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海へ!
Sea Kayaking 「シーカヤックで海遊び」
四方を海で囲まれたニュージーランドでは、国内の至るところで美しい海やビーチの光景に出合うことができる。サーフィンに適した波、自然美を堪能できるビーチ、そして深海に潜む無数の生物たち。海の持つ魅力は計り知れない。サーフィン、ダイビング、シーカヤックー ニュージーランドの海に魅せられた者たちはそれぞれの方法で母なる海と一体になろうとする。あなたもその一人になれる。海がそこにある限り。
(Quarter 2004夏号より)
Text by Ryu H. Takahashi

©Tourism NZ
NZの海は美しい。もちろん日本にも美しい海はたくさん残っているが、残念なことにアクセスが困難。気軽に行ける海は、コンクリートとゴミと人ごみだらけだ。ところがNZは首都の海でさえ驚くほどの透明度なのだから、各地の国立公園や海洋公園の美しさはいわずもがな。これを楽しまない手はない。とはいえNZの海は冷たく、海水浴にはチトつらい。では、どうやって遊ぼうか? 貝殻やきれいな石ころを拾う? 昼寝? 散歩?それもいいだろう。でもせっかくなら、ビーチからもう一歩踏み出して、水とダイレクトにたわむれてみるのはどうだろう?
ならばシーカヤックがぴったりだ。日本のシーカヤッカーたちは、いつも「人工物が見えなくて、自分の艇の影が海底に映るような海で漕ぎたい」と願っているが、もちろんNZなら簡単な話だ。その上、この国には世界最高峰といわれるシーカヤック・ゲレンデがあると聞けば、やらないわけにはいかないではないか。

©Wilson's Abel Tasman Enterprises
カヤックは、もともとイヌイットらが北極圏でアザラシ漁などに使っていた艇。いくらNZの海が冷たいとはいえ、北極海よりはずっと温かい。カヤックで遊ぶのにこの国はうってつけの気候なのだ。
カヤックは、一本の棒の両端に板がついたパドルという道具で、前を向いて漕ぐ。初心者でもすぐに漕げるようになるが、全身運動なので体力はある程度必要だ。
近年は川用のリバーカヤックがメジャーだが、川では機敏さが優先されるため、リバーカヤックは全長が年々短くなり、まっすぐ進むのが難しくなってきている。それに比べ、シーカヤックはオリジナル通りの積載性やスピードに優れた特性を継承している。また、艇自体が大きく、荒れた水面にも強いため、初心者にとってはシーカヤックの方が向いている(もちろんベテランにとっては、この限りではない)。つまり、気軽な観光や旅の相棒としては、シーカヤックの方が適任だ。
プカプカ浮かんで「水と戯れる」ということ自体も、素晴らしい快感だ。カヤックに乗ると、水面に座っているような目線になる。この高さで水面を眺めていると、焚き火の前に座っているときのように「1/fのゆらぎ」の気持ちよさが体に染みわたる。波の揺れも、ハンモックとそっくりの安らぎをもたらしてくれる。もちろん海に道はない。人と同じ道を歩むのを嫌う独立心旺盛な人には、爽快なことこの上ないだろう。もちろん、一方通行を余儀なくさせられる川よりも、海の方が自由度がずっと高い。

©Ryu H. Takahashi
NZの海は美しい。だから、当然トゲもある。ご存知の通り、NZの天候は非常に変化が早いが、海上の天候変化はそれ以上だ。山で天候が崩れたら、無理せず天候回復を待つのが鉄則だが、悪天候の海上で止まるのは、死を意味する。つまり、シーカヤッキングにはトランピングの何倍も下準備や技術が必要なのだ。
だから、初挑戦や初心者の方は、ぜひともプロガイドに遊びに連れて行ってもらってください。NZのシーカヤック・ツアーは国内外を問わず旅行者に人気があり、総じてガイドのレベルも非常に高い。安全を約束してくれるのはもちろん、おいしい見どころを効率よく案内してくれるし、キーウィ独特のサービス精神豊かなホスピタリティに触れるのも楽しみの一つだ。
あなたもこの夏、シーカヤックでNZの海を堪能してみませんか?
国内のシーカヤッカーたちが挙げる3大エリアといえば、北島と南島の海峡線にあるマールボロー・サウンド、国内一の人気を集めるエイベル・タズマン国立公園、14もの入り江を持つフィヨルドランド国立公園の3カ所だ。各エリアの特徴や見どころなどを簡単に紹介しよう。

©Norio Furukawa
Abel Tasman National Park
エイベル・タズマン国立公園
エイベル・タズマン国立公園は、年間5万人もの観光客を動員する世界的なシーカヤック・エリア。国内一長い日照時間で知られるこの一帯は、気候が温暖で安定している。また、潮の流れが緩やかなので、初心者にとってもうってつけのフィールドといえそう。美しい砂浜が広がるゴールデン・サンドビーチにはぜひ立ち寄りたい。10社以上の専門ツアー会社やガイドがしのぎを削る激戦区でもあるため、サービスや危機管理も世界トップレベルだ。数社のウォータータクシーが常時運行しているので、非常時のバックアップ体制も万全。日本人ガイドも常駐。

©real JOURNEYS
Fiordland National Park
フィヨルドランド国立公園
国内最大規模を誇るフィヨルドランド国立公園は、有名なミルフォード・サウンドやダウトフル・サウンドなど、氷河によって削られた切り立つような山々が壮大な景観を生み出している。薄暗い海上に現れる海鳥やオットセイ、ボトルノーズ・ドルフィンなどと出合えるチャンスに恵まれたダスキー・サウンドやブレイクシー・サウンドなど、3大ゲレンデの中でも自然度はかなり高い。ただ、世界有数の多雨地帯である上に複雑な地形を強風が吹きぬけるエリア。アウトドア初心者は覚悟して臨んだ方がいいだろう。また、サンドフライには注意が必要だ。

©Marlborough Sounds Adventure Co.
Marlborough Sounds
マールボロー・サウンド
1,500キロの海岸線が続くマールボロー・サウンドは、迷宮のように入り組んだ入り江が広がるピクトン寄りのクィーン・シャーロット・サウンドと、ハヴロック寄りのペローラス・サウンドから成り、穏やかな自然風景を堪能したいシーカヤッカーたちの楽園だ。前者には、絶滅危惧種に指定された野鳥の生息地、モトゥアラ島でのバードウォッチングやドルフィン・ウォッチングなど見どころも多い。一方、ペローラス・サウンドは北島と南島を結ぶフェリー航路から外れているため、静けさが増す。また1年を通じてこのエリアの天候は比較的安定している。
リュウ・タカハシ
モトゥエカ在住。国内で活躍する唯一の日本人シーカヤックガイド。香川県にある「野遊び屋」立ち上げ人の一人でもあり、日本でもプロガイドの養成に携わっている。南島エイベル・タズマン国立公園のシーカヤックを中心に、複数のウェブサイトを管理。ライターとしても活躍中。
http://www.onjix.com/ryu/atk/
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