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Interview vol.6

折り紙アーティスト
スティーブン・パターソンさん
折り紙を通してよりよい未来を

(Quarter 2001年春号より)

無限の可能性を秘めた1枚の紙

 何がきっかけで日本の伝統文化である折り紙を始められたのでしょうか。そして、折り紙のどんな点が魅力的だったのでしょうか。

 8歳の頃、折り紙にまつわる話の載った『Rupert Bear Book』を母からもらったのが折り紙との初めての出合いですが、当時子供の私はそれが折り紙だなんて知るよしもありませんでした。それから4年後のある日見つけた、R・ハービンという折り紙アーティストによる“Origami”というテレビのシリーズ番組がきっかけで、折り紙を始めました。

 折り紙はただの正方形の紙から、単純に折っていくだけでありとあらゆる形のものが出来上がりますね。それが当時から私にとっては非常に魅力的だったのです。あるものがまったく別のものに変化してしまう美しさを折り紙は備えています。単なる四角い紙がカエル、昆虫やウサギに変身するわけです。まさに1枚の紙は無限の可能性を持っているのです。

 折り紙を折る時には必ずA地点からB地点に向かって折り進みます。決して、これぐらいかなといった「推測」が存在しないことも私が折り紙を気に入っている点です。折り紙アーティストは折り紙に対する独自のポリシーがあるもので、私の場合ははさみやのりなどを一切使用しません。これらなしに複雑なモデルを仕上げることこそが、私にとっての折り紙の醍醐味でもあり、美でもあるのです。

 “Origami”は大変人気が高かったため、番組終了時には本として出版されました。私はこの本を皮切りに折り紙に関する本を集め始め、母は機会があるごとに私に関連の本をプレゼントしてくれました。私は小さい時、ほかの子供たちと比べてのんびりしているところがありました。それでも、番組に出ていたR・ハービン以外誰にも教わらずに、本に載っているモデルをすべて折ることによって、自分で自分の良さを評価できました。

 その後1976年にブリティッシュ折り紙ソサエティーの会員になってからは、その会報のおかげで1989年までに折り紙に関する本のコレクションを150冊以上に拡大できました。今探しているのは広島で被爆し、千羽鶴を644羽折ったところで力尽きた佐々木貞子さんに関する本。この勇敢な少女の本がなければ私のコレクションは完璧にはなりません。

 こうして多くの本を読み進めると、日本の伝統文化として始まった折り紙が、ここ数十年のうちに世界的に展開し始めていると同時に、子供だけの遊びではなくなっていると痛感します。各国にある愛好会で折り紙に傾倒しているのは数学者、科学者、エンジニア、建築家といった大人が多いのです。私はこれらどの分野にも属しませんけどね(笑)。これらの職業にはデザイン面や数学的な面で折り紙と共通点があるからでしょう。これは折り紙がとても進化している証拠です。足が6本、触角が2本あるチョウや、振り子が動き、長針と短針がある上に、ハトが飛び出る八角形の時計のような複雑なものも1枚の紙から作れます。もっとも最初に私がトライした時は完成までに10時間かかりましたけれど(笑)。

子供にも大人にも折り紙の良さを理解してもらえる喜び

 最近の子供たちはコンピューターゲームにばかり没頭しているようですが、こんな時代でも折り紙は生き残っていくと思いますか。

 もちろんです。私は教会で子供たちに折り紙を教えていますが、彼らが折り紙を通して自分に自信を持ち始めているのが感じられます。彼らは集中できる時間がさほど長くないので、私が教えるのは易しく、伝統的なモデルが中心です。それでも5〜8歳の子供たちが8人も集まれば、折る速さや器用さに個人差が出てきます。速くできる子は次に行きたくてせかしますが、そんな時にはほかの子を待つという忍耐も一緒に教えています。私は忍耐は折り紙の美徳だと思っていますから。

 こんな風に子供たちに折り紙を教えることに私は情熱を感じています。彼らに作り方を教え、折り紙を通して自分で何かを成し遂げることの楽しさと満足感を与えられることは私の生きがいです。

