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マオリ特集
Waiho i te toipoto, kaua i te toiroa
―どうか私たちをお互い隔てることなく、ともに歩ませてください―

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Taonga
マオリの至宝

 充実した文化芸術はマオリの「宝」と言える。歴史的に見て、彼らは自分の創り出したものを「美術」、「工芸」、「文化」といった区分に分けることをしなかった。つまり、今は「芸術」として鑑賞されるものも、以前は実用目的で創られたものだった。例えば、釣り針や斧などの日用品、トコトコ(神が宿るとされるつえ)などの儀式のためのものはそのまま芸術品でもあった。

 また、人間の手によって創られたものは「生きているもの」と見なされた。祖先の姿が彫られた柱などは単なる「柱」である以前に、祖先自身だと考えられている。

 こうした観念を背景に、文字を持たなかったマオリは、代わりにファカイロ(カービング)、ラランガ(ウィービング)、モコ(入れ墨)、ワイアタ(歌)、ハカ(ダンス)などを通して、次の世代に文化を伝承していった。

大きな作品にはワカ、ファレヌイの柱などがある
©The New Zealand Maori Arts & Crafts Institute

Whakairo
カービング

 祖先、歴史、神話、伝説に敬意を払ったマオリ・カービングはそのまれに見る美しさで有名だ。ワカ、マラエにあるファレヌイ(集会所)の柱など、至るところでそれを見ることができる。
 基本的なパターンは太平洋の中央部から最初の移住者とともにもたらされたものと考えられるが、専門家によってはそれはもっと歴史的にさかのぼる上、インドやメラネシアといったもっと遠くに端を発しているものだとする。マオリ・カービングの特徴は何世紀にも渡ってこの国がほかのポリネシアから隔てられていたために育まれたものと言えるだろう。さらには豊富なカウリやトタラといった原産の木々がカービングなどの格好の材料として存在していた上、ポウナム(グリーンストーン)の産出もあり、優れた切れ味を持つノミを作ることも可能だった。当時カービングに使用されていた道具は石製の斧とノミだった。
 ヨーロッパ人の到来とともに入ってきた鉄製の道具によって、マオリ・カービングは新しい時代を迎えた。これら鉄製の道具を使うことにより、家屋、ワカ、墓などはより一層手の込んだ彫刻が施されるようになった。
 マオリ・カービングで最も多いのはさまざまな姿をした人間をモチーフにしたものだ。突き出した舌、パウア(アワビ)をはめ込んだ目を持つ正面からの顔や「マナイア」と呼ばれるゆがんだ横顔(時には鳥のような形でも表現される)はよく見られる。この「マナイア」に代表されるモチーフは遠くはイースター島までを含む初期のポリネシア社会との関係を示唆している。一方で曲線、輪、らせんはポリネシアでは見ることのできないマオリならではの伝統的な幾何学モチーフで、それぞれ分類され、名称も付けられている。
 カービングは男性の仕事だったため、マオリ土地戦争のぼっ発とともに才能ある職人が死んでしまったり、今まであったものの維持保存が難しくなり、多くの傑出した作品は国外に流出してしまったりとその文化は衰微するかに見えた。しかし、20世紀に入ってからはロトルアのファカレワレワにあるニュージーランド・マオリ・アーツ&クラフツ・インスティテュート(P.10参照)の創設により、その伝統を絶やすことなく、現在に伝えている。


根気よく編んでいくと、美しいケテができあがる
©Aotearoa Maori Tourism Federation

Raranga
ウィービング

 移住してきたポリネシア人たちの故郷に比べ、アオテアロアは寒く雨が多かったため、衣服を着る必要があった。彼らには機織り機がなかったので、魚を捕獲するわなを作る時のロープを結び合わせる技術を利用し、衣服を作った。材料は豊富に生えていたハラケケ(亜麻)やティ・コウカ(ヤシの一種。俗名キャベッジ・ツリー)だった。
 現在の私たちにもなじみが深いのはケテ(バスケット)やファリキ(マット)。叩いて細片にした亜麻を斜め45度に持ち、端から始め、右から左に編んでいくのが一般的。沼地の泥で染めた黒の細片と亜麻そのままの黄褐色の細片、漂白した白っぽい細片を使い、交互にそれらの色が表に出るようにして幾何学模様を作り出す。
 彼らはお互いを少し離して地面に突き刺した一対の棒を使ってマントなども編んだ。生地の横糸として亜麻の細片を棒と棒の間に張る。そして今度は縦糸を横糸の手前、向こう側という風に交互に通していった。中でも飾り付きのものは権力者が着用した。
 マントの縁飾りに施されていたのが「タニコ」と呼ばれるウィービング。これはマオリのパフォーマンスなどでの女性たちの衣装、ヘアバンドにも見られるものだ。三角、ジグザグ、ひし形の模様が特徴的で、赤、オレンジ、黄色は野菜の染料で、黒はやはり沼地の泥で染められていた。
 マラエにあるファレヌイのインテリアを飾るのがトゥクトゥク(装飾パネル)で、これも編まれたものだ。たくさんの木などの枝を割ったものに亜麻や草を手前に通したり、向こう側に通したりしていろいろなパターンを作り上げた。パターンにはそれぞれ名称と意味、象徴しているものがある。


