
Interview vol.12
オールブラックス選手
ダニー・リーさん
オールブラックスに選ばれるという究極の夢を実現
(Quarter 2003年秋号より)

これまで数々の国際試合で、ニュージーランド代表として活躍されてきたダニーさんにとって、ラグビーとはどんな存在ですか。
4歳でラグビーを始めてから、僕の人生の大部分は、ラグビーを中心に回ってきました。ニュージーランド代表として国際試合に初めて出場したのは、Under 16のメンバーに選ばれた16歳の時です。以来、ニュージーランド・ラグビー界の第一線でプレーしてこられたのは、本当に光栄なことだと思っています。
オールブラックスに選ばれる、というのは、物心付いたころからの夢で、1つのゴールでもありました。ニュージーランド人にとっては、まさに「究極の夢」ですよね。それが叶った今は、確かに僕のラグビー人生の頂点といえるでしょう。でも同時に、ここが新しいスタート地点でもあると思っているんです。今年10月に開催されるワールドカップに、オールブラックスのメンバーとして出場するためには、熾烈な競争を勝ち抜かなければなりません。オールブラックスのメンバーに「選ばれる」よりも、メンバーで「あり続ける」ことの方が難しいのです。
それから昨年、息子のコビー(写真)が生まれたことによって、今ここで自分の人生のために何をしておくべきか、ということが見えてきました。一生、第一線でプレーをして生計を立てていく、というわけにはいきませんから。「家族を養う」という責任感が、新たな活力を生み出してくれています。
ラグビーにまつわる思い出はたくさんありますが、ホークス・ベイの地元クラブチーム(ハブロック・ノース)でプレーをしていた子どものころ、真冬でも裸足で凍てついた地面を走っていたのを覚えています。ラグビーが好きで仕方なかったんです。
それから、今までのラグビー人生を振り返ってみると、さまざまな点で父の影響は大きかったと思います。彼も元ラグビー選手で、僕と同じポジション(ハーフバック)だったこともあります。最近は、Under 21のコーチを務めています。ハブロック・ノースに住む両親は、僕の試合をほとんどすべて見に来てくれます。僕がオールブラックスのメンバーに選ばれることは彼らの夢でもあったので、この朗報を知った時の彼らの興奮ぶりといったらありませんでした。
大好きなスポーツをし続けて、ついには両親と自分の夢を叶えられたというのは、本当に素晴らしいことです。それだけでなく、遠征などで訪れたさまざまな場所で、たくさんの素晴らしい人々に出会えたのも、すべてラグビーのおかげです。
ラグビーに関して、また普段の生活に関して、どんなことを重要視なさっていますか。
ラグビーに関して言えば、トレーニングの段階で、できるだけ多くのことを吸収するように心掛けています。どんどん新しいことに挑戦しつつ、いつでもすべてに100%の力を出し切れるようにしておく必要があるのです。「素人は、正しいことをするために練習する。一方、プロというのは、自分の選んだことに関して、絶対に間違えを犯さないよう練習する」という、10年ほど前に活躍していたクリケット選手、クリス・クーガーラインの言葉を心に留めています。そして、常に自分を省みることを忘れないようにしています。
あとは、「やればできる」という信念を持ち続けることが大切です。1つのことに対する「姿勢(attitude)」というのは、それに「献身(commitment)」し、「専念(dedication)」するのと同じくらい、大きな要素を持っていると思うんです。この3つがすべてそろった時、人は頂点に登り詰めることができるのではないでしょうか。
ラグビーの試合中は、とにかく「自分のスタイル」を崩さないよう、自分の行動に対して常に確信を持つことです。誰かほかの人のプレーをまねするというのは、僕にとっては非常に難しいことなんです。自分のスタイルでプレーして、それが運良く、その時チームが必要とするものであれば、試合に出られる。僕は、ボールのパスに関しては特に自信を持っていますが、パスだけでなく、キックやディフェンス・ラインの攻め方、チーム編成などにも全力を尽くすようにしています。もちろん試合中は「もっと走ろう」、「より多くの穴場を見つけよう」、「チームメイトとの連携を密にしよう」など、ほかのさまざまな気配りも必要とされます。昨年「ワイカト・チーフス」のキャプテンを務めたスーパー12の2試合は、その意味でも僕にとって非常に大きな経験となりました。
