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Interview vol.3

裏千家茶道家
レスリー・マクリーンさん
茶道はユニバーサルなもの

(Quarter 2001年夏号より)

頭でなく心で理解した茶道の精神

 茶道に興味を抱いた理由、そして日本で茶道を学んだ3年間の話をお聞かせください。

 もともと日本のアート、習字、陶芸、彫刻、絵画などに興味がありました。初めて茶道に出合ったのは、オークランドの友人がそのころお茶を習っていたのがきっかけです。最初に体験した時には、とてもユニークで美しくリラックスした世界だと感動しました。私は以前あらゆる種類のお茶というもの―紅茶からハーブティーに至るまで―好きじゃなかったのですが、最初のお茶会で頂いた抹茶は「お茶だ」という観念がなくて、意外においしいものでした。正直言って、茶道というものが最初は頭では全然理解できなかったのですが、何と言いますか、心の深いところでその魅力にひかれたのだと思います。ですから、12年前に茶道を学ぶため日本へ行こうと決めた時でさえ、友人に聞かれても、その理由ははっきり答えられませんでした。

 京都の学校は、オークランドのお茶の先生がそこで勉強したことがあり、海外に向けて奨学制度を設けていたので応募しました。学校自体は日本人対象なのですが、インターナショナル部門の「みどり会」には世界約20カ国から約20人の生徒が在籍していました。

 日本での茶道の勉強は新しいことの連続で、特に正座と着物の着付けは今思い出しても笑ってしまうようなハプニング続きでした。正座は毎日何時間もしなければならず、ひざが腫れて整体に通ったこともありました。着物の着付けは最初は手伝ってもらって1時間半もかかりましたが、慣れると自分1人で15分くらいで着られるようになりました。が、初めて自分で着付けた時には、「手前しますか?(お茶をいれますか?)」と聞かれても、動くと着物がはだけてしまうのが分かっていたので断わざるを得ませんでした。授業は午前が英語での講義(茶道の歴史、日本の歴史、禅、生け花など)、午後が実習という内容で、実習はすべて日本語なので、基本的な日本語はすぐに覚えなくてはなりませんでした。

その国の茶道具を使って楽しむ方法

 茶道の魅力とは何でしょうか?ニュージーランドでも茶道を楽しむことができますか?

 3年間が終わって日本を去る時に家元が言いました。「日本の道具にこだわることはありません。自国に帰ったら、その国のカップやポットなど代用できるものを使ってお茶を続けなさい」と。茶道はスタイルではなくその心が重要で、ユニバーサルなものなのです。日本式のちゃんとした茶道具がそろわなくてもできます。一般的に、日本の茶道具や着物は高価だから、お金持ちの道楽だと決めつける人がいますが、そんなことはありません。道具を自分で作ることだってできるのです。私も見よう見まねで着物を作りました。

 ニュージーランドでだって、地球のどこでだって、茶道の世界を楽しむことができると思います。特に私はちょっと変わったところでお茶を楽しむのが好きで、例えば車の中や電車の中、森の中や海岸などのアウトドアへも簡単なお茶のセットを持って出かけます。

 また、お茶は1人でもできますし、たくさんのゲストを招いてもできます。フォーマル、インフォーマルとやり方はさまざまです。うちの主人などは、自分で中国茶を買ってきて、中国茶で自分流の茶道を発明したりしました。抹茶は難しそうだからって。

 そんなふうに、リラックスして、音に耳を傾け、香りを楽しんで、味わって、自然を感じて、人に感謝して、美しいものを愛でて、という「お茶を飲む」時間を忙しい日常生活の中から捻出する贅沢さ、それが茶道の魅力なのではないかと思います。お茶を飲むという行為だけを目的とするなら、茶道は退屈に感じるかもしれません。お茶を飲むだけならティーバッグ1つで十分事足りますからね。

 そんな茶道の魅力にひかれたキーウィの生徒が私の茶道教室に通っています。生徒は現在6名。最初は茶道に興味を持った人から教えてくれないかと持ちかけられ、その後は宣伝などをしなくても、口コミで生徒が集まるようになりました。

