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覚えておきたいニュージーランド人アーティスト3人

ヨーロッパ芸術については美術の授業で習っても、さすがにニュージーランド・アートについては教えてくれない。美術館に行っても、アーティストやその作品について知っているのと、知らないのでは大違い。アート・ファンではない人もこのアーティストの名前ぐらいは知っていてほしい――そんな国内で実績のあるアーティスト3人をここに紹介しよう。

McCahon, Colin
Tomorrow will be the same but not as this is Collection of the Robert McDougall Art Gallery, presented by a group of subscribers, 1962
Reproduced courtesy of the Colin McCahon Research and Publication Trust

この国で最も偉大な画家
Colin McCahon

 コリン・マッカン(1919-1987)は疑いようもなく、ニュージーランドで最も尊敬され、愛されている画家。写実画、抽象画の両方を手がけ、1960年代に一世を風靡したポップ・アートよりはるか以前から、文章を作品の中に取り入れてきたことでつとに有名だ。実践的なキリスト教徒ではなかったものの、常に彼の作品には宗教的なテーマが見て取れる。初期には聖書に登場する出来事を単純化して表現したことに対して、また後年には、例えば1970年に描かれた縦約2メートル、横約6メートルの“Victory over Death 2”に文章を書き、‘I AM’という縦2メートルの文字を組み込んだことに対して批判を浴び、論議は彼が生涯を閉じるまで続いた。
 ここに紹介する“Tomorrow will be the same but not as this is”では、マッカン自身が哲学的な精神状態であることが見て取れる。ここに描かれる風景(風景は彼の好きなモチーフ)の線形は攻撃的とさえ感じられるほど単純化されており、画面左上部分はライフルを表していると思われるものに刺し貫かれている。これは、明らかに人間の自然環境に対する“脅迫”を表している。画面最下部に刻まれたタイトル、“Tomorrow will be the same but not as this is(明日になっても変わらないものもあるが、今とまったく同じということはない)”は私たちの目前に横たわる大自然の永続性とともに、それに対する人間による“脅迫”もこの先続いていくことを示唆している。
 この作品はクライストチャーチのRobert McDougall Art Gallery(P.8)で鑑賞できる。

Ralph Hotere
Aramoana
1982
Auckland Art Gallery Toi o Tamaki, presented by the Transfield Corporation, 1985

“光”を巧みに操る名匠
Ralph Hotere

 ラルフ・ホテレは現在でも活躍中の、ニュージーランドで最も有名な画家と言っても過言ではない。1931年にノースランド地方でマオリのアウポウリ族として生まれ、1961年よりCentral School of Art Londonで本格的にアートの勉強を始めた。1965年ニュージーランドに帰国した直後はオークランドを拠点とするが、F・ホジキンス・フェローシップ生として、1969年にダニーデンに移る。
 彼の主な作品は抽象画だ。時に磨いたアルミニウムの上にラッカーで絵を描き、部分的にはその上からさらに磨くという手法を取った。“光と闇”というテーマはどの時期の作品にも一貫して見られると同時に、スケールの大きなインスタレーションを作成するために仲間の彫刻家や写真家、詩人と合作することもある。また、しばしば政治的なメッセージが画面に登場する。
 “Aramoana 1982”では、力強くスプレーがかけられ、ハネが飛んだ白いラッカーのラインとともに光の凝縮が、黒っぽいアース・カラーの何重もの層の上に大変力強く描かれている。“アラモアナ”はダニーデン近郊にある町の名前。海岸に近く、美しい自然の残るこの町にアルミニウム製錬所が造られることになった。この作品はそれに抗議するため、あえて材料としてアルミニウムを用い、一番右上には“VIVE ARAMOANA”、つまり“アラモアナよ、生きよ”とのメッセージが入っている。
 この作品はオークランドのAuckland Art Gallery - Toi o Tamaki(P.6)で鑑賞できる。

Hodgkins, Frances Mary
Self Portrait: still life - 1941
oil on cardboard
Auckland City Art Gallery collection, purchased 1963

英国で成功を収めた女流画家
Frances Hodgkins

 フランシス・ホジキンス(1869-1947)はダニーデンに生まれ、大人になってからのほとんどの年月を英国で過ごし、ドーセット州でその生涯を閉じた。夜9時のBBCワールド・ニュースでその死が伝えられたニュージーランド・アーティストは、その放送史上彼女だけであることからも、ニュージーランドのみならず、ヨーロッパでもその実績が評価されていたことがうかがえる。
 ホジキンスは1920、1930年代のアバンギャルド・アーティストの中でも、大変重要なポジションを占めている。彼女は常に人々、静物、風景を写実的に描き続けてきた。彼女はものの形をかっちりと描くのではなく、溶けているかのように表現することに成功し、その表現は人々の心をとらえた。サイズは決して大きくなかったが、その作品は時には肯定的、また時には否定的になった人間の精神状態や、また詩を伝えようとしている。
 “Self Portrait: still life”で、ホジキンスは静物画に描かれるものを溶けたように表現すると同時に、“セルフ・ポートレート(自画像)”という固定観念すらも“溶かし”ており、そのためセルフ・ポートレートでありながら、彼女自身の姿は描かれていない。その代わり靴、たくさんのスカーフ、バラなどにより彼女自身、そしてフェミニズムを隠喩している。こういった技法はヨーロッパ絵画の影響を吸収し、それを完全に自分のものとしていたからこそできたのだろう。
 この作品はオークランドのAuckland Art Gallery - Toi o Tamaki(P.6)で鑑賞できる。

この記事は「Quarter 2001年秋号(Issue 4)」に掲載されたものです。記載されているデータ・情報は全て掲載時のものとなっております。予めご了承ください。

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