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Interview vol.14

ラグビー選手
四宮 洋平さん
オールブラックスが常に自分の教科書でした

(Quarter 2003年春号より)

ラグビーとの出合いがオールブラックスとの出合いでもあった

学生時代から華々しい活躍を続けてきた四宮さんとラグビーとの出合いから、まずはお話しいただけますか。

 今では何よりもかけがえのない存在になっているラグビーというスポーツに初めて触れたのは、中学1年のときでした。ラグビーが盛んな高校の付属中学校だったということもあり、親しかった友人に誘われてラグビー部の練習を見学に行ったのがそもそものきっかけです。それまで経験してきたどのスポーツにもない面白さにあっという間に引き込まれ、それから僕のラグビー人生が始まりました。

 実はその当時から、ニュージーランドとは運命的ともいえそうな深い縁で結ばれていたんです。中学時代にお世話になった監督には、「日本の試合ではなく、オールブラックスなど海外のトップチームの試合を見て研究しなさい」といつも言われていました。ラグビーを始めた直後からオールブラックスの試合をテレビで見続けてきて、いつしか彼らのプレースタイルやゲーム運びなどが、僕にとっては教科書のような存在になっていきました。100年という歴史を重ねてなお、世界のトップを走り続ける彼らに対する強い憧れと尊敬の念は、いまだに変わっていません。

 初めてニュージーランドのチームと実際に試合をしたのは大学1年のとき。チーム合宿で南島のクライストチャーチを訪れ、地元の21歳以下の州選抜チームと交流試合を行いました。もちろん力の差は歴然としていたのですが、自分としては「海外でやれる」という初めての手応えをつかんだと同時に、「いつかはこの国でプレーしたい」という長年の夢を再認識したときでもありました。

 オールブラックスの元メンバーなどこの国のトッププレーヤーが引退後、日本でコーチや選手として活躍するというケースは結構多いんですよ。自分自身も学生時代からそういった本場での経験と知識を持つコーチ陣に指導を受けてきました。現在所属するヤマハの監督も、実は元オールブラックス選手なんです。「日本にいるほうがもっと活躍できるのに、なぜわざわざラグビーの本場でゼロから挑戦するのか」と疑問に思う人もいるようですが、ニュージーランドでラグビーをするということは自分にとっては自然な流れであり、何の疑いもないことなんです。

NZラグビーの強さの秘密はクラブチームにあり

ニュージーランドのラグビーは、そのシステムから国全体における存在意義まで、日本のラグビーとは大きく違う点が多々あると思いますが、両国のラグビーを一番近いところで見てきた中で感じたことをお聞かせください。

 ニュージーランドに滞在するたびに感じるのは、ラグビーというスポーツがいかにこの国に深く根差し、国民から愛されているかということです。日本のラグビーも実は100年近い歴史があるのですが、残念ながらその認知度や人気度は、いまだニュージーランドの足元にも及びません。野球やサッカーなどに比べてプロ化されたのが遅かったということもありますが、まずはワールドカップなどのひのき舞台で日本代表が好成績を収め、国民のラグビーに対する関心を高めることが重要ではないでしょうか。

 子どもたちが早い時期からラグビーに触れられるチャンスや、地域に最も根付いたクラブチームの充実度なども日本と大きく違う点です。ラグビーが国技のこの国では、オールブラックスを頂点とするラグビープレイヤーたちの活躍が国民の誇りにつながっています。そういう風潮の中で育つ子どもたちの憧れの対象もまた彼らであり、たくさんの子どもたちが小さなときからラグビーを始めます。各クラブチームには何と、5歳以下のチームまであるほど。さらに50代のチームや女性だけのチーム、体重85キロ以下の「Restricted」チームなど、ありとあらゆる年齢やレベルでラグビーを楽しめる環境が整っています。

