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海へ!
Diving 「海底散歩への誘い」
四方を海で囲まれたニュージーランドでは、国内の至るところで美しい海やビーチの光景に出合うことができる。サーフィンに適した波、自然美を堪能できるビーチ、そして深海に潜む無数の生物たち。海の持つ魅力は計り知れない。サーフィン、ダイビング、シーカヤックー ニュージーランドの海に魅せられた者たちはそれぞれの方法で母なる海と一体になろうとする。あなたもその一人になれる。海がそこにある限り。
(Quarter 2004夏号より)
By Wade Doak

Rainbow Warrior ©Tourism NZ
世界でも名の知られるフランス人海底探検家、ジャック・クストーが世界十指のベスト・ダイビング・スポットに入ると賞賛した、北島のファンガレイ東海岸沖に位置するプアナイツ・アイランド。ここのダイビングスポットは、個性的な美しさと魅力を持ち合わせている。まさにルーブル美術館に引けをとらないほどの、芸術作品の宝庫だ。海底の美術館にある作品をじっくり堪能するには、そのエリアでの経験豊かなダイバーに案内してもらうのが一番。魚や珊瑚礁の種類、エリア内の各見どころを彼らは知り尽くしている。
ここは、初心者から経験を積んだダイバーまでありとあらゆるタイプの人に適し、沈没船や洞窟探検を目的とするダイバーと、熱帯魚との触れ合いを求めるダイバーのいずれをも満足させる。もともと火山だったこのエリアには、ユニークな海底地形が形成されており、長い海底トンネルや洞窟、アーチウェイ(アーチ下の通路)などでの海底散歩が楽しめる。中でも注目のポイントは、リコリコ・ケイブという名の洞窟だ。海底に伝わる音の反響ときらめく光が、美術館の中で行われるコンサートのような、何とも不思議な世界を創り出す。また、トゥトゥカカには2隻の軍艦、「ワイカト」と「トゥイ」があり、沈没船内やその周辺を散策するレックダイビングのメッカとしても名高い。

Poor Knights Islands ©Dive Tutukaka
ノーザン・アーチウェイは、無数の魚たちに出合えるポイント。ピンク・マオマオやブルー・マオマオ、黄色のストライプが美しいマドなど、色鮮やかな魚たちに囲まれると、そこはもう別世界だ。幅約2メートルのスティングレイ(アカエイ)たちが、海中をわが物のように悠々と舞う姿は圧巻だ。彼らは人間に興味を示し、近付いてくる。特にこのエリアに住む魚は、珊瑚礁の周辺に群れをなすリーフ・フィッシュに比べて大きいため、人間を怖がることはない。一緒に潜った妻の後ろを魚たちが何匹もついてきたり、海底で撮影をしている私の頭にスティングレイが止まったりという普通では考えられないようなハプニングも起こる。この一帯に生息する魚のフレンドリーさはほかに類を見ないほどだ。このほか、国内で最初に海洋保護区に指定された、オークランド北部にあるゴート・アイランドは、シュノーケル・レベルでも魚たちと遊泳を楽しむことができる。
NZの海は1年を通してダイビングに適している。時期に応じて見られる魚や海中生物たちとの出合いや、ダイバーと遊ぶのが好きな人懐こいイルカと遭遇するチャンスにも恵まれている。ひと潜り終えてボートに上がると、すかさずイルカたちが「もっと遊ぼうよ」とダイバーを呼びに来るという光景もここでは珍しくない。

Bay of Islands ©Tourism NZ
ダイビングの魅力は実際に潜ってみて初めて感じることができる。できれば、たった一度のダイビング体験で終わらせてしまうのではなく、同じ場所にある程度長く滞在し、何度も潜ってみることをお勧めしたい。例えば、どこかお気に入りの場所を見つけ、1年を通して潜ってみる。初めて潜るときのような緊張感は徐々になくなっていき、まるで友達に囲まれているような、家に帰ったかのような居心地の良さを感じられるようになるだろう。その場所に愛着がわけばわくほど、海中環境の破壊によって変わりゆく海の姿に気づいていく。海を理解すると、われわれが人間としてどのように自然と関わっていくべきなのかが見えてくる。はかない自然の生命を尊び、この美しさを次の世代にも残していこうという意志が生まれてくるに違いない。 海底に広がる美術館を訪れてみよう。そして、1回限りのダイビングで終わらずに、ぜひとも「深く」潜ってみて海と友だちになってほしい。
海に潜るようになると、地上の生活では見ること、感じることのできない、水中環境のさまざまな実態を知ることになる。珊瑚礁などの生態系をはじめ、のびのびと育つ愛くるしいイルカやクジラの姿がこの国の近海では見られる。ひとたび海に入ると、人は海中に存在するすべての生物と同等になる。そこで、目の前に広がる海底の世界に自分も属しているのだという事実に改めて気づくダイバーも多い。
PADIが全世界で実施する環境教育プログラム「Project AWARE(Aquatic World Awareness, Responsibility and Education)」。水中環境の保全に対する役割を自覚することにより、各ダイバーの責任感を喚起し、教育を促すという目的のもと、毎年ビーチや海底の清掃活動などのイベントを開催している。ダイバーに対して、水中生態系を壊さないための海中でのマナーにも理解を深めさせている。
各機材を装着して潜るダイバーは、海中生物にとって脅威の対象となることもある。非常に繊細な珊瑚礁は、手で触れるだけで死んでしまうこともあり、破壊された後の生育は数十年もの間止まってしまうともいわれている。このような水中生物を傷つけないためにも、ダイビングをする際には、ゲージや補助空気源をしっかりと体に固定することが必要だ。また、魚にむやみに触れたり餌を与えたりすることは、彼らのストレスにつながるという。引いては彼らの生育活動を妨げ、生態系を崩してしまうことにもなりかねない。ダイバー一人ひとりの行動に大きな責任がかかっているのだ。
NZのダイビングスポットには、海洋保護区に指定された場所も多い。そのエリアではすべての生物の採集が禁じられているため、クレイフィッシュ(伊勢エビの一種)のハンティングや海底に沈む沈没船の中に残された遺産などの持ち帰りは厳禁だ。地上へのお土産は写真だけに留めておこう。

ダイビング・フィールドを世界に広げたいのであれば、世界175カ国で約10万人のインストラクターが活躍する世界最大規模のスクーバ・ダイビング教育機関、PADIが発行する認定証「Cカード(Certificate Card)」を取っておきたい。これは、ニュージーランドの海で潜る際にも必要となる。国内各地にPADI認定のスクールがあり、体験コースからインストラクターコースまで目的とレベルに合わせたプログラムが充実している。
※1 PADIのプロフェッショナル・メンバーと一緒に水深12メートルまでのダイビングができる入門編。条件認定付きCカードが発行される。
※2 PADI発行のCカードを取得する最も主流なコース。インストラクターなどの引率なしで水深18メートルまでのダイビングが楽しめる。
※3 ※2より高度なダイビング・テクニックが加わった本格的なコース。コンパスを使って目的地にたどりつく水中ナビゲーションや水深18メートル以深の海底に挑戦するディープ・ダイブの2つが必須。
(詳しくはPADIジャパン http://www.padi.co.jp まで)
ウェイド・ドーク
ファンガレイ在住。14歳のときから始めたダイビングは今年で46年目、というNZダイバーのパイオニア的存在。『Sea Fishes of New Zealand』などダイビング関連の著書は20冊に上る。現在は家族とともに、Poor Knights Islands周辺の海に潜る日々を過ごす。
http://www.wadedoak.com/
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