
Pounamuの話
ニュージーランドの街を歩くと多くの人々の胸をさまざまな形をした緑色の美しい石が飾られているのを見かけます。とてもポピュラーなグリーンストーンですが、知らないことが多いのも事実。あなたの胸のグリーンストーンはどんな力を持っているかご存じですか?
(Quarter 2000冬号より)
Photos by Skycity Auckland
私たちが「グリーンストーン」と英語で言っている石はマオリ語で「Pounamu(ポウナム)」といいます。ポウナムはカルシウム、マグネシウム、珪酸、鉄の化合物で、簡単にいうと「ひすい」の中の「軟玉(ネフライト)」です。世界の何カ所かで同様の軟玉が産出されていますが、ニュージーランドのものは高い透明度を持ち、なおかつその緑色に深みがあることで有名です。
これをマオリの人たちが使い始めたのは12世紀ごろといわれ、早くから鉄と同等の硬さを持つという特質に気付き、斧の材料や道具類、装身具として使用していました。現在キーウィたちが身に付けているのは当時からの歴史ある装身具といえそうです。
ポウナムの産地はすべて南島で、ネルソン、ウエストランド、サウス・ウエストランド、ワカティプ、ワナカ、リビングストンといったエリアです。南島をマオリ語で「Te Waipounamu(グリーンストーン)」と呼ぶのはこのためです。この産地のほとんどがアルプス構造線上に当たり、南アルプスの氷河で浸食された川底からポウナムは発見されています。表面はほかの石と見分けにくいため、見つけるのは至難の技です。しかし、この石を求めてマオリの人たちは危険を顧みず未開の地へと足を踏み入れて行きました。それほど彼らにとっては貴重なものだったのです。
簡単にいってしまうとただの「軟玉」のポウナムですが、果たしてそれを発見した当時の、そして現代のマオリの人たちにとってはどうなのでしょうか。
どの時代に生きるマオリの人たちにとっても、ポウナムは物質的にも、精神的にも「聖なる石」だと言えるでしょう。ポウナムの斧があったからこそ、木を切り倒し、道具を作り、日々暮らすことができました。と同時に彼らはそれを身に付ける人自身の霊力、そしてそれを過去に所有していた人の霊力をポウナムは吸収し、保ち続けると信じています。先ほども触れましたが、この石は、過去には命を落としても不思議はない大変な道のりの末にやっと発見できるか、できないかという代物で、それを探し出す忍耐と勇気、そしてそれを細工する技術もその石の評価に含まれているのです。
ですから、マオリの人たちが身に付けているポウナムには彼ら独特の特別な意味があります。先祖代々受け継がれてきた貴重なものもあるでしょう。マオリ以外の人にとってもきっと自分に何らかの力を与えてくれるものとして認識し、大切にしているのではないでしょうか。
マオリの伝説にはいくつかポウナムに関するエピソードがあります。ここでは、その中の1つ、ポウナムがどうしてできたかという話を紹介しましょう。
南島のウエストコーストには海を回遊するポウティニという名前のタニファ(水棲の怪物)がいました。ポウナムの霊的な力はカフエ(またはナフエ)という神から来るもので、ポウティニはカフエに仕えていました。彼の唯一の敵は砂岩の神、ヒネホアカに仕えるファティプというタニファでした。ファティプがなぜ敵かというと、砂岩のナイフでのみ固いポウナムを切ることができたからです。
ある時、ポウティニはファティプに追われ、トゥフア(マイヤー島)に避難しました。彼はそこへちょうど水浴びに来た美しい女性、ワイタイキに心を奪われ、ファティプに見つかる恐れがあるにもかかわらず彼女を誘拐し、南島に向かいます。
ワイタイキの夫、タマアフアは自分の妻が誘拐されたことに気付き、北島から南島にポウティニを追いかけます。どうしてもワイタイキを自分のものにしておきたかったポウティニはアラフラ川の主流のすぐ近くで、彼女を自らの霊―ポウナムに姿を変えさせ、自分は川を下り、海に逃げました。ポウナムに姿を変えたワイタイキはすべてのポウナムの「母なる源」となったのでした。それを知った夫のタマアフアは北島に戻り、嘆き悲しんだといいます。
