも大変な名誉に思っているのは、公開に先立って12月1日にウェリントンで開かれる、ワールド・プレミアに招待されたことです。待ち望んでいた最終話をいち早く見られるというだけでなく、初版の制作時点から惜しみない協力をくれたピーターや、才能ある芸術家ヴィゴ・モーテンセン(俳優:アラゴルン役)、改訂版のためにコメントを書いてくれたWETA社(CG映像や各種の舞台装置、特殊メイクなどの視覚効果を担当)ディレクターのリチャード・テイラー氏、プロデューサーのバリー・M・オズボーン氏、トールキンの世界に通じた画家として舞台デザインに携わったアラン・リー氏との再会も楽しみです。
ワールド・プレミアの翌日は、日本からの特別ツアーに参加するLOTRファンに、ウェリントン周辺のロケ地を案内する予定です。今後もメディアなどを通じ、この映画に魅了された世界中の人々の役に立っていければ、と思っています。
『ロケーション・ガイドブック』は、2004年1月の日本での英語版発売をはじめ、これから世界各国で続々と出版が予定されています。国内では7月に大きなサイズのスペシャル卓上版が発売されることになっており、それにはさらに多くの映画関係者からのコメント、写真などを加えるつもりですので、楽しみにしていてください。(11月4日、ワナカのNZファイター・パイロット・ミュージアムにて)
住所:State Highway 6, Wanaka(ワナカ空港内)
Ph:03-443-7010
Website:http://www.nzfpm.co.nz
入場料:大人8ドル、子ども4ドル(家族、グループ割引あり)
開館時間:9:00〜16:00(12月27日〜1月27日は18:00まで)
休館日:クリスマス
Ian Brodie
いあん・ぶろでぃー●1957年8月25日、オークランド生まれ。1993年にオープンした「NZファイター・パイロット・ミュージアム」館長。戦闘機に関する著作は多く、航空写真家としても活躍している。2002年11月、映画『ロード・オブ・ザ・リング』のロケ地を網羅する公式ガイドブックを出版し、一躍ベストセラー作家となる。
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