普段の生活に関しては「バランス感覚を保つ」ということが、とても大切だと思っています。いつでもラグビーだけ、なんていうのは駄目。勉強するにしても、仕事をするにしても同じことだと思いますが、「家族」という存在は、バランス感覚を保つのに大きな力を持っていますよね。だから僕は、自由な時間ができたら、なるべく家族と一緒に過ごすようにしているんです。今は息子が小さいので、妻と2人で育児にかかりきりですけれど。サーフィンやジェットスキーをはじめ、アウトドアスポーツは何でも好きなので、そういう趣味の時間も大切にしています。
とにかく何をするにしても、全力で挑戦すること、そしてそれを楽しむこと。それが僕の人生のモットーです。
将来的には日本でのプレーも視野にあるということですが、なぜ日本を候補地に選ばれたのですか。また、日本のラグビー界に対するご意見、ご要望などがあれば、今後の展望とともにお聞かせください。
日本でプレーしている友人が何人かいて、日本に対するとても良い評判を彼らから聞いています。個人的にも、ずっと日本に興味を持っているんですよ。昨年オールブラックスのメンバーに選ばれ、息子も生まれたばかりなのでかなり状況は変わりましたが、それ以前は、今年から株式会社ワールドに所属して日本でプレーするという可能性もあったんです。
とりあえず、今年10月のワールドカップにオールブラックスのメンバーとして出場することが、今の僕の目標です。あと2年は、この国で自分ができる限りのことをやっていくつもりです。ニュージーランド・ラグビー連盟と結んだ選手契約が切れる2年後、自分の立場や世界情勢がどうなっているのか、それにもよりますが、いつか海外の新しい環境でプレーしてみたいと、今までずっと希望してきました。
現在の候補地は、日本と英国です。家族のことも考えつつ、数年後に迎える決断の時、環境が良く、自分のプレーに対してより高い報酬を受けられる国へ行くことになるでしょう。何が起こるか分からない世の中ですから、今は何も断言できませんけれど。
とにかく今は、着実に一歩一歩を踏み出しながら、あらゆるチャンスを有効に利用しなくてはいけないと考えています。プロのラグビー選手として生活できるのは、本当に短い期間なんです。その間に精一杯の努力をして、引退後も家族を養っていけるように備えなければいけません。もちろん、オールブラックスのためなら無償で働いてもいい、というくらいの思い入れを持っていますし、ほかのチームメイトも皆同じ気持ちでしょう。でもその一方で、選手一人ひとりの「人生」というものもあるわけで、家族のために自分の将来を守ることは、スポーツ選手にとって大きな課題の1つです。
日本のラグビーは、着実に強くなってきていると聞いています。ニュージーランドのラグビーとは多少スタイルが違うようですが、僕が日本でプレーすることになったら、そうした違いにもチャレンジしていくつもりです。より広い世界を見て、新しい人々と出会うという点でも、素晴らしいチャンスになるでしょう。数年後に日本が良い環境に恵まれていて、僕たち家族を温かく迎え入れてくれることを、心から期待しています。
Danny Lee
だにー・りー●1976年3月1日、ヘイスティングス生まれ。昨年オールブラックスのメンバーに抜擢され、11月のデビュー戦以降2試合に出場し、1トライを上げる活躍を見せた。ポジションはハーフバック。現在ダニーデンに在住し、NPCでは「オタゴ」に在籍。スーパー12では、4年間所属していた「ワイカト・チーフス」を離れ、今年から「オタゴ・ハイランダーズ」に移籍。175センチ、80キロと、プロのラグビー選手としては小柄だが、その俊敏なパス回しには定評がある。
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