それ以来ポウティニはウエストコーストの沿岸をその土地とワイタイキのポウナムの守護霊として回遊しています。この海岸は「テ・タイ・ポウティニ(ポウティニの潮)」と呼ばれ、ワイタイキのポウナムがあるといわれるアラフラ川の支流は「ワイタイキ」と呼ばれるようになりました。
ポウナムと一言でいってもその種類にはいくつかあります。マオリの人たちは薄緑色のものに価値を見いだし、初期のパケハは深い緑色のものが好みだったようです。
イナンガ
乳白色、ライト・グレー、または青みがかった緑色の石で、マオリの人たちが最も好むもの。先の神話でワイタイキが変身させられたのもこの種類。
カフランギ 明るく、透明感のあるアップル・グリーン。混入物がないため、貴重なものとされている。
カワカワ
濃い深みのある緑色で、黒い斑点がある。
タンギワイ
オリーブ・グリーン、青みがかった緑色。
アウハンガ
淡い緑色。
カハテア
黒の斑点や黄色がかったしまの入ったダーク・グリーン。
ココプ
別名「マス石」。ニュージーランド原産のマスの体の色と同様の色合いなので、こう呼ばれており、ダーク・ブラウン、オリーブ・グリーン、黄色がかったものがある。
ラウカラカ
オリーブ色に黄色がかった影の入ったもの。
トトウェカ
「ウェカ(ニュージーランド原生の飛べない鳥)の血」という意味。小さな赤い斑点のある緑色の石。さび色のものもあり、とても珍しい。
ポウナムは鉄と同じぐらい固いといわれています。加工するために、ダイヤモンドの先端が付いたハイスピードのドリルを使用し、器具の加熱を防ぐために、必ず水を用いて作業を行います。現在でこそ、この方法がありますが、昔はポウナムを加工するのは困難を極めました。そのせいもあって、ポウナムは貴重なものと考えられていたわけです。
人々の胸を飾るポウナムの形にはそれぞれ意味が込められています。
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| ヘイ・マタウ 釣り針の形。マオリの伝説には、マウイ(伝説上の重要人物)が自分の祖母のアゴの骨で作った釣り針でニュージーランドの北島を釣り上げたという話がある。漁師は釣り針に敬意を払い、自らの霊力と見ていた。今では、平和、繁栄と健康をもたらし、決断力を表すものとされている。海上の旅行の安全を守るともいわれる。 |
クジラの尾ビレ クジラの尾ビレの形はその人の霊力、強さを表す。昔、漁師の最も名誉ある仕事は捕鯨だった。現在、ニュージーランドでは捕鯨は禁止されているが、依然としてクジラの強い精神力は尊敬の対象となっている。 |
インフィニティ 無限大の記号の形。無限、そしてそこから派生して永遠という意味を持つ。このデザインは比較的新しいもの。 |
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| ヘイ・ティキ 胎児の形。マオリ伝説では、ティキはそれを身に付けている人の霊力を保持するとされている。先祖、守護者としてその人を守ることから幸運をもたらすものとされている。 |
コル らせん形。ニュージーランド原生のパンガシダの新しい葉が形作る渦巻き形をイメージ。この形はマオリ芸術に多く見られる。肉体的、精神的な成長、新しい始まり、調和を意味する。 |
トリプル・ツイスト 3つのねじれの形。比較的新しいデザインで、友情の絆を表す。2つの命がお互い絡まりあい、永遠に1つになる様子を型取っている。 |

取材協力
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住所:58 Queen St.,Auckland
Ph:09-379-3739
営業時間:9:30〜17:30(月〜土)、12:00〜17:00(日)
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