ヨーロッパ人にとって、マオリの入れ墨はもの珍しかった
The head of a Chief of New Zealand, the face curiously tataowd, or mark'd according to their manner.
Reference Number: PUBL-0037-16
Alexander Turnbull Library, National Library of New Zealand, Te Puna Matauranga o Aotearoa

Moko
入れ墨

 入れ墨の文化を持つ私たち日本人でも、顔に施すマオリのモコ(入れ墨)には驚かされるもの。マオリにとっての入れ墨は神話に基づく彼らの過去とのつながりや、彼らの祖先の特徴を物語るものと言われている。さらにこれは各自の部族の祖先と霊的に交わるためのものとも解釈される。そのデザインは各地域の神の像に施されたカービングのパターンを模倣していると言われ、入れ墨が自分の家族の起源、強いては地域上、歴史上の一族の情報を記録しているとされる。入れ墨のパターンはらせんが主流で、男性は顔や臀部(でんぶ)からももにかけて、女性はあご、唇、鼻孔と限られた体の部分に施されるのが普通だった。
 入れ墨は槌(つち)とノミを使って行われたため、その痛みは並大抵のものではなかった。特に顔への入れ墨をしてもらっている最中には腫れも伴うため、流動食しか取れなかったという。ノミには大きく分けて2種類あり、1つは皮膚を切り開くため、もう1つは刻みをつけるためのものだった。まずパターンを皮膚の上に描き、それをノミで切り開き、さらにもう一方のノミで刻みをつけ、顔料を入れていった。長い直線には幅の広い2種類のノミ、曲線には幅の狭い2種類のノミを使った。顔料はカヒカテア(マツ科の常緑針葉樹)の木の樹脂、もしくはカウリガムを燃やしてできるススを利用していた。
 マオリ土地戦争の終結後、キリスト教の伝道師の影響もあり、入れ墨の習慣は廃れ、1860年代後半には男性の入れ墨はほとんど行われなくなった。それと反対に女性の入れ墨は盛んになった。現在では槌とノミはほとんど使用されていないが、ランギ・スキッパー氏などは今でも昔ならではの道具を使用して入れ墨を施すことのできる貴重な彫り師だ。


ワイヒレレはフェスティバルで過去4回の優勝を収めているグループ
©Aotearoa Maori Tourism Federation

Haka
ダンス

 「ハカ」は「マオリのダンス」を総称する言葉で、昔はコミュニティ内の娯楽の1つだった。種類は多くあるが、ここでは、ワイアタ・コリ(アクション・ソング)とハカ・ポイ(ポイを使ったダンス)を紹介しよう。
 ワイアタ・コリは、振り付きでゆっくりとしたソフトな歌が歌われるハカ・ワイアタが発展したもの。これが確立したのは比較的最近で、第一次世界大戦の頃と言われ、マオリ青年党党首アピラナ・ナタ卿が普及に尽力した。現在私たちが目にするパフォーマンスの多くがこれだ。
 一方、ハカ・ポイはひもの先に丸いボールの付いた「ポイ」を使う優雅なダンスだ。昔はひもが長いポイのダンスは上流階級の女性のみが踊ることを許された。ボールの部分はガマの種子の冠毛を詰め、亜麻で編んで覆った。中には「タニコ」などの装飾が施されたものもあった。ポイはそれ全体を男根と見なしたり、ボールを女性の卵巣、ひもを輸卵管ととらえたりして、多産を意味すると言われている。
 ほかの文化同様、マオリ文化も「目」をその人の魂の窓と見なすため、ハカでは目をぎょろつかせるしぐさ「プカナ」を男女両方が行う。また、「フェテロ(舌を突き出す動作)」は男性が行う動作。舌は相手にその人の考えを伝える手段と考えられている。ファレヌイなどにある舌を突き出した男性像にもこの考え方は通じている。もう1つの特徴は「カカパ」、または「ウィリ」で手を水平に震わせる動作。鍛錬した踊り手だけが見せられる独特の動きだ。
 ハカの大家であるナティ・ポロウ族のヒナレ・テオワイ氏は、ハカは「全身でストーリーを語るもの」と言った。その精神は現在でもアオテアロア・トラディショナル・マオリ・パフォーミング・フェスティバル(P.10参照)に受け継がれている。


知っていると便利なマオリ語いろいろ

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この記事は「Quarter 2000年春号(Issue )2」に掲載されたものです。記載されているデータ・情報は全て掲載時のものとなっております。予めご了承ください。

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