 僕が所属していたクラブチームでも、一定の試合出場数に達したプレーヤーには記念にクラブオリジナルのブレザーが贈られるといった楽しいイベントがあり、皆それを目標の一つにしていました。花形選手だけでなく、入ったばかりの小さな子どもたちから将来有望な若手選手まで、分け隔てることなく所属メンバー全員を大切にする運営陣の姿勢が、“オールブラックス候補生”ともいえる若手選手たちとクラブ、さらに地域住民との絆を強め、それが最終的にはこの国のラグビーの強さにつながっているのだと思います。オールブラックスを頂点とするピラミッドの底辺で、クラブの優勝に貢献しようと日夜練習に励む若者たちが、大勢の候補者らにもまれながら切磋琢磨し、さらに上のNPC、スーパー12、そして国代表チームへの階段を上っていく――そんな気の遠くなるような道のりを経て選び抜かれた一握りの精鋭たちが、国民の期待と羨望を一身に受けて試合に臨むからこそ、この国のラグビーはこんなにも強いのではないでしょうか。

最も厳しいフィールドで自己の力を試したい

日本のラグビー評論家からも、「その類まれなるステップワークとスピードは、海外の一流選手相手でも充分に通用する」といわれてきた四宮選手。これからの夢や目標についてお聞かせください。

 ここ数年は、日本とニュージーランドを行ったり来たりという生活を続けています。巡ってきたチャンスを最大限に生かせるよういつでもフットワークは軽くしておきたいと、日本の所属チーム、ヤマハとも1年ごとの契約更新というスタイルを取っています。さらに、社会人トップリーグでの優勝に向けて自らの力をアップさせるためにも、年に半年は本場でラグビー漬けの生活を送ることを許してもらっています。

 今年の7月、所属していたオークランドのクラブチーム「シルバーデール」が、プレミアリーグの決勝戦で18年ぶりに優勝を決めたときは本当にうれしかったです。強豪「ノースショア」を25対23という僅差で下した瞬間、スタジアムに大歓声が巻き起こり、サポーターの熱心な応援があってこそ今回の勝利が実現したんだ、と実感しました。フィールドの上で仲間たちと抱き合い、ラグビーの素晴らしさを全身で感じた瞬間でした。

 現在は、地区代表チーム「ノースハーバー」のBチームというさらにワンランク上の舞台で活躍するチャンスを与えられ、充実した日々を送っています。いずれはAチームのレギュラーメンバーに選ばれ、最終的にはスーパー12に名を連ねるチームのどこかでプレーができたらと思っています。もともとが移民の国ということもあってか、ニュージーランドはイギリスなどと違い、チーム内の外国人選手数に関して特に規定がありません。実力さえあれば誰でも地元選手と同様の機会が与えられるのです。門戸が広ければ当然、全体のレベルも上がるわけで、決して楽な道のりではありませんが、だからこそ挑戦する価値があると僕は思っているんです。

 確かに、ある程度実力が認められた日本で今まで通りラグビーを続けていくことが一番スムーズなのでしょうし、活躍できるチャンスも多いことは分かっています。でも、そういうことに自分はあまり魅力を感じないんです。それよりも、全体のレベルや意識が最も高いフィールドに身を置き、自分の実力だけで勝負して上を目指すことのほうが大きな魅力とやりがいを感じます。

 5年ぐらい前までは、力で相手をねじふせる「パワーラグビー」が世界の主流でしたが、最近はより効果的な攻撃スタイルやタイミングを打ち出す戦術力、より専門的な技術力などが要求される方向に変わってきたと思います。体格や体力では諸外国の選手に太刀打ちできない日本人選手も、今後世界で活躍できるチャンスは大いにあると信じています。

 名声や高額のギャランティーを追い求めるよりも、ラグビーという素晴らしいスポーツを純粋に楽しめる環境で、生きがいのある毎日を送りたい――それが今の願いであり、これからの目標でもあります。

(2003年7月23日、オークランドのステイ先にて)

Youhei Shinomiya

しのみや・ようへい ●1978年12月8日、神奈川県生まれ。桐蔭学園高校3年時に初の花園出場を果たし、ベスト16に進出。関東学院大学時代もチームの原動力として活躍、同校を4年間で3度の大学日本一に導いた。卒業後は関西社会人リーグのヤマハ発動機に所属するかたわら、年に半年の割合でニュージーランドにラグビー留学。クラブチーム「Silverdale Rugby Football Club」プレミア、NPC「North Harbour」Bチームでも活躍。ポジションはウイング。個人スポンサーはPUMA。

この記事は「Quarter 2003年春号(Issue 14)」に掲載されたものです。記載されているデータ・情報は全て掲載時のものとなっております。予めご了承ください。

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