 生徒の1人、65歳の男性は、ドクターから血圧のために日中に最低1時間は休まなくてはいけないと言われ、茶道を始めました。お茶を楽しむ時間がこの1時間の休息時間にあたるわけです。彼は腰が悪いので正座をすることができませんが、イスに座って授業に参加しています。

 また、地元の学校などでも茶道のデモンストレーションを行いました。子供は正直ですから、お茶の味について「まずい〜」とはっきり言うのですが、それでも全員が好奇心むき出しで試してくれたことはうれしかったです。

 やはりキーウィにとって、抹茶の味は抵抗があるかもしれませんが、最初は好きでなくてもだんだん好きになる人が多いですね。もちろん最初から好きな人もいますが。

 お茶会に間違いや失敗というものはないと思います。だから、もし初めての人が間違った方法をとったとしても、私はあえてその間違いを正そうとは思いません。作法がわからなくてもゲストとしてお茶会に参加してみてください。きっとその楽しさがわかるはずです。日本へ行ったことがなくても、茶道を体験すれば、日本の一部分が見えてくるはずです。

茶道の「一期一会」を大切に

 茶道を通じて皆さんに伝えたいことは何でしょうか。また、茶道に対する夢や目標などを教えて下さい。

 私の77歳の日本人師匠は、6歳からお茶をたしなんできた人です。今では手前を行うのがまるで彼の体の一部の動きになっているようで、ダンスをしているように美しい手前を披露するお師匠さんでした。ある日彼が私のお客として座りました。彼は大ベテランですから、彼の前で私は緊張でカチンコチンになりました。失敗したらいけない、きっと彼にしかられるだろう。ところが、不思議なことに、私の緊張は次第に緩んで行ったのです。理由はそのお師匠さんでした。彼は師匠であるとともに、私を理解し、許容してくれる最高のお客でもあったのです。

 「一期一会」という言葉がありますが、私は茶道の世界を通じて、人と人との出会い、その時その時の出会いを大切にしたいと思っています。1つのお茶会でも、まったく同じお茶会などというものは存在しません。お客様、茶道具、お茶の味など、その都度違っています。同じ時間、空間をさまざまな人と共有できる「お茶会」を大切にしたいと思っています。

 今年、アメリカのサンタフェで海外茶道家会議があり、私も参加しました。そこでは海外でどのように茶道を行えばいいのか、どのように茶道を教えればいいのかということについてのディスカッションが行われました。そこで、世界中のあらゆる地域で、さまざまな形で茶道が行われていることを知って感動しました。

 この会議がきっかけにもなったのですが、海外での茶道の活動を本にまとめた『Tea-outside of Japan』という本を書けたらいいなと思っています。この本は、各国でどんな茶道具を使って、どのような方法で茶会が行われたのかを紹介する、世界中の茶道に関する記録本です。世界中の茶道家に取材をして、その記録を残せればいいなと思っています。あと10年ぐらいはかかるかしら?

 また、ニュージーランドで作られた茶道具として使える焼き物を集めたいですね。ゆくゆくは自分でニュージーランドらしい茶道具も作ってみたいです。現在、自宅の居間に簡単な茶室があるのですが、どこにでも移動可能な「ポータブル茶室」を作ることも夢の1つです。

(2000年9月28日、クライストチャーチ、ヴィクトリアスクエアにて。文/写真 ヤスコ・イーディ)

Lesley Maclean

れすりー・まくりーん●1962年9月29日生まれ。38歳。カナダ出身。ニュージーランド人の両親と10歳までカナダで暮らした後、ニュージーランドへ。1989年から3年間京都の裏千家学園茶道専門学校のインターナショナル部「みどり会」で茶道を学ぶ。その後6年間アメリカで茶道を教え、3年前よりクライストチャーチで茶道教室を始める。本職はグラフィックデザイナー。

この記事は「Quarter 2001年夏号(Issue 3)」に掲載されたものです。記載されているデータ・情報は全て掲載時のものとなっております。予めご了承ください。

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