 過去何年にもわたって行っているニュージーランドジャパンソサエティーのためのデモンストレーションは、国籍に関わらずとても好評です。昨年の40周年の際には朝の10時から夕方5時半まで、子供たちを教える機会をいただきました。日本人親子にも人気でしたが、本来折り紙文化の発祥地である日本人がその折り方を忘れてきていることに気付きましたね。これはちょっと残念なことです。ここニュージーランドでニュージーランド人の私が、日本人に折り紙を教えているなんて不思議です。私の知り合いの日本人女性も一時帰国した時に私と同じ危機感を感じたそうです。折り紙などの伝統的な遊びを覚えているのはわずかに子供たちの祖父母だけだそうです。私も多くの学校で教えているわけではないのではっきりは言えませんが、日本人の子供よりニュージーランド人の子供の方が折り紙に興味があるのではないかと思います。

 最近読んだ、『Russian Origami』に登場する折り紙アーティストには10歳児などの子供たちも含まれています。そんな子たちのプロフィールを見ると、折り紙を始める最初のきっかけは親が与えていることがほとんどです。ですから、日本でも親が先導を切って子供にこの伝統を教えられるといいのですが。将来、折り紙はその発祥国、日本でなく、ニュージーランドを含めた諸外国で生き残っていくのかもしれませんね。

 こうして子供たちに教える一方で、オークランドで日本の家具や小物を販売しているヒガシというショップのウインドー・デコレーションも手がけています。そのときどきによって作るモデルが違い、何を作ったか、もう覚え切れないほどです。昨年のクリスマスには小さな星をいっぱい作りましてね。これは売り物ではなかったにも関わらず、人気が高くぜひ購入したいというお客さんが数人いたのです。私は急きょ幾つかその人たちのために同じ星を作ってあげました。

 子供だけでなくこうして大人も折り紙に興味を持ってくれて、実際手に入れ、クリスマスツリーを飾ってくれていると思うと、とてもうれしいです。折り紙が、子供や大人に関わらずさまざまな人たちと自分を結び付けてくれているということを実感します。

死ぬ日まで情熱を持って折り紙に取り組み続けたい

 ここまで折り紙を極められているわけですが、ご自身のこれからの夢について教えてください。

 夢は折り紙を通して、子供たちの豊かな生活を実現することです。コンピューターゲームなどの悪影響のない世界を彼らのために作り上げられればと思います。子供たちの精神性を強くし、創造力を育み、何かを創り出したいという気持ちにさせてあげたいのです。折り紙が彼らの心に残り、次なるアートやクラフトの道に進むための手助けになればいいですね。近々オークランドにあるボーダース・ブックショップで土曜日に子供たちに折り紙を教える話もあります。これは1枚の紙がどんな可能性を持っているかをもっと多くの子供たちに教えることができる絶好のチャンスだと楽しみにしています。

 私自身については、ずっとずっとこの愛着のある趣味を続けていきたいと思います。死ぬ日まで私は折り続けますよ(笑)。折るモデルはまだ星の数ほどもあるのですから。複雑なものを作ろうとすることは自分を勇気づけるいいチャンスなのです。私は「自分でやり始めたものを完成させることができる」という信念と情熱を持って折り紙に挑戦してきましたし、これからも挑戦していきたいと思います。

 また、今後は子供たちだけでなく、お年寄りにも教えていきたいですね。指先を動かすことはご年配の方にとって非常にいいことですからね。老人ホームなどに声を掛けていこうと今、思案しているところです。

 複雑なモデルには自分が、そして簡単なモデルには子供たちやお年寄りが挑戦していけるといいと思います。ほかの人たちと1枚の紙を通してさまざまな経験をシェアできるというのは素晴らしいことなのですから。

(2001年6月21日、オークランド、ジャパンメディアクリエーションズのオフィスにて)

Stephen Paterson

すてぃーぶん・ぱたーそん●1959年5月9日、フィジーの首都スバ生まれ。8歳より折り紙の魅力に取り付かれ、以後30年以上にわたって折り紙を折り続ける。1976年から約13年間ブリティッシュ折り紙ソサエティーに所属。ニュージーランドジャパンソサエティーなどでデモンストレーションを行ったり、教会で子供たちの指導に当たるなど、オークランドを中心に活躍中。

この記事は「Quarter 2001年春号(Issue 6)」に掲載されたものです。記載されているデータ・情報は全て掲載時のものとなっております。予めご了承ください。

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